九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

二条オオムギにおける退色粒の検定法

要約

二条オオムギの退色粒発生には、黄熟期以降の降雨が影響する。黄熟期の切り穂に20°C、湿度100%、4日間の高湿処理を行い、穀粒の明度(L*値)を指標として退色程度を評価することで、明度が高く退色しにくい品種・系統を選抜できる。

  • キーワード: 二条オオムギ、退色粒、黄熟期、L*
  • 担当: 福岡農総試・農産部・麦類育種チーム(二条大麦育種指定試験地)
  • 代表連絡先: Tel:092-924-2937
  • 区分: 作物、九州沖縄農業・水田作
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

ビールや焼酎の原料である皮性の二条オオムギでは、登熟後期の降雨により外観品質が低下する。その原因の一つは穀粒の退色であり、高品質麦生産上の大きな問題となっている。しかし、退色粒発生の要因解明は不十分であり、安定した検定法はまだ確立されていない。そこで、退色粒が発生する環境要因を解析し、退色しにくい品種を安定して選抜できる検定法を明らかにする。
 

成果の内容・特徴

  • 過去10年間の時期別の降水量と穀粒の色相(L*, a*, b*)との関係から、退色粒は黄熟期(達観で穀粒の緑色が抜けた時期:出穂期から約40日後)以降の降雨の影響が大きい(図1、一部データ略)。
  • 黄熟期の降雨を回避した区(雨よけ区)と、自然降雨に遭遇した区(自然降雨区)における穀粒の色相において、自然降雨区のL*値のみが有意に低下したことから、L*値は退色程度の指標となる(表1)。
  • 黄熟期における切り穂について、温度20°C、湿度100%の高湿処理を4日間行った高湿処理区のL*値と高湿処理を施さず降雨に遭遇させない無処理区のL*値の差(退色程度)は、高湿処理区のL*値との間に負の相関が認められた(図2)。このことから、退色程度を評価することで、高湿処理後も明度が高い品種・系統を選抜できる。
  • 高湿処理区における退色程度は、自然降雨に遭遇した一般圃場の収穫物における退色程度と正の相関が認められる(図3)。このため、高湿処理によって退色程度を評価することで、黄熟期の降雨に遭遇しても穀粒の退色程度が小さい品種・系統を安定して選抜できる。 

成果の活用面・留意点

  • 登熟後期の降雨に遭遇しても、退色しにくい品種・系統の選抜に利用できる。

具体的データ

図1

表1

図2

図3 

その他

  • 研究課題名: ビール用、焼酎用二条大麦の高品質・雨害耐性系統の作出
  • 予算区分: 加工プロ
  • 研究期間: 2006~2008年度
  • 研究担当者: 塚﨑守啓、甲斐浩臣、髙田衣子、古庄雅彦、馬場孝秀