要約
サトウキビ新品種候補系統「RK97-7020」は南大東島において早期高糖であり、春植え株出しの1~2月収穫、夏植えの早期収穫とその株出しの早期収穫において「F161」と比べ甘蔗糖度が同等以上で可製糖量が多い。また脱葉性が易で、耐倒伏性が優れている。
- キーワード:サトウキビ、早期高糖、早期収穫、脱葉性、耐倒伏性
- 担当:沖縄県農業研究センター・作物班
- 代表連絡先: Tel:098-840-8505
- 区分:九州沖縄農業・畑作
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
特殊な強酸性土壌が分布し、土層が浅く、年降水量が県平均よりも2割少ない沖縄県南大東島では、サトウキビの生育や登熟が遅く不安定である。栽培面積の60%を占める「F161」は特に収穫期間の始めの頃の甘蔗糖度が低いため問題となっている。過去5年間に工場に搬入された原料の収穫はじめ頃の甘蔗糖度の平均値は11.8 ~ 12.7%で、収穫期終盤の12.0 ~ 15.2%に比べると年によっては2.5%も低い。そこで、早期高糖で収穫初期の甘蔗糖度が高い、早期収穫に適した品種の育成を目指す。
成果の内容・特徴
- 「RK97-7020」は沖縄県農業研究センター作物班において1994年、早期高糖の「RK87-81」を種子親、多収の「F172」を花粉親として交配し種子を得、1997年に実生選抜を実施して以降、早期収穫における高糖性と多収性を重視して選抜した系統である(表1、表2、表3、表4)。
- 南大東島における春植えと株出しの1~2月の収穫では、甘蔗糖度が「F161」と同等以上で、株出しで単収が高く可製糖量が多い(表3)。
- 夏植えの早期(11月)収穫とその株出しの早期収穫における原料茎重と甘蔗糖度が高く、両作型において可製糖量が「F161」よりも多い(表4)。
- 耐倒伏性が「F161」に優り、脱葉が容易で、黒穂病抵抗性が“中”である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 沖縄県が南大東島を対象に奨励品種として採用予定である。
「F161」の早期収穫時の代替品種として100haの普及を見込んでいる。 - 早期から甘蔗糖度が高いので年内収穫が可能な早期収穫用の品種である。
- 春植えで収量が低い傾向であるが、植え溝あたりの植え付け苗数を3割程度増やし密植すると、「F161」に比べ増収する。
- 台風時の折損が多いことがあるので、強風害を受けにくい圃場に植え、植え付けを早めるなど注意が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 南西諸島南部向け、早期高糖性、耐干性、病虫害複合抵抗性、機械化適性、多収のさとうきび品種の育成
- 予算区分:指定、加工プロ3系
- 研究期間: 1997~2008年度、2006~2008年度
- 研究担当者: 出花幸之介、伊禮信、内藤孝、與那覇至、宮城克浩、謝花治、佐渡山安常、崎山澄寿、太郎良和彦、神谷寿幸、宮平永憲、仲宗根盛雄、前田剛希、山口悟