九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

乳酸菌バクテリオシンを主成分とする乳頭消毒剤の殺菌効果は高い

要約

乳酸菌バクテリオシンのナイシンAを主成分とする新開発の乳頭消毒剤は、乳頭に付着したブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌などの乳房炎原因菌を1分間で99.9%以上減少させる殺菌効果を有する。

  • キーワード:乳酸菌バクテリオシン、ナイシンA、乳頭消毒、乳房炎
  • 担当:福岡農総試・家畜部・乳牛チーム、久留米大学医学部、ADEKAクリンエイド、オーム乳業、熊本製粉、九州大学農学研究院
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5232
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

本県における乳牛の疾病の中で乳房炎の発生割合は20%と多い。搾乳前の乳頭消毒は乳房炎防除法の中で最も重要な方法で各種の消毒剤が使用されているが、近年の食の安全志向が高まる中で、より安全性の高い消毒剤の開発が望まれている。乳酸菌が生産する乳酸菌バクテリオシンは、殺菌効果が強く、耐性菌ができにくいこと、ヒトや動物の胃腸内で分解されるなど安全性が高い抗菌性物質であり、動物衛生分野への応用が期待されている。
そこで、乳酸菌バクテリオシンの内、特に食品安全性の高いナイシンAを主成分とする乳頭消毒剤を開発し、その効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 開発した乳頭消毒剤の主な成分は、殺菌成分のナイシンA、細菌の細胞膜透過性を亢進させることでナイシンAの殺菌効果を増強する有機酸、および食品用乳化剤、グリセリンからなる(表1)。
  • 乳頭消毒剤は、乳牛の乳頭に付着した黄色ブドウ球菌および非伝染性ブドウ球菌を1分間で99.9%以上減少させ、市販品以上の高い殺菌効果を有する(図1)。
  • 乳頭消毒剤は、乳牛の乳頭に付着した伝染性レンサ球菌と大腸菌を1分間で99.9%以上減少させ、市販品と同等以上の高い殺菌効果を有する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 新奇抗菌性物質の家畜用消毒剤への応用法としての新たな科学的知見である。
  • 搾乳前に実施する乳頭消毒における食品安全性の高い乳頭消毒剤(ディッピング剤)として動物用医薬品の認可を受けた後、普及を図る。

具体的データ

表1

図1

図2

その他

  • 研究課題名:乳酸菌バクテリオシンを利用した乳房炎予防・治療法
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:北崎宏平、梅田剛利、森永結子、馬場武志、古賀康弘、桑野剛一(久大医)、福田浩章(ADEKAクリーンエイド)、河田恵美(ADEKAクリーンエイド)、高巣祐介(ADEKAクリーンエイド)、竹花稔彦(ADEKAクリーンエイド)、古賀祥子(オーム乳業)、永利浩平(オーム乳業)、島田信也(オーム乳業)、農新介(オーム乳業)、林龍鶴(熊本製粉)、前田幸子(熊本製粉)、川崎貞道(熊本製粉)、善藤威史(九大院農)、中山二郎(九大院農)、園元謙二(九大院農)
  • 発表論文等: 福岡県ら「乳房炎予防剤」特願2009-121295