九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

株出し多収で黒穂病に強いサトウキビ新品種候補系統「RK96-6049」

要約

サトウキビ新品種候補系統「RK96-6049」は南大東島において株出し栽培の収量が多く、株出し2~3回で多収である。また「F161」に比べて、黒穂病抵抗性、高糖性、風折抵抗性、耐倒伏性において優れる。

  • キーワード:サトウキビ、株出し、黒穂病抵抗性、高糖性、風折抵抗性、耐倒伏性
  • 担当: 沖縄県農業研究センター・作物班
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8505
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:技術・普及

 

背景・ねらい

サトウキビの作型の中で、最も収益性が高いのは株出し栽培である。沖縄県南大東島では株出し栽培が多いが、その平均単収は県平均より1トン/10a少なく、株出しの回数も沖縄本島地域に比べて少ない。原因として大型農業機械の収穫による踏圧、また収穫面積の60%を占める「F161」は株出しの収量がやや低く不安定であることなどが上げられる。一方、株出し能力が高く多回株出しも可能な「Ni9」は、黒穂病が多発し問題となっている。そこで、株出し収量が多く、多回株出しで多収な黒穂病抵抗性の品種の育成を目指す。

成果の内容・特徴

  • 「RK96-6049」は沖縄県農業研究センター作物班において1994年、早期高糖の「RK87-81」を種子親、多収の「F172」を花粉親として交配し種子を得、1996年に実生選抜を実施して以降、多回株出しにおける多収性を重視して選抜した系統である(表1、表2、 図1)。
  • 南大東島における株出し栽培で原料茎重が「F161」より重い。特に2~3回の多回株出しにおいて「F161」より多収である(表3)。
  • 南大東島における甘蔗糖度は、春植え、株出しのいずれの作型においても「F161」より も高く、株出しの可製糖量も安定して多い(表3)。
  • 黒穂病抵抗性が「極強」で、高糖性、耐倒伏性、風折抵抗性において「F161」より優れる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 沖縄県が南大東島地域を対象に奨励品種として採用予定である。
    「F161」の一部を、また「Ni9」を全面的に代替し、200haの普及を見込んでいる。
  • 春植えで収量が低い傾向であるが、植え溝あたりの植え付け苗数を3割程度増やし密植すると、「F161」に比べ増収する。

具体的データ

表1

表2

図1

表3

  

<表2、表3の説明>
注1)カッコ内の数値は育成地が「Ni9」、南大東島が「F161」に対する比率(%)を示す。
注2)育成地の春植えは2002-04,06-08年度、春植え株出しでは2003-05,07-08年度の1月または2月の収穫調査である。
注3)南大東島の春植えは2005-08年度、株出し1回は2006-08年度、株出し2回は2007-08年度、株出し3回は2008年度の1月または2月の収穫調査である。

その他

  • 研究課題名: 南西諸島南部向け、早期高糖性、耐干性、病虫害複合抵抗性、機械化適性、多収のさとうきび品種の育成
  • 予算区分: 指定、加工プロ3系
  • 研究期間: 1996~2008年度、2006~2008年度
  • 研究担当者:出花幸之介、伊禮信、内藤孝、與那覇至、宮城克浩、謝花治、佐渡山安常、崎山澄寿、太郎良和彦、神谷寿幸、宮平永憲、仲宗根盛雄、前田剛希、山口悟、金城鉄男