要約
低CP飼料とカンショ焼酎粕のリキッドフィーディングは、通常CP飼料にカンショ焼酎粕を混合した場合より肥育豚の尿汚水量、窒素排せつ量を低減する。
- キーワード:肥育豚、リキッドフィーディング、低タンパク質飼料、焼酎粕、窒素量
- 担当:鹿児島農総セ畜試・企画環境飼料部・企画環境研究室
- 代表連絡先: Tel:0995-48-2122
- 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
養豚農家の尿汚水は、活性汚泥法により浄化処理後放流されることが一般的であるが、近年、水質汚濁防止法による窒素排出規制が強化されてきている。
窒素排出規制強化に対応するために、生産性を損なうことなく窒素排せつ量を少なくする技術として、アミノ酸調整低タンパク質飼料(低CP飼料)に繊維質飼料を添加する技術が開発されてきている。
また、未利用資原の活用等を背景に、焼酎粕混合をベースとしたリキッドフィーディング(液状給餌)に取り組む養豚農家が増えつつある。
焼酎粕によるリキッドフィーディングは、酒造会社等から焼酎粕処理料を受け入れることで、経営的なメリットもある。
そこで、低CP飼料と焼酎粕のリキッドフィーディングが肥育豚の尿汚水量及び窒素排せつ量に及ぼす影響を調査する。
成果の内容・特徴
- CP15%粕区では、CP15%水区に比べ、尿汚水量が151.6%に、ふん尿中合計窒素排せつ量が134.8%となる。
- CP13%粕区では、CP15%水区に比べ、尿汚水量が122.6%に、ふん尿中合計窒素排せつ量が90.9%となる。
- CP13%粕区では、CP15%粕区に比べ、尿汚水量が80.9%に、ふん尿中合計窒素排せつ量が67.4%となる。
- 肥育豚5万頭規模で試算した尿汚水処理のランニングコストは、CP15%水区、CP15%粕区、CP13%粕区で1頭あたり、82円、154円、106円となる。
成果の活用面・留意点
- リキッドフィーディングにおける給与飼料設計の参考となる。
- 焼酎粕をベースとしたリキッドフィーディングは、水によるリキッドフィーディングに比べて、ふん尿分離率が低下し、BOD量等が増加し、尿汚水処理コストが増大するため、低CP飼料の利用を図るとともに、スクレイパーの稼働回数の増加対策等が必要となる。
具体的データ
注 )
- 試験区分
- (1)CP15%水区:通常粗タンパク質飼料+水(対照区)
・混合割合 CP15%配合飼料 : 水 = 1 : 3.5 - (2)CP15%粕区:通常粗タンパク質飼料+カンショ焼酎粕+水
・混合割合 CP15%配合飼料 : 焼酎粕 : 水 = 1 : 2.2 : 2.1 - (3)CP13%粕区:アミノ酸調整低タンパク質飼料+カンショ焼酎粕+水
・混合割合 CP13%配合飼料 : 焼酎粕: 水 = 1 : 2.2 : 2.1
- (1)CP15%水区:通常粗タンパク質飼料+水(対照区)
- 供試豚及び飼養方法等
- (1)肥育前期のWLD(体重35kg~)、各区約600頭(去勢、雌混合の群飼)
- (2)リキッドフィーディングおよび自由飲水
- (3)畜舎:セミウインドレス、全面すのこ、Oパイプスクレイパーでのふん尿分離方式
- (4)飼料への馴致期間:5日、分析対象期間:11日(H20.11.4~12.5)
その他
- 研究課題名: カンショ焼酎粕を混合したアミノ酸調整低タンパク質飼料によるリキッドフィーディングを用いた肥育豚の尿汚水量および窒素排せつ量への影響
- 予算区分:受託
- 研究期間:2008年度
- 研究担当者:高木良弘、千歳健一、幸野拓矢、桑水郁郎