九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

種子島における原料用サツマイモ生育障害土壌化学性の傾向

要約

種子島の畑では土壌pHが低く、石灰、苦土含量が極めて少ないほ場がみられ、土壌化学性が極端に悪化したほ場ではサツマイモの生育障害の発生が認められる。 

  • キーワード: 原料用サツマイモ、塩基、土壌pH
  • 担当: 鹿児島県農業開発総合センター・生産環境部・土壌環境研究室
  • 代表連絡先: 電話099-245-1156
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境部会
  • 分類: 技術・参考  

背景・ねらい

種子島の農耕地面積は9,491haで、そのうち黒ボク土壌が67%を占め、サトウキビ、サツマイモ、バレイショ等の土地利用作物が作付けされている。それらはサトウキビとの輪作体系をとり、種子島の基幹的作物に位置づけられている。しかし、最近サツマイモやバレイショの生育不良、収量低下が報告されている。そのため、これらの現象の要因解明のために、土壌化学性の観点から調査を実施した。 

成果の内容・特徴

  • 南種子町で発生した原料用サツマイモ生育障害では生育初期の節間伸長抑制、下葉の落葉がみられ、生育中期以降、生長点に近い上位節のみが伸長し、畦間で活着、発根し再生しているが生育は不良である。その発生ほ場の土壌化学性は、低pHで交換性石灰、苦土含量が極めて少ない特徴がみられる(図1)。
  • 原料用サツマイモ栽培土壌化学性を土壌診断基準値に照らすと、調査した47地点のうち38地点が土壌pHの基準値以下である。同様に基準値以下の地点数は、交換性石灰では41地点、交換性苦土では32地点で交換性石灰・苦土の不足が顕著である。また、生育障害がみられたほ場はすべてこれらの地点に含まれる(表1)。
  • 島内3市町の比較では、南種子町の交換性石灰は西之表市、中種子町に比べて低い。畑輪作上は南種子町では原料用サツマイモ、西之表市、中種子町は青果用サツマイモの作付けが多いことから土壌管理が異なるためと考えられる(図2)。
  • 土地利用型作物栽培土壌について土壌環境基礎調査の結果から交換性石灰は1987年度平均9.5meq/100gであったものが、2006年度では平均3.2meq/100gに減少している。そのため、現状の土壌管理の継続では生育異常が続発する可能性が強く、積極的な資材投入が必要である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • サトウキビ栽培跡作のサツマイモの生育不良は、サトウキビ残渣の鍬込みによる窒素不足が要因と考えられ窒素肥料中心の施肥対策が取られてきた。このことは土壌酸性化を助長してきた可能性が高く、今後、過剰な窒素施用は控える必要がある。
  • 低pH土壌矯正の目安は中和石灰曲線から炭酸カルシウム換算で概ね100kg/10aの施用が継続的に必要である。
  • 堆肥等の有機物を積極的に利用し、塩基バランスを考慮した土作りに努める必要がある。

具体的データ

図1

表1

図2

図3

 

その他

  • 研究課題名: 環境と調和した産地育成・支援事業
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2008年~2009年
  • 研究担当者: 森清文、西裕之、古江広治、渋川洋