要約
茶園の樹冠面温度に応じて散水周期を制御する節水型防霜法は、出水と止水を等間隔で繰り返す均等周期の間断散水法より低温時での葉温低下が少なく凍霜害の危険性が低い。また、散水量は、連続散水法や均等周期の間断法に比べて少なく、節水効果が高い。
- キーワード:チャ、防霜、散水氷結法、樹冠面温度、節水、間断散水
- 担当:鹿児島農総セ・茶業部・栽培研究室
- 代表連絡先: Tel:0993-83-2811
- 区分:九州沖縄農業・茶業
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
茶園で実施されている防霜法のなかで、散水氷結法は低温時において最も効果の高い技術であるが、それには多量の水が必要であり、節水に対する要望は高い。
最近、乾電池で作動する自動散水制御装置が急速に普及しており、出水と止水を均等の周期で繰り返す間断散水機能を備えた機種も開発されている。節水だけを目的とすれば間断散水という技術もあるが、均等周期の間断散水では低温時に霜害発生の危険性が考えられるので、樹冠面温度に応じて散水周期を変えられる温度対応間断散水法について、防霜効果、節水効果を検証する。
成果の内容・特徴
- 連続散水法や制御装置のセンサー設定温度が-1.1°C以下で連続散水となる温度対応間断散水法では、散水開始後に樹冠面の成葉裏面の葉温が-2.0°C程度まで低下することがあっても新芽に凍霜害は発生しない(表1、図1、図2)。
- 厳しい低温時において、均等周期間断散水法は散水開始直後に、凍霜害が発生した葉温より低下することがあり、凍霜害発生の危険性がある(図2)。
- 温度対応間断散水法は、連続散水の場合に比較し60%程度の節水効果が得られる。また、均等周期間断法に比べても25%程度の節水効果がある(表2)。
成果の活用面・留意点
- 自動散水制御装置のセンサー感温部は樹冠面温度の最も低い箇所(冷気の停滞する窪地等)に置く。茶園の外縁部から3m以上内部にある茶株の樹冠面上で、新芽の生育後期には、センサー感温部が新葉で覆われないように木製板の小片の上に置くとよい。
- 連続時の平均散水強度は3mm/時間を確保し、金属製の散水用ヘッドを使用する。
- 2005年は共立金属工業株式会社の試作機で散水の開始と終了の温度を0°Cとし、2006年、2007年は下記の日本計器製の制御装置で散水の開始温度を2.0°C、終了温度を4.0°Cと設定して試験した結果である。
- 当温度対応間断の散水周期設定は、(株)日本計器鹿児島製作所製の降霜感知自動散水装置:NKTYA-2401(S)型(単1アルカリ乾電池4個で作動:定価約20万円)に全自動機能として組込まれている。散水制御にはこの他に電磁弁(定価約8万円/30a)が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:節水を目的とした防霜用散水システムの構築
- 予算区分:県単
- 研究期間:2004~2007年度
- 研究担当者:田中敏弘、折田高晃、上園浩、林泉美、入来浩幸、管野正道(共立金属工業株式会社九州支店)、加藤正明(株式会社日本計器鹿児島製作所)
- 発表論文等:田中ら(2008)茶業研究報告106:1-14