要約
アグー種豚のミトコンドリアDNA(mtDNA)d-loop領域における塩基配列を決定した。この領域のハプロタイプにより東洋系タイプと西洋系タイプとの識別が可能となる。
- キーワード: ミトコンドリアDNA、塩基配列、母系解析
- 担当: 沖縄県畜産研究センター・飼養環境班
- 代表連絡先:Tel:0980-56-5142
- 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜・畜産環境)
- 分類: 研究・参考
背景・ねらい
2005年におきなわブランド豚推進協議会(協議会)が設立され、アグー種豚の個体登録を行っている。アグーのブランド力を強化するため品種識別法の開発を目指す。アグー種豚のmtDNA d-loop領域において1つのハプロタイプが報告されているが、協議会により登録されたアグー種豚についてはいまだ解析が行われていない。そこで、協議会アグー種豚を対象にmtDNA d-loop領域塩基配列の解析を行う。
成果の内容・特徴
- mtDNA d-loop領域1049bpの塩基配列には26ヶ所に塩基置換部位が認められ、5つのハプロタイプが存在する(表1)。タイプ1とタイプ2との間には2ヶ所において塩基置換部位が認められる(表1)。
- 近隣結合法により系統学的に分類したOkumuraらが報告したmtDNAハプロタイプと照合すると、タイプ1およびタイプ2は東洋系タイプと同様で、タイプ3、タイプ4およびタイプ5は西洋系タイプと同様である。アグー種豚90頭のうち東洋系タイプの頭数は、供試豚全頭の85.6%を占める(図1)。
成果の活用面・留意点
- 協議会ではアグー種豚の個体登録認定を行う際にはマイクロサテライトマーカーを用いた核DNAの多型解析を行っている。これに加え、mtDNA d-loop領域における母系解析を活用すると東洋系タイプと西洋系タイプとの識別が可能になる。
- 東洋系タイプのみが登録認定されるようになると,アグーのルーツが中国から伝来したという歴史的背景を科学的根拠を持って証明することが可能となり、アグーブランドを強化させる可能性がある。
具体的データ
(島袋 宏俊)
その他
- 研究課題名: 琉球在来豚アグーの近交退化の緩和および増殖手法の確立(1)アグーの近交退化を緩和するための育種技術の確立
- 予算区分: 競争的資金・実用技術
- 研究期間: 2005~2009年度
- 研究担当者: 島袋 宏俊、稲嶺 修、仲村 敏、瑞慶山 まどか、美川 智(生物研)、佐藤 正寛(畜草研)、石井 和雄(畜草研)
- 発表論文等: 島袋ら(2008)沖縄畜研報、46:43-50