九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

暑熱期におけるホルスタイン種搾乳牛の膣内温度変化

要約

ホルスタイン種搾乳牛の暑熱期における膣内温度は、牛舎内温度が21°Cで上昇を始め、23°C以上になると卵成熟と胚発生に影響を及ぼす40°C以上に達する場合がある。

  • キーワード:暑熱、繁殖率、搾乳牛、膣内温度
  • 担当:宮崎県畜産試験場・家畜バイテク部
  • 代表連絡先: Tel:0984-42-3044
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
  • 分類:研究・参考

 

背景・ねらい

西南暖地において、夏季の繁殖率低下が大きな問題となっている。特にウシ初期発生胚の暑熱に対する感受性は高く、暑熱時の高い深部体温が受胎率低下の要因として考えられ、40度の暑熱負荷で卵成熟および胚発生が低下するとの報告がある。しかし、暑熱期のホルスタイン種搾乳牛の深部体温については知見が少ない。また、体温計による直腸温測定では連続的なデータの取得が困難である一方、膣内温度は直腸温と高い相関があることが知られている。
そこで、今後の暑熱対策の基礎データを得ることを目的として、データ蓄積型温度計の膣内留置によって、ホルスタイン種搾乳牛の暑熱期における膣内温度の推移について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン種搾乳牛の膣内にデータ蓄積型温度計を装着することで、膣内温度の推移を連続的に測定できる。
  • 8月19日~10月2日までのホルスタイン種搾乳牛6頭の平均膣内温度は39.1±0.35°Cで最高膣内温度は41.4°Cにまで達し、牛舎内温度が高く推移した日は、最高と最低の膣内温度の差が大きい(図1)。
  • 膣内温度は、牛舎内温度が21°Cで上昇を始め、23°C以上になると卵成熟と胚発生に影響を及ぼす40°C以上に達する場合がある(図2)。
  • 牛舎内温度の日内変動は午前7時から上昇を始め13時にピークに達したあと低下し、膣内温度の日内変動は牛舎内温度を追従して変動しながら、40°C以上で連続9時間推移する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 西南暖地における夏季の繁殖率改善のための、新たな暑熱対策の基礎データとして活用できる。
  • 体外培養系において、ホルスタイン種搾乳牛の深部体温を再現する際の設定温度として活用できる。
  • 本試験で使用した温度計は通信機能がないので、リアルタイムのデータ取得はできない。
  • 屋根に断熱材を施したフリーストール牛舎において、常時大型ファンを稼働した状態で得られたデータである。

具体的データ

図1

図2

図3

  

その他

  • 研究課題名:性判別受精卵を活用した優秀乳用後継牛作出事業
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:鍋西久、大田洋、西元俊文