要約
小麦品種「チクゴイズミ」の子実タンパク質含有率は、出穂期前後の葉色と追肥窒素量及び穂数との相関が高い。穂揃期の葉色と穂数を測定し、穂揃期の追肥窒素量を加減することで、タンパク質含有率を適正範囲に調節できる。
- キーワード: チクゴイズミ、タンパク質含有率、穂揃期、SPAD値、穂数、追肥窒素量
- 担当: 佐賀農業セ・作物部・作物研究担当
- 代表連絡先: Tel:0952-45-2141
- 区分: 九州沖縄農業・水田作
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
九州北部平坦地の重粘土水田で栽培される小麦品種「チクゴイズミ」では、子実タンパク質含有率が品質ランク区分での日本めん用小麦の基準値(9.7~11.3%)より低くなることが多く、タンパク制御は重要な課題となっている。出穂期前後の葉色と子実タンパク質含有率には正の相関があり、出穂期前後の窒素追肥によって子実タンパク質含有率が増加することから、「チクゴイズミ」では穂揃期追肥が導入されている。しかし、画一的な追肥技術では、年次や圃場によって子実タンパク質含有率が変動するため、個々の生育量に応じた精度の高い追肥診断技術が求められている。そこで、小麦品種「チクゴイズミ」の適正な子実タンパク質含有率を確保するため、穂揃期追肥診断技術を確立する。
成果の内容・特徴
- 小麦品種「チクゴイズミ」の子実タンパク質含有率は、穂揃期の生育量によって窒素追肥によるタンパク質含有率の向上効果が異なることから、タンパク質含有率を目的変数に、生育量を表す説明変数を用いた重回帰分析を行うと、穂揃期の葉色(SPAD値)と追肥窒素量(kg/10a)を穂数(本/m2)で除した1穂当たり追肥窒素量を説明変数とする、次の回帰式が得られる(表1)。
- 得られる回帰式に葉色(SPAD値)と穂数を測定して変数に代入することで、タンパク質含有率を基準値である10.5%にするための追肥窒素量を推定することができる(表2、図1)。
成果の活用面・留意点
- この回帰式は、有明海沿岸平坦重粘土地帯に適用する。
- 葉色(SPAD値)は止葉の葉身の中央部分(葉脈を外す)を10点以上測定する。穂数は、1畦50cm間の穂数を1圃場当たり2点以上測定し、m2当たり穂数に換算する。
- 子実タンパク質含有率は、登熟期間の気象条件(降水量)等によっても変動する。
- 成熟期は穂揃期の追肥窒素量2kg/10a当り1日程度遅れる。
- 穂揃期の追肥窒素量の差で検査等級に差はみられない(図2)。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 麦類の品質ランク区分に対応した高品質化技術の開発
有明海沿岸平坦重粘土地帯における水田輪作技術の体系化及び品質管理システムの現地実証 - 予算区分: 県単、受託
- 研究期間: 2005~2008年度
- 研究担当者: 牧山 繁生、市丸 喜久、横尾 浩明、三原 実、浅川 将暁
- 発表論文等: 牧山ら(2008)佐賀県成果情報