九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

土壌の違いが豚舎汚水から回収されたリン酸結晶(MAP)の肥効に及ぼす影響

要約

酸性土壌でMAPをリン酸肥料として施用すると、チンゲンサイ栽培では過リン酸石灰と同等の肥効が得られる。一方、中性付近の土壌では過リン酸石灰よりも肥効が劣る。また、MAP施用による収穫後の可給態リン酸は、過リン酸石灰には及ばないが無リン酸区より増加する。 

  • キーワード: 豚舎汚水、リン酸肥料、MAP、チンゲンサイ
  • 担当: 沖縄農研セ・土壌環境班
  • 代表連絡先: 電話098-840-8503
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類: 技術・参考  

背景・ねらい

リン酸肥料の原料であるリン鉱石は、資源の枯渇や価格高騰が懸念されている。一方、豚舎汚水には環境負荷物質としてリン酸が含まれている。近年、豚舎汚水からリン酸結晶(MgNH4PO4・6H2O:以下MAPと略称)を回収する技術が開発された。既往成果によってMAPの土壌中の溶解性についてpHが高い土壌で緩慢となることが明らかにされている。そこで、MAPのリン酸肥料としての効果を作物反応や土壌分析により確認する。 

成果の内容・特徴

  • チンゲンサイ栽培において表2のようなMAP(く溶性リン酸)の施肥で、酸性土壌である国頭マージにおいては過リン酸石灰(水溶性リン酸)施用と同等の収量が得られる。一方、pHが中性付近の島尻マージにおいて、MAPは過リン酸石灰より有意に収量が劣る(表1、図1、図2)。
  • 国頭マージにおけるチンゲンサイ収穫後の可給態リン酸(Truog-P2O5)は、MAP施用により、過リン酸石灰には及ばないが無リン酸区より有意に増加する。また、島尻マージでは有意差はないものの、MAPや過リン酸石灰の施用で無リン酸区より可給態リン酸が増加する傾向にある(表3)。
  • MAPに含まれるMgや過リン酸石灰に含まれるCaによりMAP区で交換性MgO、過リン酸石灰区で交換性CaOが増加する(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 島尻マージでMAP区の収量が過リン酸石灰区より少ない原因として、土壌反応が中性であるためリン酸溶出が緩慢なことが考えられる。
  • 酸度矯正した国頭マージも含め、中性からアルカリ性の土壌におけるMAP施用は、初期成育の促進のため過リン酸石灰のような速効性リン酸との併用が望ましい。

具体的データ

表1

表2

図1

図2

表3

 

その他

  • 研究課題名: 結晶化法によるリン除去回収技術の簡易化・低コスト化手段の開発
  • 予算区分: 委託(先端技術を活用した農林水産研究高度化事業課題番号18066)
  • 研究期間: 2006~2008年度
  • 研究担当者: 眞境名元次、比嘉明美、鈴木一好(畜草研)