九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

チャ輪斑病におけるストロビルリン系薬剤耐性菌の発生と防除対策

要約

ストロビルリン系薬剤の防除効果が低下した茶園で本剤に対し耐性を示すチャ輪斑病菌が存在する。カスガマイシン・銅水和剤は本耐性菌に対して防除効果がある。

  • キーワード:チャ、輪斑病、ストロビルリン系薬剤(QoI剤)、耐性菌
  • 担当:鹿児島農総セ・茶業部・環境研究室
  • 代表連絡先: Tel:0993-83-2811
  • 区分:九州沖縄農業・茶業
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

アゾキシストロビン水和剤はチャ輪斑病に対し治療効果を有し、摘採3日後まで高い防除効果が認められることから、輪斑病の基幹防除剤として広く用いられている。ところが、2008年にアゾキシストロビン水和剤を散布したにもかかわらず防除効果の低いほ場がみられた。そこで、同ほ場から分離された輪斑病菌の本剤に対する耐性と耐性菌の発生実態調査を行い、合わせて登録農薬のなかから本耐性菌に有効な薬剤を探索する。

成果の内容・特徴

  • 2008年9月にアゾキシストロビン水和剤の防除効果が低下した現地茶園から採集した輪斑病菌は、アゾキシストロビン含有培地上で生育し明らかに耐性を示す(図1)。アゾキシストロビン水和剤の常用濃度では分離菌の病斑形成を抑制できない(図1)。よって、本分離菌は本剤に対する耐性菌である。チャ輪斑病における本剤耐性菌発生の確認は全国で初めてである。
  • アゾキシストロビン水和剤に耐性を示す輪斑病菌は、同系統のストロビルリン系薬剤に対しても耐性を示す(図3)。
  • 鹿児島県内の139ほ場を調査したところ約3割の49ほ場から耐性菌が検出され、特に南薩地域における発生が多い(図2)。耐性菌が検出されたほ場では、耐性菌検出率が高いほ場と低いほ場が多く、その中間の耐性菌率のほ場は少ない(図2)。
  • カスガマイシン・銅水和剤は耐性菌による病斑形成を抑制し、耐性菌発生ほ場における防除薬剤として有望である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 耐性菌の発生は、チャ輪斑病に感受性であるやぶきたのほ場で多い。
  • ストロビルリン系薬剤の連用を避け、作用性の異なる薬剤とのローテーション散布を行う。
  • 病原菌は摘採機などの機械に付着してほ場に持ち込まれるため、菌が感染しやすい降雨時や茶葉が濡れている時の摘採や整枝は避ける。また、輪斑病の発生園で用いた摘採機は十分水洗いする。

具体的データ

 図1

図2

図3

図4

その他

  • 研究課題名:輪斑病におけるQoI剤耐性菌の発生
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:富濱毅、尾松直志、野中壽之(鹿児島県経済連)
  • 発表論文等:富濱毅ら(2009)九州病害虫研究会報55巻:83-88.