九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

バラの冬期低夜温管理における培地加温と補光の効果

要約

バラの養液栽培で養液循環式とし冬期低夜温にすると、養液を加温しても切り花数は大きく減少するが、高圧ナトリウムランプで補光すると切り花数の減少を緩和できる。

  • キーワード: バラ、補光、高圧ナトリウムランプ(NH)
  • 担当:大分農林水産研・花き研
  • 代表連絡先: Tel:0977-66-4706
  • 区分:九州沖縄農業・野菜・花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

暖房経費節減のため冬期に低夜温管理すると、生育速度が遅くなり生産性が低下する。そこで、加温した循環養液による培地の加温と高圧ナトリウムランプ(NH)の補光が切り花の生産性や品質に及ぼす影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 杉バークを培地としたバラのアーチング法による養液栽培において、標準的な温室内最低夜温18°Cのかけ流し式養液管理の条件から、温室内最低夜温を10°C(厳寒期の平均夜温12°C程度)に下げると、30°Cに加温した養液を循還させて培地を加温しても、12~4月の切り花数は33%程度減少する(表1、図1、図2、図3)。
  • 上記の栽培条件で夜間も含め5,000ルクス以下の照度時にNHで補光すると、切り花数は補光しない場合より32%増加し、慣行区の11%減まで近づく。さらに、有意差はないが切り花重や茎径が増加するなど、品質が向上する傾向が見られる(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • NH近くまで伸張した茎は光源に向かって曲がり、さらに20cm程度まで接近した蕾や花弁は放射熱で傷むことから、余裕を持った高さに設置する必要がある。

具体的データ

  • 培地に杉バーク、栽培容器にヤザキのGFT-17、給水チューブにはエバフローAタイプを用いた。供試品種は「ダンシングクイーン」で2008年6月13日に挿し木し、7月28日に容器中央部から約3cm外側に寄せ、1容器当たり16株を定植し1区とした。整枝はアーチング法でアーチング枝は水平から約60度に折り曲げた。循環式管理と培地の加温、補光は11月22日から開始した。
  • 養液の循環はかけ流した排液を100リットルタンクに回収し、電熱ヒーターで約30°Cに加温し、18:00~8:00に1時間おきに8分間タイマーで給液した。慣行区は最低夜温を18°Cとし、養液は1回の給液時間を6分間で日中に5回給液した。
  • NHは岩崎電気製(NHR360DL)を用い、試験区の地表から約2mの高さに設置した。補光時の株元付近の照度は光源直下から半径1mで4,500~2,000ルクス程度、光量子密度は光源直下から半径1mで70~30μmol/m2/s程度、葉の表面温度は、室温10°C で補光なし区は室温とほぼ同じに対し、NH補光区は光源直下で距離が50~70cmで11.5~12.5°C、15cmでは25.1°Cとなった(データ省略)。

表1

図1

図2

図3

その他

  • 研究課題名:バラの省エネルギー環境保全型養液栽培技術の確立
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:諸富保司