九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

釜炒り茶および煎茶として品質が優れる緑茶用新品種候補「宮崎27号」

要約

「宮崎27号」は、煎茶でも優れるが、釜炒り茶にすると、これまでの釜炒り茶用品種にない甘い香りとすっきりとした喉ごしの感じられる緑茶用新品種候補である。輪斑病に耐病性があり、耐寒性も強く、摘採期が「やぶきた」より1日遅い中生種である。

  • キーワード:チャ、宮崎27号、釜炒り茶、品種、輪斑病抵抗性、耐寒性、中生
  • 担当:宮崎総農試・茶業支場・育種科
  • 代表連絡先: Tel:0983-27-0355
  • 区分:野菜茶業・茶業、九州沖縄農業・茶業
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

釜炒り茶は、約500年前に中国からの帰化人により伝えられたとされ、現在でも九州を中心に中山間地域の重要な換金農産物として生産されている。釜炒り茶用品種としては、今までに「たかちほ」、「やまなみ」、「うんかい」、「みねかおり」等が育成されているが、「やぶきた」以上の品質を持つ釜炒り茶用品種は育成されていない。
一方で、近年は煎茶とは異なる釜炒り茶特有の香ばしい香り(釜香)とさっぱりとした喉ごしが評価され、大消費地においても釜炒り茶の評価が高まり、より釜炒り茶の特徴を出すことが求められている。このため、釜炒り茶用として香気、滋味ともに優れる高品質な品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「宮崎27号」は、晩生で耐寒性の強い「埼玉16号」を種子親、良質で炭疽病に抵抗性を有する福岡県の在来種の「福8」を花粉親として1988年に交配された実生群の中から選抜された品種である(図1)。
  • 釜炒り茶および煎茶としての製茶品質は「やぶきた」より優れており、釜炒り茶にすると、これまでの釜炒り茶用品種にない甘い香りとすっきりとした喉ごしが感じられる。煎茶としても色沢が良く、香気、滋味ともに優れている(表1、表3)。
  • 耐病性は、炭疽病にはやや弱、輪斑病にはやや強である(表2)。
  • 耐寒性は、赤枯れには「やぶきた」並であるが、裂傷型凍害には中~やや強である(表2)。
  • 一番茶の萌芽期は「やぶきた」より3日、摘採期は1日遅い中生種である(表2、表3)。
  • 生葉収量は、一・二番茶ともに「やぶきた」より多い(表2、表3)。

成果の活用面・留意点

  • 「宮崎27号」は九州各県の中山間地域にある釜炒り茶生産地帯はもとより、全国の茶栽培地帯で栽培が可能である。
  • 輪斑病の薬剤防除は不要である。炭疽病は、気象や栽培条件によっては発生することがあるので防除が必要である。

具体的データ

  表1

表2

表3

図1

その他

  • 研究課題名:茶樹新品種育成試験
  • 予算区分:指定試験
  • 研究期間:1988~2009年度
  • 研究担当者: 吉留浩、佐藤健一郎、長友博文、水田隆史、佐藤邦彦、古野鶴吉、上野貞一、安部二生