九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

ヒートポンプによる冷房運転とハウス内温湿度

要約

ヒートポンプは、冷房運転すると外気温より約9°C低い冷気を吹き出すことが可能である。また、能力にあった規模のハウスにおいて6月中旬~7月中旬に設定温度21°Cで運転すると、気温を設定温度に低下させ、湿度を約10%低下させることが可能である。

  • キーワード:ヒートポンプ、冷房運転、温度、湿度
  • 担当:佐賀農業セ・野菜花き部・野菜研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0952-45-2141
  • 区分:九州沖縄農業・野菜・花き
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

原油高騰が続く中で、価格が高騰したA重油よりも相対的に割安となった電力利用のヒートポンプが期待される。しかし、ヒートポンプはイニシャルコストが高いため導入が進んでいない。そこで、ヒートポンプの有効利用のために、夏期のハウス内冷房運転について、その能力とランニングコストについて検討する。

成果の内容・特徴

  • ハウスは室内容積550m3(床面積160m2)の単棟アーチパイプハウスで、ヒートポンプは定格冷房能力11.2kW(5馬力・消費電力4.35kW)を用いた。温度設定はハイブリッド制御盤(N社製)で21°C設定とし、ヒートポンプの動作幅(DIF)を2.0(運転開始22°C、運転停止20°C)、とした。
  • ヒートポンプの冷房運転は、2009年6月13日~7月12日の期間、夜間21:00~早朝6:00まで、サイドビニールを閉鎖させハウスを密閉状態として行った。密閉することにより、ハウス内温度は外気より2°C高くなる。
  • ヒートポンプの吹き出し口の温度は、外気温21~22°Cの範囲において、外気温より約9°C低い冷風吹き出しが可能であり、設定温度21°Cになるまでの所要時間は15分を要した。また、位置別、高さ別温度差はほとんどない(図1)。
  • ハウス内湿度は、ヒートポンプを冷房運転することで、10%程度低下させることが可能である。(図2)。
  • 冷房運転のランニングコストは、6月中旬~7月中旬に設定温度21°Cで160m2のハウスでの電気料金は9300円であった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • ハウスの被覆資材等は、外張りをPO系フィルム(厚さ0.1mm)を用いた。
  • 供試ハウスは、間口8m、長さ20m、軒高2.5m、棟高4.4mを用い、ヒートポンプはダクト無しで運転を行った。
  • ヒートポンプは、N社製施設園芸ハウス用エアコン(高静圧ダクト型インバータ)冷媒R410A型式MGE52Hを用いた。運転は、67.2kW(30馬力相当)/10a相当で行った結果である。67.2kW(30馬力相当)のイニシャルコストは、375万円(メーカー希望小売価格、別途消費税および取り付け工事費用が必要)。
  • ハウスに、促成ナスを前年9月29日に定植し、畦には0.03mmのグリーンマルチを張り、通路に敷きワラを行った状態での結果である。

具体的データ

  図1

図2

表1

その他

  • 研究課題名:農業における省エネ・ポスト石油技術開発促進事業
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:石橋泰之、小川浩樹、中山裕介、久納智子