要約
水稲品種「元気つくし」は、高温登熟性が'強'で、登熟温度27~28°C前後の高温登熟条件下でも玄米の白未熟粒の発生が少なく、外観品質が優れる。食味は「ヒノヒカリ」より優れ、冷飯および古米でも同程度に優れる。'早生'で、収量性は「ヒノヒカリ」と同程度である。
- キーワード: 水稲、早生、高温登熟性、食味
- 担当: 福岡県農業総合試験場・農産部・水稲育種チーム
- 代表連絡先: Tel:092-924-2937
- 区分: 九州沖縄農業・水田作
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
近年、地球温暖化により、水稲の登熟期間における気温は高まる傾向にある。その結果、本県の主力品種である「ヒノヒカリ」を中心に、白未熟粒(乳白粒、心白粒、基部未熟粒等)の多発によって、玄米の外観品質(検査等級)や収量が低下し、深刻な問題となっている。
そこで、県産米の評価向上のため、高温登熟性に優れかつ極良食味の水稲品種を育成する。
成果の内容・特徴
「元気つくし」は、平成10年に「ちくし46号(後のつくしろまん)」を母とし、「つくし早生」を父として人工交配を行った組合せに由来する。
「つくしろまん」「ヒノヒカリ」と比較して、次のような特徴がある。
- 出穂期、成熟期ともに「つくしろまん」と同程度で'早生'に属する粳種である。「つくしろまん」と比較して、稈長、穂長はやや長く、穂数は同程度~やや少ない'中間型'である(表1)。
- 収量性および千粒重は同程度である(表1)。
- 検査等級は優れる。高温登熟性は'強'であり、温水掛け流し処理および早植栽培で高温登熟処理を行っても、玄米の白未熟粒の発生が少ない(表1、表2)。
- 食味は、「ヒノヒカリ」より優れ、「つくしろまん」と同程度の'極良食味'である。冷飯および古米の食味も「つくしろまん」と同程度に優れる(表1)。
- 耐倒伏性は'やや弱'である。いもち病圃場抵抗性は、葉いもちは'弱'、穂いもちは'やや弱'である。穂発芽性は'難'である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 県内の山麓地~平坦地に適する。
- 品種登録出願公表(第23311号、2009年2月23日)、準奨励品種(2009年3月23日)に採用。
- いもち病には弱いため、必要に応じて防除を行う。
具体的データ
(和田 卓也)
その他
- 研究課題名: 味が冴える高温耐性品種の育成
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 1998~2009年度
- 研究担当者: 和田 卓也、坪根 正雄、尾形 武文、濱地 勇次、松江 勇次、井上 敬、大里 久美、安長 知子、川村 富輝、宮崎 真行、石塚 明子、岩渕 哲也、井上 拓治
- 発表論文等: 高温登熟性に優れる水稲新品種「元気つくし」の育成およびその特性
福岡農総試研報、29:1-9(2010).