九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

高機能膜(MF膜)を利用した養豚汚水浄化処理施設の機能向上

要約

既存の浄化処理施設に高機能膜ユニットを付加することで、高負荷による浄化機能低下や処理水の水質悪化を改善することができる。

  • キーワード:養豚汚水、浄化処理、高機能膜
  • 担当:宮崎県畜産試験場・川南支場・環境衛生科
  • 代表連絡先: Tel:0983-27-0168
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
  • 分類:技術・普及

 

背景・ねらい

飼養頭数規模の拡大に伴い家畜排せつ物排出量が増加すると、既存の処理施設では適正処理が困難となる場合がある。特に、養豚経営における汚水浄化処理施設では、処理対象汚水量や汚濁物質の濃度が設計数値を上回り高負荷運転になると、浄化機能が低下し、処理水の水質が悪化する。
高機能膜(MF膜)を利用した膜分離法では、従来法に比べ曝気槽内に高濃度の活性汚泥を維持できるため、同一容積ならば、処理するBOD量を増やすことができる。また、構造上、バルキング問題への対処が可能であり、処理水中のSS、大腸菌やクリプトスポリジウムなどの有害微生物も除去できる。
そこで、曝気槽内に新たに高機能膜(MF膜、モジュール形状:平膜)ユニットを取付け吸引分離することで高負荷時の水質改善や処理機能等について検討する。

成果の内容・特徴

  • 膜分離法による養豚汚水処理では、BOD容積負荷の変動により活性汚泥濃度(MLSS)が最大13,040mg/lまで上昇しても処理水の水質は良好であった。槽内のMLSS濃度は平均10,270mg/Lと高い値で維持できる。(表1)
  • 膜のフラックス値(膜透過流束)を段階的に0.43m3/m2・日まで引き上げたが、膜間差圧の異常は見られず、処理水の水質にも影響を及ぼさない。(表2)
  • 経営規模を母豚50頭増頭した場合の施設の設置コストは、活性汚泥法の増設に比べ、新たな用地確保も必要なく、設置費用を抑えることが可能である。また、ランニングコストは活性汚泥法に比べ5千円/月高いが施設全体にかかる費用は出荷豚当たり55円/頭安くなる。(表3)

成果の活用面・留意点

  • 既存の活性汚泥による浄化処理施設において、処理負荷の増加により曝気槽内の活性汚泥管理等に苦慮している場合、この高機能膜を利用することにより安定した処理水を得ることができる。
  • 高機能膜1枚当たり1日の処理量は0.32m3/日が目安となるので導入する際は、農場から排出される水量を把握した上で設置する必要がある。

具体的データ

図1

表1

表2

表3

  

その他

  • 研究課題名: 養豚経営における高機能膜を利用した浄化処理機能向上技術の開発
  • 予算区分:県単
  • 研究期間: 2005~2009年度
  • 研究担当者:松葉賢次、中村淳美、水野和幸