要約
牛卵子・初期胚において、代謝機能を担う生体防御関連膜タンパク質(P糖タンパク質)が存在し、抗生物質リファンピンの発生培地への添加によるP糖タンパク質増強により凍結融解後の生存率が向上する。
- キーワード: 牛、体外胚、P糖タンパク質、リファンピン、凍結、生存率
- 担当: 福岡農総試・家畜部・工学養豚チーム
- 代表連絡先: Tel:092-925-5232
- 区分: 九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)
- 分類: 研究・参考
背景・ねらい
牛の体外胚は低コストで生産できる技術であるが、体内胚に比べ耐凍性が低いとされ、現在胚の耐凍性向上につながる培養技術が求められている。近年、マウスや豚の生殖細胞にも存在することが知られる生体防御関係膜タンパク質(P糖タンパク質)が、細胞の代謝機能の活性化や細胞死アポトーシスの抑制作用を持つことが報告されており、牛胚の体外培養においてP糖タンパク質を増やす技術を開発することにより、凍結による胚細胞への障害や死滅を抑制する効果等が期待できる。
そこで、牛卵子・胚におけるP糖タンパク質量について解析するとともに、P糖タンパク質量を強化する培養法について検討し、胚発生や凍結融解後の生存性へ及ぼす効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 牛の卵子および胚盤胞までの初期胚において、P糖タンパク質が検出される(図1)。
- 体外受精後の発生培地にP糖タンパク質関連遺伝子の発現を促す作用のある抗生物質リファンピンを10μM添加すると、胚盤胞におけるP糖タンパク質量が有意に増加する(図2)。
- 発生培地にリファンピンを10μM添加して体外培養すると、胚盤胞への発生率、細胞数は変わらないが(表1)、凍結融解後の胚の生存率が向上する(表2)。
成果の活用面・留意点
- 体外胚を生産・移植する機関において、耐凍性の高い胚を作出する技術として利用できる。
具体的データ
(森 美幸)
その他
- 研究課題名: 卵子・胚におけるP糖タンパク質の発現量を増やす培養技術
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2007~2009年度
- 研究担当者: 森 美幸、笠 正二郎、山口 昇一郎、上田 修二