九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

耕作放棄地で周年放牧した交雑種去勢牛の発育性および肉質性状

要約

交雑種去勢牛を耕作放棄地で周年放牧することにより、出荷時(26月齢)体重は487kg、格付け等級はC-1程度であるが、その肉質はイノシン酸、遊離アミノ酸含量、共役リノール酸割合に優れる。

  • キーワード:交雑種去勢牛、耕作放棄地、周年放牧、発育性、肉質
  • 担当:福岡農総試・家畜部・肉用牛チーム
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5232
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
  • 分類:研究・参考

 

背景・ねらい

「食料・農業・農村基本計画」では、農業の持続的な発展に関する施策として、飼料自給率の向上および耕作放棄地の有効利用の増進が掲げられている。耕作放棄地の草資源は、家畜の粗飼料として有効に活用することが可能であり、肥育牛への飼料資源としても注目されている。また、牛肉消費に関しては、健康的で安全安心な牛肉に対する関心・ニーズが非常に高い状況であり、放牧による牛肉への旨味性、機能性等の高付加価値化が期待されている。
しかし、耕作放棄地を活用した周年放牧は、冬期の可食草の低下による肥育牛としての肉量および脂肪交雑の低下が懸念されるものの、その詳細は明確でない。そこで、耕作放棄地における交雑種去勢牛の周年放牧が、発育性および肉質性状に及ぼす影響を調査することで、耕作放棄地を活用した肉用牛生産技術確立の一助とする。

成果の内容・特徴

  • 交雑種去勢牛(360日齢)を耕作放棄地において周年放牧(H19/9~H20/11)した場合、冬季(H19/10~H20/4)草量不足により、放牧期間中の日増体量は0.29kg/日、出荷時(26月齢)体重は487kg程度である(図1)。
  • 耕作放棄地で周年放牧した交雑種去勢牛の枝肉重量は231kg、枝肉歩留53%、胸最長筋面積30.0cm2、格付け等級はC-1、セリ枝肉単価は367円/kg程度である(表1)。
  • その肉質性状は脂肪含量が少なく、蛋白質含量が多い。また、脂肪中の共役リノール酸(CLA)割合、旨味成分であるイノシン酸、総遊離アミノ酸およびビタミンEの含有量は通常と比べ、倍増する(表2)。
  • 耕作放棄地を活用した周年放牧による交雑種去勢肥育牛の生産費(素畜費を除く)は84千円/頭であり、通常と比べ248千円/頭低減する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 耕作放棄地を活用した周年放牧を実施する場合の参考資料として活用できる。
  • 冬季に十分な草量が確保出来ないことがあるため、耕作放棄地における野草量および栄養価を把握したうえで、一時的な牛舎内での肥育、補助飼料の増給、積極的な草地化等について検討する必要がある。
  • 耕作放棄地で放牧により生産された牛肉の特徴を活かした消費・流通体制を整える必要がある。

具体的データ

図1

表1

表2

図2

 

 

その他

  • 研究課題名:代謝生理的刷り込みを活用した交雑種粗飼料多給型肥育技術の確立
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:稲田淳、浅岡壮平、磯崎良寛