要約
テッポウユリ新品種「クリスタルホルン」は雄ずいが退化し、花粉が付きにくい特性を持つ。花は斜め上向き、花色は純白に近く芯部は緑色のグラデーションとなる。開花は「ひのもと」より早生で、二度切り栽培では萌芽、伸長性ともに良好である。
- キーワード: テッポウユリ、雄性不稔、無花粉
- 担当: 鹿児島農総セ・花き部
- 代表連絡先: Tel:0993-35-0210
- 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
鹿児島県はテッポウユリの球根および切り花で、全国一の生産規模を誇っている。しかし、流通している品種は「ひのもと」のみで、用途が限られているのが現状である。そこで、花容・草姿に優れ、テッポウユリの用途拡大に貢献できる新品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 育成の経過
1999年度に鹿児島農総セ花き部育成系統を両親として交配を実施、得られた実生集団から個体選抜および系統選抜を繰り返し、2004年度に有望系統「鹿交系15号」を得た。2007年から系統適応性検定試験を実施した結果、花容草姿等が有望と判断され、「クリスタルホルン」と命名して品種登録出願を行った。 - 「クリスタルホルン」の特性は以下のとおりである。
1)雄ずいおよび葯が退化し、花粉が付きにくい(図1)。
2)花は斜め上向きで、花弁の白と芯部の緑色のグラデーションが特徴である(図1)。
3)花色は「ひのもと」より純白に近い。
4)開花は「ひのもと」より早い(表1)。
5)二度切り栽培における萌芽は「ひのもと」より良好で、伸長性が優れる(表3、一部データ略)。
6)定植する球根は「ひのもと」よりやや大きなサイズが必要である。12月出しでM以上、1月出しでS(データ略)、2月出しで2S程度の球根を利用することで、概ね輪数(3輪)と草丈(100cm)を確保できる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 産地の気象条件によって、栽培に適する球根サイズが異なるので、各作型での最適な球根サイズを十分把握することが望ましい。
- 「クリスタルホルン」は、気温等の環境条件によって花粉が付くことがある。また5°C以下の低温に遭遇すると、奇形花率が増加するため、温度管理には十分注意する。
- 栽培管理は「ひのもと」に準じる。
- 「クリスタルホルン」の栽培には許諾が必要である。鹿児島県外は球根取引業者から購入可能である。
具体的データ
(鹿児島県農業開発総合センター)
その他
- 研究課題名: 高温期の生産安定及び新たなる需要創出に対応した花き類の新品種育成
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 1999~2007年度
- 研究担当者:白山 竜次、永吉 実孝、西 真司、末吉 忠寿
- 発表論文等: 2008年品種登録出願(第22652号)