九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

既存施設簡易改善と海水利用によるリン除去回収技術

要約

リン酸の結晶反応によるリン除去回収は、簡易な既存施設の改造と廉価な部材で効果が得られる。さらに結晶化反応促進用添加Mg源として海水を4%添加することでより効率的に水溶性リン濃度を低減することができる。

  • キーワード:豚舎汚水、浄化処理、リン除去、MAP、海水
  • 担当:沖縄県畜産研究センター・企画管理班
  • 代表連絡先: Tel:0980-56-5142
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
  • 分類:技術・普及

 

背景・ねらい

本県においても全リンの規制海域(3海域)が定められており、養豚農家においては、今以上の高度な汚水処理が求められている。豚舎排水からのリンの除去回収技術として、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)法が確立されている。この手法では豚舎排水のpHを弱アルカリ性のすることでリン酸の結晶化反応が促進し、水溶性リンの除去が可能である。また、除去回収したリンは有用資源として新たな提供元になる可能性も期待できる。この技術を普及するためには簡易・低コストな実用技術の開発が必要で、本研究では高濃度の豚舎汚水(ふん尿混合汚水)を対象として簡易な設備改善によるリンの除去・回収を検証するとともに、県の立地条件を生かし海水をMg資源として活用することで、運転コストの低廉化のための方法について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 既存の活性汚泥浄化処理施設にMAP反応槽を付設することにより、施設改修させることができる(図1)。また、反応槽設置に係る経費は、肥育豚換算1,000頭、日排水量25tで算出すると、約85万円(リン除去のみ)、約150万円(リンの除去・回収)であり、年間のランニングコスト(電気代)は約4万7千円である(表2)。
  • 高濃度の豚舎汚水が発生する養豚農家(肥育豚換算:2,400頭、排水量:60t/日)においてMAP反応槽を設置し、ばっ気により排水のpHをアルカリ性に高めることにより、排水中の水溶性リン濃度を52%低減化させることができる(表1)。
  • MAP反応槽のばっ気部に、汚水に対して4%の海水を添加することにより、MAP反応による水溶性リン濃度低減化をより効率的に促進させることができる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 本県で多く見受けるふん尿混合の高濃度汚水についても、簡易施設でのMAP反応により汚水中の水溶性リン濃度を低減させることができる。
  • Mg源として海水を利用する場合は、砂などの夾雑物をできるだけ除去する方が望ましい。また、海水添加によるMAP反応槽以降の浄化槽への影響を調べるため、EC(海水の割合が高くなると数値が上がる)を測定し、浄化処理への影響について十分留意するとともに、海水中に含まれる微生物による浄化槽微生物相への影響について考慮する必要がある。
  • 添加する海水量が多いことから、採水・移送法を十分検討する必要がある。

具体的データ

図1

表1

表2

表3

 

その他

  • 研究課題名:結晶化法におけるリン除去回収技術・高濃度貯留槽への適用法の確立
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間: 2006~2008年度
  • 研究担当者:稲嶺修、鈴木直人、安里直和、鈴木一好(畜草研)