要約
バレイショ「西海30号」はそうか病に「デジマ」、「ニシユタカ」より強く、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ大いも多収の暖地二期作栽培向け病虫害複合抵抗性系統である。
- キーワード: バレイショ、ジャガイモ、病虫害複合抵抗性、暖地二期作栽培、生食用、ジャガイモそうか病
- 担当: 長崎県農林技術開発センター・農産園芸研究部門・馬鈴薯研究室
- 代表連絡先: Tel:0957-36-0043
- 区分: 九州沖縄農業・畑作、作物
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
長崎県内のバレイショ産地においてはジャガイモシストセンチュウとともに、そうか病の発生が大きな問題となっている。このため、そうか病に強く、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有する多収品種育成への生産現場からの強い要望がある。
成果の内容・特徴
- 「西海30号」は、1998年春作に、多収・大いもで外観に優れる「長系107号」を母、そうか病に強く、外観・食味に優れる「春あかり」を父として交配し、翌年春作において交配種子を播種し、選抜育成してきた系統である。
- そうか病汚染圃場での罹病度指数は春作で51、秋作で57と「デジマ」、「ニシユタカ」より低く、既存品種よりそうか病に強い。また、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、青枯病に中程度の抵抗性を持つ病虫害複合抵抗性である(図1、表2)。
- 育成地では上いも重が春作で425kg/a、「デジマ」比108と多収、秋作で253kg/aと「デジマ」比85とやや少収である。平均1個重は春作・秋作ともに130gと大きい(表1)。
- いもの形は卵形で目が浅く表皮のネットは微で外観が優れる(表1、図2)。
- 肉質は中~やや粘質で煮くずれしにくく、食味は春作・秋作ともに「デジマ」よりやや劣るが「ニシユタカ」より優れる。加熱後黒変は無く、でん粉価は「デジマ」、「ニシユタカ」より低い(表1)。
成果の活用面・留意点
- そうか病、ジャガイモシストセンチュウに強い品種として長崎県の認定品種への採用が内定しており、一部の地域を中心に約200haの普及が見込まれている。
- 春作マルチ栽培で収穫時期が遅くなると腐敗が発生するので適期に収穫する。
- 秋作植え付け時に高温による種いも腐敗がみられるので適期に植え付ける。
- 強風により茎葉の損傷がみられるので圃場選定等に注意する。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 温暖地・暖地向け病害・線虫抵抗性、高品質、多収のばれいしょ品種の育成
- 予算区分: 指定試験事業
- 研究期間: 1998~2009年度
- 研究担当者: 向島信洋、森一幸、坂本悠、中尾敬、草原典夫、田宮誠司(北海道農研)、石橋祐二