要約
ポット土壌に非病原性大腸菌株KM1を接種した牛ふん堆肥を灰色低地土、砂丘未熟土、黒ボク土に10a当たり2t施用(乾土1g当たり105~08個)しても、野菜(コマツナ、ホウレンソウ、レタス、小ネギ)の内部には大腸菌は移行しない。栽培期間中に、大腸菌の密度は急激に低下する。
- キーワード: 大腸菌、野菜、牛ふん堆肥、ポット栽培
- 担当: 宮崎県総合農業試験場・土壌環境部
- 代表連絡先: 電話0985-73-2124
- 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
- 分類: 研究・参考
背景・ねらい
家畜ふん中には大腸菌O157などヒトへの感染性を有する病原微生物が存在しうることが明らかになっており、これらを原料とする有機質資材(堆肥)の使用に際しては、微生物安全性の確保が不可欠である。
そこで、極高濃度の大腸菌類を牛ふん堆肥に接種後、土壌施用したポット土壌での野菜類の栽培を行い、作物体内への感染の有無と土壌中での大腸菌の消長を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 非病原性大腸菌株KM1を接種した牛ふん堆肥を1/5000aポットに充填した黒ボク土、灰色低地土、砂丘未熟土に、10a当たり換算で2t施用し、葉菜類(コマツナ、ホウレンソウ、レタス、小ネギ)の栽培を行い、収穫時に、植物体の殺菌・洗浄により表面の大腸菌の除去し、内部を摩砕後、CA(コリフォームアガー)培地で培養を行うと、大腸菌はほとんど確認されない(図1、図2、表1)。
- 2008年の黒ボク土で大腸菌の移行が疑われたが、2009年の大腸菌菌濃度107と108個での試験では移行は確認できない(表1)。
- 土壌中の大腸菌密度は、作物の栽培、無栽培にかかわらず、試験開始時の乾土1g当たり105~108個から、収穫時には、102~05個へ減少し、その減少程度は、砂丘未熟土で低い傾向がみられる(図3)。
成果の活用面・留意点
- 佐賀大学農学部付属フィールド科学教育研究センターの牛ふん堆肥から分離した非病原性大腸菌菌株KM1を使用した結果である。
- ポット栽培で点滴かん水での結果である。
- 微生物安全性の観点から、ほ場には60°C以上で2週間以上の腐熟過程を経た堆肥を施用することが望ましい。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 生産環境等からの病原指標菌の高感度検出法の開発および動態解明
- 予算区分: 国庫助成(新たな農林水産施策を推進する実用技術開発事業)
- 研究期間: 2007~2009年度
- 研究担当者: 赤木康、西原基樹、小窪正人、甲斐憲郎(宮崎総合農試)、染谷孝、呉聖進、犬伏歩、谷山義行(佐賀大学)