九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

「青島温州」のヒリュウ台と後期シートマルチの組み合わせによる高品質果実生産法

要約

ヒリュウ台「青島温州」は、無マルチでもカラタチ台のシートマルチ栽培並の果実品質を確保できる。また、8月下旬から収穫までの後期シートマルチにより土壌の体積含水率を低く推移することで、糖度12以上の割合が高くなり、浮き皮程度も小さくなる。

  • キーワード:ヒリュウ、青島温州、シートマルチ、土壌体積含水率
  • 担当:長崎農技セ・果樹研究部門・カンキツ研究室
  • 代表連絡先: Tel:0957-55-8740
  • 区分:九州沖縄農業・果樹
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ウンシュウミカンは、ブランド品の目安である糖度12以上の安定した果実品質を確保して、ブランド率向上を図る必要がある。そこで、「青島温州」の台木の違いおよびシートマルチの後期被覆(8月下旬・9月上旬~収穫時)の有無と果実品質の比較を行い、高品質果実安定生産法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 葉の最大水ポテンシャル(LWP)は、ヒリュウ台無マルチがカラタチ台(無マルチ、シートマルチ)より低く推移する傾向があり、シートマルチによりさらに低く推移する(図1)。
  • 土壌体積含水率は、ヒリュウ台シートマルチ有りで9月中旬より10~15%に低下する傾向がみられ、その後もほぼ同じレベルで推移する(図2)。
  • 浮き皮の発生は、ヒリュウ台やシートマルチの利用により減少する傾向がみられ、ヒリュウ台シートマルチの発生指数は、カラタチ台無マルチの約1/5となる。(表1)。
  • 糖度は、ヒリュウ台のシートマルチ栽培で高くなり平均14.2、糖度12以上の割合が84%となる。また、ヒリュウ台の無マルチ栽培は、カラタチ台のシートマルチ栽培とほぼ同等の糖度となるが、糖度12以上の割合は高くなる。クエン酸含量は、ヒリュウ台でやや高くなり、シートマルチによりさらに高くなる傾向にある(表1)。
  • 果実階級は、ヒリュウ台でS、2S比率がやや高くなり、シートマルチによりさらに高くなる傾向にある(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、安山岩赤黄色土壌の結果である。
  • シートマルチは、透湿性のある資材を用い、畝部、通路部とも被覆した全面被覆である。
  • ヒリュウ台は、シートマルチにより水分ストレスを受けやすくなるため、乾燥による強い水分ストレスを受けた場合は、酸高や小玉果となるため、かん水を実施する。
  • ヒリュウ台では、小玉果が多くなる可能性があるので、摘果の時期、程度に留意する。

具体的データ

図1

図2

表1

表2

その他

  • 研究課題名:新資材・新栽培法による温州ミカンの品質向上技術の開発
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:荒牧貞幸、古川忠、永田浩久、井手勉、林田誠剛