九州沖縄農業研究センター

所長室から

新年の挨拶「Break the Siloの精神」

所長 山川 理

山川所長祝辞の様子九州沖縄農業研究センターの職員の皆さん、明けましておめでとうございます。

年末年始の天候はこれまでと一変し、急に寒くなりました。おかげで私と私の家族は風邪とともに年越しをしてしまいました。また年末にはインド洋沿岸諸国でこれまでに類を見ない大規模な地震津波が発生し、世界中を驚かせました。15万人近くが亡くなったと聞いています。被災された多くの方々に対し心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。

所長に就任してから2年目に入りました。就任挨拶の中で、私自身が3つのCを行うことあるいは是非皆さんに行って欲しいと提案しました。コミュニケーション、コンペティションそしてクリエイションです。私自身、どれだけ実現できたか今振り返りたいと思います。コミュニケーションについて、対外的には行政機関とのトップ会談や農業現場への所長キャラバンを行い、広報活動も強化しました。対内的には若手研究者や若手室長との懇談会、共同研究や受託研究に対する所長ヒアリング、各部研究者との交流会などを行い、直接に話し合う機会を増やしました。コンペティションについて、若手・中堅を対象とした奨励型(プレゼン形式)研究強化費の新設、競争的研究資金応募支援のためのFS型研究強化費の拡大など、主として資金面からのバックアップを図ってきました。コンペティションと言うと拒否反応を示す人がいます。なんでそこまで尻をたたくのかと。でも切磋琢磨してお互いを高めあうことは極めて大切なことです。また良い仕事をした人をみんなで賞賛することは同じ組織人として当然なことだと思います。しかし良い仕事をするには多くの人の協力が必要です。これからはコンペティションとコラボレイションをワンセットとして考えていきます。クリエイションについて、フォローアップ型研究強化費による新技術の定着促進、会議等運営の効率化、プロジェクト推進体制の改善などを行ってきました。従来あるものを改革や改善しながら、新しいものを造っています。全く新しいものをはじめから造れれば良いのですが、それはなかなか困難です。私のこれまで行ってきたことも、結局誰か一度は試みたあるいは試みようとしたものがほとんどです。要は決してあきらめないことです。「柔軟で、創造力豊かな研究組織を造ること」が最終目標です。

そのためにはSiloサイロの取り壊しが必要です。専門や所属部署に閉じこもり、周囲のことを配慮しない考え方の打破です。日経バイオビジネス(2005.01)の関連記事「研究開発のボトルネック解消法」によれば、組織人員が300人を超す辺りからサイロができやすいそうです。「専門別の組織構成と定員管理」や「基礎から応用、応用から実用というリニア型研究推進モデル」を重視すると、サイロ形成を促進することになります。研究はどこがはじまりということはありません。最後が実用であることは間違いありませんが。基礎、応用、実用という作業をある程度同時並行的に進めるほうがボトルネックの発生が少なく、実用化が早まるというのが最近のコカレント型研究推進モデルです。最近持ち込まれる共同研究・協定研究を見ると、どうも研究の出口が明確でなく、基礎と応用に近いようなところを外部との仲間内でちまちまやっているようなケースが目につきます。ヒアリングに際しては、出口を明確にすることと、研究所内の他の部局との連携をまず考えた上で来て欲しいと思います。関連記事の中にボトルネックの存在チェック項目があるので、私達の組織実態に合わせて修正して見ました。「いつまでも同じような研究テーマが延々と続く。プロジェクトに明確な優先順位がついていない。人員の配置が硬直的で部間移動を柔軟に行っていない。実用化技術の開発競争で負けることが多い。いつまでにという観点から研究を見たことがない。基礎あるいは応用研究が実用技術に繋がらない。各部間あるいは研究室間で壁を感じる。部門内で問題解決法を考えることは得意だが、より効率的な解決方法について関係者全員で考えることがない。研究に本来必要なリソース量と組織のキャパシティーとのギャップが把握できない」など興味深い内容となっています。1つでも当てはまるとボトルネックがあると述べられていますが、皆さん如何でしょうか。

新年のつどい