九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

加速度計を用いた乳牛の発情および分娩の検知システム

要約

新たに開発した加速度センサーシステムは、乳牛の前肢に装着することで発情時の乗駕行動などによる前脚の動きを、膣内に挿入すると分娩時の第一破水による衝撃を検知できる。

  • キーワード:乳牛、発情、分娩、加速度センサ、行動
  • 担当:福岡農総試・家畜部・乳牛チーム、NTT環境エネルギー研究所
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5232
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
  • 分類:技術・参考

 背景・ねらい

酪農業の収益を向上させるには繁殖管理の効率化が重要である。乳牛の発情発見は落ち着きの無い行動や乗駕行動などが指標となるが、それらを見極めることは容易ではない。また、分娩時のトラブルはその後の泌乳、繁殖能力に悪影響を及ぼすが、管理者の不在時や夜間の分娩では介助が遅れることで難産となることが少なくない。これらのことから、発情行動の発見や分娩が近づいたことを予測し通知する技術の開発が望まれている。加速度計は物体の前後、左右、上下の速度変化を測定できるため、牛の行動も数値で捉えることが可能と考えられる。
そこで、牛の発情と分娩を加速度計を用いて検知するシステムのを開発を目的とする。

成果の内容・特徴

  • 新たに開発した、発情と分娩前の破水を検知するセンサーは、加速度計と無線機およびこれらの制御装置からなり、重力に対する前後、上下、左右の姿勢や行動の変化をとらえる(図1)。センサーがとらえた加速度データは無線機で発信し、コンピューターで受信される(図2)。
  • センサーを牛の前肢に装着すると発情を検知できる。発情日は、落ち着きのなさや乗駕行動によって加速度の変化が大きくなる(図3)。
  • センサーを牛の膣内に挿入すると分娩前の第一破水が検知できる。破水前の強い陣痛とその後の破水によって加速度が急増する。破水によってセンサーが落下した後は加速度の変化は無くなる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 牛の発情と分娩を自動検知するシステムを製品化するための基礎的知見として活用できる。
  • 発情検知はフリーストール牛舎、分娩検知は分娩室における実験環境で得られた所見である。

具体的データ

図1

図2

図3

図4

 

 

その他

  • 研究課題名:乳牛の繁殖・疾病管理のためのバイタルセンシングシステムの開発
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:北崎宏平、古賀康弘、馬場武志、渡辺敏雄・櫻井敦(NTT環境エネルギー研)
  • 発表論文等:福岡県ら「分娩徴候検知方法及びシステム」特許出願2008-057194、2008-057195