培養液へのデキサメタゾン添加は牛卵母細胞の体外発育を促進する

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要約

直径約90~100 μmの牛卵母細胞を19日間培養して発育させる際、培養液に0.05 μMのデキサメタゾンを添加することで卵母細胞の生存率が上がり、発育が促進され、成熟能力も向上する。

  • キーワード:家畜繁殖、ウシ、卵母細胞、培養、発育、デキサメタゾン
  • 担当:東北農研・高度繁殖技術研究東北サブチーム
  • 連絡先:電話019-643-3542、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

牛卵巣内には多くの発育途上卵母細胞が存在するが、ほとんどは卵巣内で死滅する。培養技術を使ってそれらを卵子にすることができれば優良家畜の増産等に利用できる。最近、牛卵母細胞を発育させる開放型培養システムが開発されたが、胚発生率はまだ低く、その向上が課題である。そのためには長期培養後の卵母細胞の生存率を高め、生体内と同等まで発育させることが必要である。そこで、糖質コルチコイド製剤であるデキサメタゾンを培養液中に添加して、卵母細胞を効率的に発育させる培養系を開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 直径約90~100 μmの発育途上の卵母細胞・顆粒膜細胞の複合体を、4%ポリビニルピロリドン、5%牛胎児血清、4 mMヒポキサンチン等を添加した培養液で19日間発育させる場合、デキサメタゾン0.05 μM添加区において、培養後の生存率が無添加区よりも有意に高くなる(図1)。
  • 卵母細胞の平均直径は、培養1日後の約96 μmに対し、培養19日後のデキサメタゾン添加区では約113 μmとなり、無添加区の約110 μmよりも大きくなる(表1)。
  • デキサメタゾン0.05 μM添加区で19日間発育させたのちに成熟培養をおこなうと、減数分裂の第2分裂中期へと進み、かつ第1極体を放出して成熟卵子となる割合が、無添加区で発育させた場合よりも有意に高くなる(図2)。
  • デキサメタゾン0.05 μM添加区で19日間発育させた卵母細胞の体外成熟・受精・培養後の胚発生能力は、無添加区で発育させた場合と同等以上である(表2)。
  • 濃度を0.5 μMへ上げると、効果はむしろ小さくなる。

成果の活用面・留意点

具体的データ

図1 培養19日後の卵母細胞の生存率(裸化・退行しなかったもの)

表1 培養液中のデキサメタゾンが牛卵母細胞の体外発育に及ぼす影響

図2 体外発育卵母細胞の成熟率

表2 体外発育中のデキサメタゾン添加が体外受精後の胚発生に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:高品質畜産物生産のためのクローン牛等の安定生産技術の開発
  • 課題ID:221-n
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:平尾雄二、志水学、伊賀浩輔、竹之内直樹