九州沖縄農業研究センター

所長室から

所長就任挨拶

大黒 正道 平成30年4月1日付で、農研機構九州沖縄農業研究センター所長を拝命いたしました。就任にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

まず、平成28年4月に起きた熊本地震、平成29年7月に発生した九州北部豪雨では、九州地域に未曾有の大打撃を与え、その爪痕は各地にまだ深く刻み込まれています。亡くなられた皆さまのご冥福をお祈りするとともに被害にあわれた皆さまに心からお見舞い申し上げます。

九州沖縄地域は、農業産出額は関東に次ぎ全国比約20%を占め、九州北部を中心に米・麦・大豆は同約10%、九州南部を中心にカンショは同約30%(作付面積では約50%)、肉用牛は約40%(飼養戸数では約45%)、野菜は九州全域で同約20%と高いシェアを占め、国内農業において重要な位置を占めています。また、他の地域と同様に高齢化が進行し、家族経営体は大幅に減少していますが、全国平均を上回る勢いで組織経営体が増加し、九州北部では水田経営規模の拡大と輪作導入、九州南部ではカンショや業務用野菜の生産規模の拡大、飼料生産と家畜生産の地域内分業化が伸展しつつあります。沖縄では、台風や干ばつなどに強いサトウキビが畑地の約50%で作付けされ、持続的な安定生産技術に期待が寄せられています。さらに、九州沖縄地域は温暖化の影響を最も受けやすいため、極端な気象による農業生産性低下や温暖化に伴う侵入病害虫の定着・多発に常にさらされている状況にあり、一層の温暖化適応策が求められています。

このような現状を踏まえ、九州沖縄農業研究センターでは、
1.規模拡大に対応した水田・畑輪作体系や施設園芸技術の開発
2.畜産・飼料作の地域内分業生産システムの開発
3.地域に適したマーケットイン型新品種の開発
4.温暖化対応等の持続的な農業技術の開発
等の研究を展開しています。さらに、九州沖縄地域はアジアへの玄関口であり、輸出を視野に入れた研究の推進、6次産業化を支援する技術の開発にも取り組んでいます。

農研機構における研究開発の最終目標は、開発した品種や技術を現場の生産者や実需者の皆さまに利用していただき、社会に貢献することです。そのために、九州沖縄農業研究センターでは、現場のニーズを収集しそれを基にした課題化を進めています。また、開発した品種や技術については実証研究を展開し、現場の皆さまの意見を伺いながら改良を図るとともに、導入が促進されるように体系化し経営評価まで実施しています。さらに、現場での技術指導や情報発信を効果的に行い、研究成果の普及促進に努めています。
九州沖縄農業研究センターは地域農業研究のハブ機能としての役割も期待されています。生産者や普及担当者、公設試験研究機関、大学、民間企業の皆さまとの連携を一層強化するとともに、温暖化対応等については国際的な連携も図りながら、将来の九州沖縄地域の農業や食品産業の発展に貢献できる革新的な技術開発を加速したいと考えています。

九州沖縄農業研究センターは、地域社会にそして皆さまに開かれた研究機関を目指します。引き続き、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

平成30年4月
(国研)農研機構 九州沖縄農業研究センター
所長 大黒 正道 ( だいこく まさみち )