九州沖縄農業研究センター

所長室から

九州は楽しそうなところー所長就任にあたりー

九州沖縄農業研究センター所長 有原丈二

有原丈二この度所長を拝命しました有原です。よろしくお願いいたします。所長就任にあたり、自己紹介も含め、私の考えを述べたいと思います。

【自己紹介】

まず、簡単に自己紹介します。東北農業試験場に採用になり、そこでトウモロコシの研究を11年間行い、この間、アイオワ州立大でトウモロコシ育種の手伝いをしました。そこで、国際的な関心が湧き、インドのICRISAT(国際半乾燥地熱帯作物研究所)に6年間勤務してマメ科作物のリン吸収機構の研究を行いました。北海道農業試験場では畑輪作の仕事を行い、前任の中央農業研究センターでは、大豆栽培の研究を行い、大豆の収量300kg/10a、Aクラス品質の生産を実現する大豆新栽培システムを開発する「大豆300A研究センター長として仕事を行いました。

【九州の印象】

勤務するのは初めてですが九州のイメージは広いということです。南北に長く、北部は水田作地帯、南部は畑作と畜産業、中央に山間地域、南には南西諸島地域、沖縄があります。一口で言いますと楽しそうな地域だなという印象です。熊本はその中間にあります。九州沖縄農業研究センターは、この広大な地域をカバーする多様な研究が求められていると思っています。

【九州沖縄農業研究センター】

九州沖縄農業研究センターは、元気であるという印象で、地域農業研究センターの中でも目立った存在です。所の研究を(幸せを呼ぶという)四つ葉のクローバーで表現されています。3つのパワーと1つの目標という所の研究目標をもって頑張っています。3つのパワーとは、(1)育種、(2)機能性、(3)バイオマスです。育種では、稲、麦、大豆、サツマイモ、サトウキビ、トウモロコシ、牧草、ソバ、いちごなど世界的に見ても数多くの種類の作物の育種をしていると思います。機能性では、育種と一緒になって高いレベルの研究をしています。バイオマス関係の研究も廃棄物系、エネルギー変換技術、カスケード利用など育種部門と共同して高い水準を維持していると思います。

水田・畑地農業に関しても多くの研究成果が出ていると思っておりますが、九州は土壌が多様で、現地の土壌の把握が不十分で技術普及に多少苦労しているのかなという印象があります。技術はあるのですから、土壌条件を把握できれば技術の普及、さらなる改良ができてくると思います。

九州の農業の中では水田農業と畜産は大きな位置を占めていると考えています。温暖化が進む中で、九州の水田農業は生産性が低迷する事態になっており、本当の意味で持続性が問われています。稲、麦、大豆の水田輪作技術の開発は、品目横断的経営支援対策が始まる現在、喫緊の課題です。畜産も九州農業のもう一つの大きな柱ですが、頭数の多さからくる家畜排泄物による環境汚染の問題、飼料自給率の低さなどが大きいと考えております。この問題の根本的な解決は飼料自給率向上以外にないと考えております。幸いここには、飼料イネ、牧草、サトウキビ、トウモロコシ、ソルガムなどの育種グループ、放牧や飼料イネの研究チームがあり十分に対応できると思っています。耕畜が連携して飼料生産を行い、排泄物は農地に還元するシステムの構築が非常に大事だと思います。また、九州沖縄農業研究センターの名前が示すように、南西諸島、沖縄も非常に重要な地域であり、この地域に向けた技術開発も重要な課題です。この地域はアジアへと連続的につながっており、我々の開発した技術が普及する可能性も大きく、そのための国際化も進めたいと考えております。

【企画管理部門について】

九州沖縄農研は広報普及室を設けて、先進的に活発な取り組みを進めており、非常に目立つ存在です。今後とも、広報・普及活動、所長キャラバンなど研究を支援する部門として努力していただきたいと思います。

【研究支援部門について】

現在では、普段の貢献に加えまして、技術の普及・実用化が求められています。前任の中央農業研究センターでは、出前技術指導、現地試験を業務科職員の方と一緒にやっていました。現場での農作業をスムーズに実施しますと、農家の技術に対する印象が極めてよくなり、普及の力になります。これからは技術専門職の皆さんにも、研究会、現地検討会等へできるだけ参加してもらうようにしたいと考えております。

【研究チーム制について】

昨年から研究チーム制が導入されまして、良い面と悪い面があると言われていますが、研究者に自立を促しているとも言えます。自由と責任を自覚しつつ、独立独歩で研究を進めて頂き、また仲間との活発な議論をお願いします。

所長としては九州沖縄農研センターの研究がさらに活発に行われるよう、後方支援に徹したいと思っています。よろしくお願いいたします。