要約
食用米(完熟期、籾米)を用いたイネソフトグレインサイレージの発酵品質は良好である。粉砕、圧ペン、イネSGSに加工した飼料用米(籾米)を搾乳牛に給与する場合、乾物ベースで濃厚飼料の22%を代替飼料として給与ができる。
- キーワード: 飼料用米、粉砕、圧ペン、イネSGS、乳牛、代替飼料
- 担当:宮崎県畜産試験場・酪農飼料部
- 代表連絡先: Tel:0984-42-4837
- 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
近年、輸入飼料の高騰により、新しい自給飼料として飼料用米が注目されている。食用米や飼料イネの子実は、他の穀類と同様の栄養価をもつとの報告があるが、飼料用米を用いた報告は少なく飼料成分や特徴は未解明な部分が多い。また、米を牛に給与する場合は粉砕等の物理的処理をする必要があるとの報告があるが、酪農現場では飼料用米の調製方法や給与法についての情報が少ない。そこで、籾米における3種類の調製方法の違いが、飼料成分および泌乳成績に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 破砕処理した完熟期の食用米(籾米)に、乳酸菌、糖蜜、水を添加後、密封することで良質なサイレージ発酵が得られる。さらに、開封後も密閉状態を維持すると品質変化もみられない(表1)。
- 飼料用米「北陸193号」の飼料成分は、トウモロコシと比べて、TDN、CP、NFEは低いが、粗繊維、粗灰分は高い値を示す。また、物理的処理別(粉砕、圧ペン、イネSGS)の飼料成分のうちNDF含量は、原料籾と比べ粉砕処理で低下し、圧ペン処理で増加する。(表2)。
- 乾物ベースで濃厚飼料の22%を粉砕、圧ペンあるいはイネSGSに加工した籾米で代替し、搾乳牛へ給与した場合(表3)、各区において乾物摂取量および乳量ともに有意差は認められない。以上の結果から、搾乳牛に物理的処理した飼料用米の籾米を給与する場合は、乾物ベースで濃厚飼料の22%代替給与可能である(表4)。
成果の活用面・留意点
- 飼料として利用する籾米は、出穂期以降に農薬散布をしないものとする。また、出穂期以降に農薬の散布を行う場合には、籾すりをして玄米にする必要がある。(「飼料として使用する籾米への農薬の使用について」平成21年4月20日付け21消安第658号・21生畜第223号)
具体的データ
その他
- 研究課題名: 西南暖地向け飼料米品種を用いた飼料米の乳牛への給与技術の確立
- 予算区分: 委託プロ(えさ)
- 研究期間:2008年度
- 研究担当者:西村慶子、東政則、中原高士