九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

強酸性バレイショ圃場における被覆硝酸カルシウムを用いた施肥改善

要約

土壌pH4.8以下の強酸性バレイショ圃場において、硫安とリニア型40日タイプの被覆硝酸カルシウム肥料を成分比1:1に組み合わせた窒素条施肥は、従来の速効性肥料に比べ2割減肥しても収量は増加し、植物体中のカルシウム含量が増加する。 

  • キーワード: バレイショ、強酸性圃場、被覆硝酸カルシウム、窒素減肥
  • 担当: 長崎農技セ・馬鈴薯研究室
  • 代表連絡先: 電話0957-36-0043
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類: 技術・参考  

背景・ねらい

本県バレイショ産地ではそうか病の発生抑制として、pH(H2O)を低くおさえた土壌管理をおこなっている。2007年の調査において島原半島内バレイショ圃場の土壌pH(H2O)は、4.8以下が78.4%(内4.5以下が55.4%)を占め、酸性化が顕著である。土壌の酸性化は、そうか病の発生抑制効果があるものの、過度の酸性化はカルシウム等の吸収を妨げバレイショの収量、品質や出芽及び肥効率を低下させ、窒素肥料の過剰施用により土壌環境へ悪影響を及ぼす。そこで、強酸性圃場の土壌環境改善を目的として、被覆硝酸カルシウム肥料を用いたカルシウム供給向上及び窒素施肥量削減技術を確立する。 

成果の内容・特徴

  • 強酸性圃場でのバレイショ栽培において、硫安とリニア型40日タイプ被覆硝酸カルシウムを成分比1:1に組み合わせ2割減肥した区の収量が化成肥料区に比べ増加する(表1)。
  • 被覆硝酸カルシウムを肥料体系に組み合わせた区は、茎葉や塊茎中のカルシウム含量が増加する(表1)。
  • 被覆硝酸カルシウムを組み合わせた区は化成肥料区と比べ畝内土壌pH(H2O)の低下を軽減できる(表2)。
  • 被覆硝酸カルシウムの割合を多くするほどそうか病発生を助長するが、硫安との割合を成分比で1:1にすることで慣行の炭酸カルシウムと化成肥料との組み合わせに比べ、そうか病の発生を軽減することができる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果の施肥体系は、そうか病の発生がないpH(H2O)4.8程度以下の強酸性バレイショ圃場で活用できる。
  • 肥料中に石灰分が含まれるため、別途の石灰施用を省くことができる。
  • 本成果は淡色黒ボク土条件の結果であり、普及するにあたり、各地域の土性に対応した実証が必要である。

具体的データ

表

表1

表2

表3

 

その他

  • 研究課題名: ジャガイモそうか病の土壌くん蒸剤使用量削減のための総合的防除対策
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2006~2008年度
  • 研究担当者: 大井義弘、平田憲二、小川哲治、田宮誠司(現、北海道農研)、坂本悠、小池和好(出光興産)