要約
サトウキビ搾汁液にグルタミン酸と酵母エキスを添加し、乳酸発酵させた後に製糖すると、300mg/100g乾燥重以上のGABAを含有する黒糖の製造が可能である。
- キーワード: サトウキビ、乳酸菌、乳酸発酵、グルタミン酸、GABA、黒糖
- 担当: 沖縄県農研・農業システム開発班
- 代表連絡先: 電話098-840-8502
- 区分: 九州沖縄農業・フードシステム
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
サトウキビにはγーアミノ酪酸(GABA、血圧上昇抑制作用や精神安定作用が報告されている)が含有されている。沖縄県農業研究センターでは、サトウキビ搾汁液(蔗汁)を乳酸発酵させてγーアミノ酪酸(GABA)を増強した黒糖の製造方法を開発した(2008年度成果情報)が、乳酸菌はグルタミン酸からGABAを生産するため、GABAの増強量は原料蔗汁中のグルタミン酸含有量に制限される。そこで、グルタミン酸を添加して乳酸発酵させることで、高濃度のGABAを含有する黒糖の製造技術を開発し、黒糖の高付加価値化を図る。
成果の内容・特徴
- グルタミン酸を添加した蔗汁の乳酸発酵にはLactobacillus brevis NBRC3345株が適する(図1)。グルタミン酸の添加濃度を0.2%、酵母エキスを0.2%以上とすると、効率良くGABAを生産できる(データ省略)。
- 乳酸発酵させた蔗汁を製糖すると、278.6~419.3mg/100g乾燥重のGABAを含有した(グルタミン酸を添加しない方法に比べ15.7~23.7倍に相当する)黒糖が製造できる。また、乳酸発酵時間や製糖時の新鮮蔗汁添加によって、食感が異なる黒糖となる(表1)。
- 乳酸発酵を24時間とすると、GABA含有量は低いが通常の黒糖と同程度の硬さとなる(表1・試作A)。一方、乳酸発酵を30時間とすると、黒糖中のGABA含有量は高くなるが、ペースト状となる(表1・試作B)。
- 乳酸発酵させた蔗汁は固化しにくいが、新鮮蔗汁の混合や(表1・試作C)、コールドライミングの調整pHを下げること(表1・試作D)で調節できる。
成果の活用面・留意点
- 当該技術の活用により、県内企業が試験製造を開始した。
- 本成果は黒糖製造における高付加価値化技術として利用できる。
- サトウキビ原料は「NiF8」(夏植、1月上旬収穫)を用いた。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 高付加価値黒糖製造技術の開発(1)GABA高含有黒糖製造技術の開発
- 予算区分: 受託(沖縄黒糖安定供給調査事業)
- 研究期間: 2008~2010年度
- 研究担当者: 広瀬直人、照屋亮