九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

高温登熟性に優れる水稲新品種候補「南海166号」

要約

「南海166号」は、暖地における普通期水稲中生の粳種である。高温登熟条件での背白粒、基部白粒の発生が少なく、外観品質が安定して優れる。「ヒノヒカリ」より多収で耐倒伏性も強い。 

  • キーワード: イネ、高温登熟性、耐倒伏性、中生
  • 担当: 宮崎県総合農業試験場・作物部
  • 代表連絡先: Tel:0985-73-2126
  • 区分: 九州沖縄農業・水田作作物
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

九州では、中生の極良食味水稲品種「ヒノヒカリ」に作付けが集中しているが、近年、登熟期の高温による玄米品質低下が問題となっている。このため、高温登熟性に優れる品種の導入や肥培管理の改善などの品質向上対策が実施され一定の効果があがっているが、その効果は地域によっては十分とは言えない。そこで、早生~中生で高温登熟性に優れ、耐倒伏性が強い極良食味、多収品種を育成する。

 

成果の内容・特徴

  • 「南海166号」は2000年に中生、極良食味の「南海149号」を母、中生、極良食味、良質の「北陸190号」を父として人工交配を行った組み合わせから育成された粳系統である。
  • 出穂期は「ヒノヒカリ」より3日早く、成熟期は5日早い。暖地では“中生の早”に属する(表1)。
  • 稈長は「ヒノヒカリ」より12cm短く、穂長は同程度である。穂数はやや少なく、草型は“偏穂重型”である(表1)。
  • 耐倒伏性は「ヒノヒカリ」より強い“強”である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,Pii ”を持つと推定される。葉いもち圃場抵抗性は“中”、穂いもち圃場抵抗性は“やや弱”である。白葉枯病抵抗性は“弱”、縞葉枯病に“罹病性”、穂発芽性は“中”、である(表1)。
  • 収量は「ヒノヒカリ」より多い。千粒重は「ヒノヒカリ」よりやや小さいが、粒厚はやや厚く分布する(表1)。
  • 高温登熟条件での白未熟粒の発生が少なく、高温登熟性は「金南風」と同程度の“強”である(表2、図1)。外観品質も安定して優れる(図2)。
  • 食味は、「ヒノヒカリ」と同等の極良食味である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 良質、多収の中生品種として、暖地の普通期水稲栽培地帯に適する。
  • 宮崎県の普通期水稲地帯において、「ほほえみ」の全部、「ヒノヒカリ」の一部に替えて普及予定である。
  • 穂いもちにやや弱いので、発生が見られた場合は的確に防除する。白葉枯病に弱いので、常発地での栽培は避ける。

具体的データ

表1

表2

図1 

図2

その他

  • 研究課題名: 暖地の普通期栽培向け、極良食味、多収の水稲品種の育成
  • 予算区分: 指定試験
  • 研究期間: 2000~2009年度
  • 研究担当者: 永吉嘉文、中原孝博、齋藤葵、黒木智、井場良一、加藤浩、山下浩、三枝大樹、竹田博文、堤省一朗、上田重英、若杉佳司、川口満、吉岡秀樹、薮押睦幸、角朋彦