九州沖縄農業研究センター

所長室から

九州東海大と連携大学院に関する協定を締結

-来年4月から九州初の農業分野での連携大学院が発足-

九州沖縄農業研究センターは、九州東海大学(熊本市)と7月22日、熊本市の同大学キャンパスで、「連携大学院方式による教育研究への協力協定」を結びました。調印式には当センターの山川所長、九州東海大学の松前学長らが出席しました。

連携大学院では、九州東海大学農学研究科の大学院生が対象になります。当センターでは、研究職員のうち博士号や発表論文数等について一定の資格を持つ者が客員教授となって、九州東海大学の大学院生および大学側の指導教員と協定研究(共同研究)を行います。来年4月の連携大学院発足に向けて、今後、客員教授や協定研究のテーマについて検討に入ります。

九州東海大学とはこれまでにも、研究室単位で個別に共同研究や協定研究を実施してきました。また、毎年、多くの学生を技術講習生として受け入れています。昨年4月には、「農業分野における包括的な学術研究交流に関する基本協定」が締結され、研究交流協議会を通して所ぐるみの研究交流を行う体制が整いました。

今回、連携大学院の協定が結ばれたことにより、当センターにとっても新品種開発や機能性、バイオマス、病害虫防除技術等といった所の重点研究分野における研究推進体制がより強化されることになります。

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調印式後の記者発表(九州東海大学熊本校舎)
左から二人目が九州東海大学松前学長、
三人目が九州沖縄農業研究センター山川所長

畑作研究部キャラバンの紹介

-都城の有色カンショ直播栽培実証試験の視察-

九州沖縄農業研究センターでは、昨年から、所幹部が「キャラバン隊」を編成し、当センターで開発された技術の普及現場を訪ね、現地の関係者と意見交換するという取り組みを始めています。本年度の第1回キャラバンは、7月21日に畑作研究部(宮崎県都城市)で行われました。

畑作研究部のような隔地研究部(地域研究拠点)を抱える当センターでは、隔地研究部の職員が、所長を始めとする所幹部と直接顔を合わせて意見交換する機会はほとんどありません。このため隔地研究部でのキャラバンでは、隔地研究部の職員と懇談する機会を設けることにしています。

今回は、山川所長が所の研究戦略(「3つのパワーと1つの方向」:新品種開発、機能性研究、バイオマス研究の3分野および持続型農業生産技術研究)や所の研究成果について説明しました。畑作研究部の成果は、多くが所の代表的成果にも採択されており、畑作研究部の職員は大いに元気づけられたようです。武政企画調整部長からは、現在策定中の次期中期計画について検討状況が説明されました。

現地視察では、酒造メーカーや色素製造メーカーの技術者らと共に、田中耕太朗氏(有限会社コウワ代表)の有色カンショ直播栽培実証圃場を訪ねました。13アールにわたって、有色サツマイモ品種「ムラサキマサリ」や「ジェイレド」が直播栽培で作付けされており、欠株も見当たらず、見事に生育が揃っていたのが印象的でした。

サツマイモの直播栽培技術では商品にはならないような形の小さいイモ(くずイモ)を直接、畦に播種します。苗を養成して移植するという面倒な手間が省ける上、降雨に関係なく定植できるという大きなメリットがあります。このため、農水省としても40年ほど前に、直播の技術開発に取り組みましたが、実用品種を開発できず、普及には到りませんでした。

「ムラサキマサリ」や「ジェイレド」は、(1)親イモが太らず子イモの形状が揃う、(2)移植栽培に比べて収穫量が低下しないという直播適性を備えており、焼酎原料用としても高い評価を受けている品種です。都城ではこれまで「夢の省力技術」と言われてきた直播栽培が、現実の普及技術になろうとしています。

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サツマイモ直播栽培の現地実証圃場(都城市)
生産農家、焼酎、色素製造メーカーの技術者と共に