九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

陶器製部材を用いた豚舎汚水からのリン除去回収技術

要約

MAP反応を利用した豚舎汚水からのリン除去・回収技術において、MAP回収部材として陶器製部材を利用する場合、塩化マグネシウム(30%MgCl2・6H2O)溶液に浸漬処理した星型部材を利用することで、MAP回収量が顕著に増加する。

  • キーワード: 結晶化反応、陶器製部材、塩化マグネシウム、浸漬処理
  • 担当:佐賀畜試・中小家畜部・養豚環境研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0954-45-2030
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
  • 分類:技術・参考 

背景・ねらい

有用資源であるリンの回収・再資源化技術として、リン酸の結晶化反応であるMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)反応を利用した豚舎汚水からのリン除去・回収技術が開発されているが、この技術を普及させるためには、簡易化・低コスト化が必要となるとともに、地域に応じた回収部材を選定する必要がある。
そこで、佐賀県は陶磁器の産地であることから、多孔体構造である陶器製部材を利用した効率的なリン除去・回収技術の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 既存の汚水処理施設(最初沈殿槽、流量調整槽)を一部改造し、MAP回収部材として陶器製部材を利用する場合、MAP反応槽は130~140万円程度(母豚100頭一貫規模)で設置できる。(図1)。
  • 試験期間中の家畜尿汚水中成分について、MAP反応の誘発により全リンおよび水溶性リンが除去される(表1)。
  • 凹凸構造の形状の異なる2種類の回収部材を利用した場合、凹部分が狭い星型部材においてMAP等結晶物の回収量が多くなる(図2)。
  • 回収部材をMAP反応槽に供試する前に30%MgCl2・6H2O溶液に浸漬処理(1週間浸漬、1週間風乾)することで陶器の特徴である多孔体部分にMgの種結晶が形成され、未浸漬部材と比べてMAP等結晶物の回収量が顕著に増加する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • MAP反応槽は固液分離後の汚水であれば、最初沈殿槽および流量調整槽に設置可能である。また、陶器製回収部材は、1本当たり1,000~1,100円で購入可能である。
  • 曝気量を増加して空気と部材との接触面積を多く確保することで、MAP回収効率を高めることができる。
  • 既存の汚水処理施設を設置している農家には低コストでの導入が可能であるが、豚舎から排出される豚舎汚水のpHが弱アルカリ性(8以上)を示す場合には、配管の組み替え等pHを上昇させない工夫が必要となる。

具体的データ

図1

表1

図2

 

図3

 

 

その他

  • 研究課題名:結晶化法によるリン除去回収技術の簡易化・低コスト化手段の開発
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:脇屋裕一郎、坂井隆宏、河原弘文、古田祥知子(佐賀窯技)、関戸正信(佐賀窯技)、鈴木一好(畜草研)
  • 発表論文等:脇屋ら(2009)日本養豚学会誌、46(3):159-170