九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

溶液受粉によるウメ「南高」の結実安定

要約

寒天とショ糖組成の液体増量剤に受粉品種の花粉を200倍で混和し、短果枝の満開時と中・長果枝の満開時の2回散布する溶液受粉により、結果率が向上し、2t/10aの安定した収量が見込まれる。

  • キーワード:ウメ、南高、溶液受粉、結実安定
  • 担当:鹿児島県農業開発総合センター・果樹部北薩分場
  • 代表連絡先: Tel:0996-42-0049
  • 区分:九州沖縄農業・果樹
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ウメの生産量には大きな変動があり、産地では結実不安定が問題となっている。この要因として、凍霜害や低温による媒介昆虫の活動低下による受粉不良に加えて、近年は、受粉用品種との開花期のずれが顕在化しつつあり、人工受粉の必要性が高まっている。そのため、省力的な人工受粉法としてキウイフルーツ等で導入されている溶液受粉のウメへの利用について検討した。

成果の内容・特徴

  • ウメの溶液受粉は、0.1%寒天液に10%相当量のショ糖を溶かした液体増量剤に、純花粉を200倍で混和し、1樹当たり200mlをハンドスプレー等で散布する。散布時期は、短果枝の満開時および中、長果枝の満開時の2回とする。
  • 液体増量剤に花粉を混和した場合、1時間後までの発芽率は純花粉と同等程度あり、3時間後には半分になる(表1)。
  • 溶液受粉により結果率は高まる(表2)。溶液受粉区の1樹当たり収量と収穫果数は自然受粉区の2倍以上で、10a当たり換算収量は2tが見込まれる(表3)。
  • 溶液受粉した場合、果実重の平均値は自然受粉区よりやや劣るが、2L階級以上の果実割合は82%で、1樹当たりの2L階級以上の果実数は自然受粉区の3倍にも及ぶ(表3)。
  • 溶液受粉に要する時間は1樹当たりでは3分で、10a当たり25本植えの場合では75分に相当する(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 開花期に凍霜害を受けた場合の事後対策として、残存する花に溶液受粉し収量を確保する。
  • 10a当たり2t以上の収量が連年確保できている場合は、溶液受粉の必要はない。
  • 花粉採取は満開時が効率的で、1名の1時間の作業で約200gの花蕾が採取でき、約1gの純花粉が得られる。
  • 「小粒南高」、「鶯宿」、「改良内田」等は「南高」よりも開花が遅く、これらの受粉品種を用いる場合、純花粉を翌年まで冷凍保存(-10°C)する必要がある。冷凍保存した純花粉は室温に戻してから使用する。

具体的データ

表1

表2

表3

表4

その他

  • 研究課題名:地球温暖化に対応した農業生産技術等の研究・開発
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:藤川和博、稲森博行、橋元祥一