九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

軽労化と作業能率を向上させた圧入開孔式サトウキビ補植機

要約

開発した地中穿孔型開孔器(圧入開孔器)を有するトラクタ直装型サトウキビ補植機の作業能率は4.9a/hであり、人力作業と比較して14%程度の向上が期待できる。本機を利用することにより、人力よりも安定した作業体系が構築できる。

  • キーワード:サトウキビ、補植、補植機、セル成形苗
  • 担当:沖縄農研セ・農業システム開発班
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8501
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:技術・普及

 

背景・ねらい

沖縄のサトウキビ株出し圃場の欠株率は25%以上になる場合もあり、減収を抑制するためには補植が必要である。また、補植作業は一般的に人力で行われているが、重労働であるために長時間の作業は困難である。ここでは省力軽作業化が図れ、安定した補植作業体系を構築するために必要なトラクタ直装型補植機(図1)を開発する。

成果の内容・特徴

  • 補植機:開孔器が畦上部にある植付位置に到達すると、植付作業者がオペレータに合図を送り、トラクタは走行を停止する。植付作業者はシリンダ操作レバーを操作し、開孔器を地中に適正な深さ(ここでは10cm以上)まで挿入した後、上昇させる。開孔部へのセル成形苗の投入は図2に示すように、開孔器を地上に上昇させる過程で開孔器の側にあるステップを足で押して鉛直筒を下向きに開放し、植付穴内部に苗と肥料を投入する。なお、補植機を搭載するトラクタの適正馬力はPTOから動力を得る開孔器の作業性を考慮し、11.0kW(15PS)~14.7kW(20PS)の範囲とする(表1)。
  • 作業能率の評価:人力と補植機の作業能率を比較した。開孔作業者と植付作業者に分けて実施し、肥料散布作業は開孔作業担当者が実施した結果、作業能率は4.1 a/hであった(表2)。一方、補植機の作業能率は4.9a/hであり、人力作業と比較して14%程度向上することが示された。
  • 長時間労働:一般に人力作業では補植作業は日あたり1~2時間程度であり、作業継続時間が増加した場合には作業能率の低下が見込まれる。一方、補植機では作業能率を維持できるため安定した作業体系が構築できる。
  • 作業精度(開孔深さの精度)の評価:土壌硬度が高いほど開孔深さは浅くなる。開孔深さの目標値を10cmとした場合、サトウキビ収穫直後または株揃い作業直後の圃場では目標とする開孔深さを安定して得ることができた。また、開孔幅は直径7cmを確保できた。セル成形苗の根鉢上面の直径が5cmであることから、開孔部への苗の挿入も容易である。なお、株揃え作業後は土壌硬度が高くなる傾向にあるが、ジャーガルと島尻マージでは安定した開孔作業が行える。

成果の活用面・留意点

  • 当該補植機の作業可否は土壌硬度の影響を受けるが、株揃え作業直後のジャーガル、島尻マージでの補植作業に適応できる。
  • 市販化予定機については、開孔力を向上させ、各種土壌への適応範囲を拡大する計画である。
  • 補植作業にはセルトレイで育苗した一芽苗や側枝苗を使用する。

具体的データ

表1

図1

図2

表2

 

その他

  • 研究課題名: 汎用管理機を中心にしたさとうきび機械化システム技術の再構成
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:玉城麿、伊波聡、安谷屋賛、宮平守邦、臼井高江、赤地徹、吉武均
  • 発表論文等:1)玉城ら(2009):農業機械学会誌、71(3):104-114
                      2)玉城ら「植付方法並びに植付機」特許公開2009-189366