サツマイモ基腐病に抵抗性をもつ焼酎・でん粉原料用かんしょ「みちしずく」

要約

かんしょ「みちしずく」は、サツマイモ基腐病抵抗性、収量性、焼酎醸造適性いずれも焼酎原料用主力品種「コガネセンガン」よりも優れ、焼酎にした時の香りと味は「コガネセンガン」の焼酎に類似している。でん粉歩留およびでん粉白度も高いため、でん粉原料用としても適している。

  • キーワード : かんしょ、サツマイモ基腐病、多収、焼酎、でん粉
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

焼酎原料用かんしょは、南九州における農業生産および地域経済において重要な品目である。ところが、2018年、南九州でサツマイモ基腐病(以下、基腐病)が発生して以降、焼酎原料用の主力品種である「コガネセンガン」が甚大な被害を受けたため、焼酎原料の安定供給に多大な支障が生じている。そのため、「コガネセンガン」よりも基腐病に強く、焼酎醸造適性に優れる品種が強く求められている。
そこで、本研究では、「コガネセンガン」よりも基腐病に強く、多収で、焼酎にした時の酒質(香りと味)が「コガネセンガン」の焼酎に類似しているかんしょ新品種の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 「みちしずく」は、多収で、基腐病に抵抗性をもつ「こないしん」を母、乾物率が高く、蒸したいもの香りが良く、食味評価が「コガネセンガン」並みに優れる「九系09187-14」を父とする交配集団から選抜した品種である。
  • いもは"楕円形"で、皮色の主な色は"黄白"、2次色は"桃"、肉色は"淡黄白"、目は浅く、条溝は"微"、皮脈は"無"、裂開は"少"である。萌芽性は"中"、しょ梗の強さは"中"、貯蔵性は"やや易"である(図1、表1)。
  • 上いも収量は5月植え標準栽培、4月植え長期栽培ともに「コガネセンガン」よりも優れる(図2A)。でん粉歩留は「コガネセンガン」より4~6ポイント程度高く(図2A)、でん粉収量は「コガネセンガン」よりも優れ、4割以上多収である(図2B)。でん粉の白度は「シロユタカ」並に高い(図2B)。
  • 「コガネセンガン」および「シロユタカ」よりも基腐病に強く、抵抗性は"やや強"である(図2C)。サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は"強"、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性と立枯病抵抗性は"やや強"、黒斑病抵抗性は"中"である(表1)。
  • 焼酎醸造適性が高く、アルコール収得量および官能評価ともに「コガネセンガン」より優れ、酒質(味と香り)は「コガネセンガン」の焼酎に類似している(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : かんしょ生産者、焼酎メーカー、でん粉製造事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積 : おもに南九州かんしょ作地域の2,000ha。焼酎・でん粉原料用かんしょの奨励品種として鹿児島県が採用(2022年)。
  • その他 : サツマイモ基腐病には強いが、在圃期間が長くなると発病株が増えてくるため、基腐病対策マニュアル「サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策」(令和3年度版)に基づき、適切な防除対策を施す必要がある。

具体的データ

図1 「みちしずく」の塊根,表1~2,図2 育成地(宮崎県都城市、2019~2021年)における上いも収量とでん粉歩留(A)、でん粉収量とでん粉白度(B),

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
  • 研究期間 : 2014~2021年度
  • 研究担当者 : 小林晃、甲斐由美、境垣内岳雄、末松恵祐、川田ゆかり、境哲文、高畑康浩
  • 発表論文等 :
    • 小林ら「みちしずく」品種登録出願公表第35907号(2022年3月30日)
    • 小林 (2023) JATAFFジャーナル、11(1):17-18
    • 小林(2023)いも類振興情報 154:6-10