要約
カンキツグリーニング病に感染したシークヮーサー罹病葉では、健全葉と比べて光合成速度およびクロロフィル含量が約50~70%低下し、その程度は症状が強いほど大きい。罹病葉における光合成の低下は、気孔閉鎖が主要因ではないと考えられる。
- キーワード: カンキツグリーニング病、光合成、クロロフィル、気孔閉鎖
- 担当: 沖縄農研セ・病虫管理技術開発班
- 代表連絡先: Tel:098-840-8504
- 区分: 九州沖縄農業・病害虫
- 分類: 研究・参考
背景・ねらい
カンキツグリーニング病(以下:HLB)は、師部局在する細菌Candidatus L. asiaticus によって引き起こされる重要病害であり、罹病樹は数年で枯死に至る。しかし、HLB感染により樹勢低下を招く植物の感染生理特性については不明な点が多い。そこで、本研究ではHLB感染による樹勢低下要因解明の一助として、沖縄県の主要品種であるシークヮーサーを用いて、HLB罹病葉と健全葉における光合成とクロロフィル含量の比較を行う。
成果の内容・特徴
- 光合成速度は、健全葉の9.4μmolm-2s-1と比べて、罹病葉では、退緑(症状弱)が4.4μmolm-2s-1、まだらに退緑(症状強)が2.7μmolm-2s-1と約50~70%の著しい低下がみられ、症状が強いほど、より低下する(図1)。
- クロロフィル含量では健全の4.7mg/mlと比べて退緑(症状弱)が2.4mg/ml、まだらに退緑(症状強)が1.3mg/mlと50~70%の低下がみられ、症状が強いほどより低下する(図2)。
- 葉内CO2濃度は健全葉と比べて、健全黄化および罹病葉で高まる傾向がある(図3)。蒸散速度および気孔コンダクタンス(気孔伝導度)は健全葉と罹病葉で顕著な差はみられない(図4)。罹病葉の光合成低下は、気孔閉鎖が主要因ではないと考えられる。
成果の活用面・留意点
- HLB罹病樹における感染生理および樹勢低下の要因解明の基礎データとして活用できる。
具体的データ
(澤岻 哲也)
その他
- 研究課題名: カンキツグリーニング病総合防除対策事業
- 予算区分: 受託(総合防除対策事業)
- 研究期間: 1997年度~
- 研究担当者: 澤岻 哲也、比屋根 真一、河野 伸二、亀川 藍