九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

イチゴの本圃短日処理とクラウン部冷却による10月からの収穫技術

要約

中山間地域でのイチゴ「さがほのか」の高設栽培において、7月に定植した未分化株は、日長12時間の短日処理と、平均18°C程度の冷水を用いたクラウン部冷却を行うと、出蕾が早く、10月から収穫開始できる。

  • キーワード:イチゴ、さがほのか、短日、クラウン部冷却、年内収穫、連続出蕾
  • 担当:佐賀農業セ・三瀬分場・山間畑作研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0952-56-2040
  • 区分:九州沖縄農業・野菜・花き
  • 分類:技術・参考 

背景・ねらい

花芽分化しやすい特性を持つ「さがほのか」を用い、中山間地における夏季冷涼な気象条件を活かし、年内収量を確保する夏秋どりイチゴの栽培体系を開発する。これまでに、育苗床での短日処理で花芽分化した株を、8月に定植しクラウン部冷却すると、9月上旬に定植する慣行栽培より1ヶ月程度出蕾と収穫開始が早くなることを明らかにした。
そこで、これまでの従来法より更に早期収穫をめざし、7月に定植した未分化株について、短日処理とクラウン部冷却による収穫の早進効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 7月に定植した未分化株に、本圃で短日処理とクラウン部冷却を同時に行うと、8月に分化株を定植する従来法に比べて、出蕾は早い(表1)。
  • 短日処理とクラウン部冷却を同時に行うと、第1次腋果房の葉数も従来法に比べて少なく、果房が連続する(表2)。
  • 短日処理とクラウン部冷却を同時に行うと、収穫は10月から始まり、従来法に比べて年内収量が多く、2L以上の階級での個数割合が高くなる(表3)。
  • 短日処理時間は日長12時間が、8時間と比べ、出蕾時期は同じで、腋果房の葉数は少なく、年内収量は多くなる(表1、表2、表3)。

成果の活用面・留意点

  • 中山間地域(標高400m以上)における10月収穫開始の作型に活用できる。
  • 苗は5月上旬から6月中旬に採苗し、屋外現地で育苗し、未分化の株を7月8日、分化株を8月21日に、間口6mの雨よけハウス(天井部遮光率50%遮光ネット被覆)内の長さ15m、2条植の高設栽培槽に定植した。
  • 短日処理は、遮光シート(遮光率100%、銀色)で栽培槽(7月定植)または苗床(8月定植)を17時から9時まで16時間、または、17時から5時まで12時間覆った。
  • クラウン部冷却は、19mm鉄管に18°C程度の冷水を毎時130リットル通水し、7月8日から9月26日までの鉄管の表面温度を平均17~21°C程度に制御した。
  • 7月から9月の群落内の気温(培土表面から高さ20cm)は最高39.7°C、最低16.0°C、平均25.4°Cであった。
  • 花芽分化に影響しないように施肥は、基肥に緩効性の100日タイプを成分量で10a当りN=10kg、P2O5=12kg、K2O=10kg施用し、追肥は適宜液肥で施用した。

具体的データ

 表1

表2

表3

その他

  • 研究課題名:魅力あるイチゴづくりを目指した「さがほのか」の効率的な計画生産・出荷技術の確立
  • 予算区分:県単
  • 研究期間: 2006~2009年度
  • 研究担当者:國枝栄二、中島正明