九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

大隅半島シラス台地周縁地下水の水質改善のための環境負荷リスクマップ

要約

大隅半島シラス台地において、地形、地質、土壌、潜在的な窒素負荷発生量や地下水硝酸態窒素濃度等をGISで整理し、作成した環境負荷リスクマップは、地下水の窒素負荷に関する総合的な情報をわかりやすく提示できる。 

  • キーワード: 地下水、硝酸態窒素、GIS、リスクマップ、シラス台地
  • 担当: 鹿児島農開セ大隅支場・環境研究室、八千代エンジニヤリング(株)
  • 代表連絡先: 電話0994-62-2001
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類: 行政・参考  

背景・ねらい

硝酸態窒素による地下水汚染が顕在化している大隅半島シラス台地では、地形、土壌分布、水理地質構造等の条件が地域毎に異なるとともに、窒素の負荷源や発生量も地域差があり、地下水汚染の程度と要因は一律ではない。また、水質の改善には、行政・農家・地域住民が一体となった取り組みと、関係者間の水質に関わる情報共有と合意形成が重要である。
そこで、GIS(地理情報システム)による地下水への環境負荷に関わる情報のデータベースの構築と、これらをもとに作成した環境負荷リスクマップを提示する。 

成果の内容・特徴

  • 環境負荷リスクマップは、大隅半島シラス台地における地形解析図、土壌分布図、地質分布図、地下水位等高線図、土地利用図、潜在的な窒素負荷発生量および地下水硝酸態窒素濃度分布図などから構成される(表1)。リスクマップ作成の流れは、(1)構成図の基礎情報の収集・整理、(2)GISデータベースの整備、(3)解析、図化である(図1)。
  • 地形解析図、地質分布図、地下水位等高線図の提示によって、地質構成や地下水流動が明らかになり、施肥窒素の溶脱など地下水水質の悪化要因の解析に利用可能である(図2)。
  • 農業に由来する窒素の集落単位の潜在的な発生量(農作物系と畜産系の合計)の提示によって、地域毎の負荷源の違いが明らかになる(図3左)。また、井戸水や湧水の水質調査地点データをIDW法(調査地点データ間の距離を考慮して内挿補間し、画像データに変換する方法)で作成した硝酸態窒素濃度分布イメージ図の提示によって、その分布状況が推定できる(図3中央)。
  • 集落単位の潜在的な窒素負荷発生量と地下水の硝酸態窒素濃度を照合した図の提示によって、負荷源の分布状況と水質の実態を関連づけた把握が可能になる(図3右)。このように、種々の構成図を重ね併せた環境負荷リスクマップは、地下水の窒素負荷に関する総合的な情報をわかりやすく提示できる。

成果の活用面・留意点

  • 当リスクマップは、行政・農家・地域住民など立場の異なる関係者間における地下水の窒素負荷に関する情報の共有や解決に向けた取組みの促進に活用できる。
  • 土壌図、土地利用図や窒素負荷発生量図等の提示によって、土壌環境や施肥管理の状況等を推測できる。活用にあたっては、これらの情報を基に対象地域の実態を踏まえて農家等と合意形成を行い、環境負荷低減技術を普及させる。
  • 一般に、GISで複数の地理情報を重ね併せたものはGISデータベースとされるが、当情報では、地下水水質に関わる個々の要因をリスクとして位置づけ、マップ化したものを環境負荷リスクマップとした。

具体的データ

表1

図1

図2

図3

 

その他

  • 研究課題名: シラス台地上の畑作地帯における畜産由来有機性資源の循環利用に伴う環境負荷物質の動態解明と環境負荷低減技術
  • 予算区分: 指定試験
  • 研究期間: 2006~2010年度
  • 研究担当者: 脇門英美、肥後修一、金子のぞみ(八千代エンジニヤリング)、高橋努(八千代エンジニヤリング)