ここでは、今まで農研機構が実施してきた研究内容を紹介します。
茶品種「べにふうき」の持っている茶葉特性、成分特性、飲用法についてご紹介させて頂きます。それぞれに関連する論文を記載しておりますので、そちらもご参照ください。
べにふうき研究成果の説明 (ここが大事 !)
※「べにふうき緑茶」 に関する研究成果およびデータは、原則として商用目的には引用、転載 (改変含む) の許可はしておりません。
「べにふうき」 とは?
1993年に命名登録 (農林登録) 、1995年に品種登録 (種苗登録) された、日本で初めての紅茶・半発酵茶兼用品種です。
1965年に、多田元吉 (ただもときち) が1887年頃にインドから導入した種子から選抜された品種 「べにほまれ」 を母親に、1954年に第二次マナスル登山隊に参加し、後に隊長を務めて初登頂に成功した槇有恒 (まきゆうこう) 氏が、農林省を通して鹿児島県に寄贈した種子から育成された 「枕Cd86」 を父親に交配された組合せから選抜されました。
樹勢が強く、病害抵抗性も強い開張型の品種です。
メチル化カテキン(epigallocatechin-3-O-(3-O-methyl) gallate;EGCG3"Me)と 「べにふうき」
「べにふうき」 に含有されているメチル化カテキンがアレルギー反応で主要な役割を果たすマスト細胞の活性化を阻害し、ヒスタミン放出を抑制することが明らかにされたのは、1999年のことです。
紅茶にすると酸化酵素の働きでメチル化カテキンが消失してしまうことやメチル化カテキンは、成熟葉に多く含有しており、茎には含有されていないことがわかりました。
そのため、メチル化カテキンを効率的に利用するためには、紅茶ではなく、緑茶や包種茶に製造する必要があります。
また、高温や長い時間の火入れによってメチル化カテキンは減少しますので、火入れの際には注意が必要です。
関連論文:
1)Maeda-Yamamoto M. et al. Effects of tea infusions of various varieties or different manufacturing types on inhibition of mouse mast cell activation. Biosci. Biotech. Biochem. ,62(11), 2277-2279, 1998.
2) Sano M. et al. Novel antiallergic catechin derivatives isolated from oolong tea, J. Agric. Food Chem., 47(5), 1906-1910, 1999.
3) Tachibana H. et al. Idenfication of a methylated tea catechin as an inhibitor of degranulation in human basophilic KU812 cells, Biosci. Biotech. Biochem., 64(2), 452-454, 2000.
4) Suzuki M. et al. Inhibitory Effects of Tea Catechins and O-methylated Derivatives of (-)-Epigallocatechin-3-O-gallate on Mouse Type-IV Allergy, J Agric Food Chem. 48(11), 5649-5653, 2000.
5) Sano M. et al. Simultaneous determination of twelve tea catechins by high-performance liquid chromatography with electrochemical detection, Analyst, 126,816-820, 2001
6) Fujimura Y. et al. Antiallergic Tea Catechin: (-)-Epigallocatechin-3-O-(3-O-methyl)-gallate, Suppresses FcepsilonRI Expression in Human Basophilic KU812 Cells. J Agric Food Chem, 50(20), 5729-5734, 2002.
7) Suzuki, M. et al. Epimerization of Tea Catechins and O-methylated derivatives of (-)-epigallocatechin-3-O-gallate: relationship between epimerization and chemical structure and epimerization of tea epicatechin during the extraction with hot water, J. Agric. Food Chem. 51(2), 510-4, 2003.
8)Maeda-Yamamoto M. et al. O-methylated catechins from tea leaves inhibit multiple protein kinases in mast cells, J. Immunology, 172(7):4486-4492, 2004.
9)Fujimura Y. et al. The 67kDa laminin receptor as a primary determinant of anti-allergic effects of O-methylated EGCG. Biochem Biophys Res Commun. 364(1), 79-85. 2008.
メチル化カテキンについて
茶葉中に含有されるポリフェノールの1種で、茶葉に最も多く含まれるカテキンであるエピガロカテキンガレートの一部がメチル化されたものです。「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」という茶の品種に多く含まれます。
高温で溶け出しやすく、水に溶けて作用します。水の中に溶けた状態で加熱されると異性化体のGCG3"Meが増加します (細胞実験では、ヒスタミン放出抑制の強さは、GCG3"Me > EGCG3"Me でした)。メチル化カテキンを効率的に利用したい場合は、熱湯で「べにふうき」緑茶をよく抽出してから、その抽出液を利用してください。
ヒト介入試験で、「やぶきた」 に比べて通年性鼻炎症状を持つ健常者、境界域の方での目や鼻の不快感の有意な緩和が認められた1日34mgのメチル化カテキン (EGCG3"Me + GCG3"Me) (日本臨床栄養学会誌 (2005) 27 (1) , 33-51) を摂取するためには、(例えば)メチル化カテキン含量が1.5%のお茶の葉であれば、3.8gの茶葉を約400ml以上の水で 「煮沸しながら5分以上」 煎じる必要があります(1日分)。
ヒト介入試験では、軽減効果は1日あたり34mg、68mgで認められ、17mgでは対照の「やぶきた」と同等でした。
関連論文:
1)山本(前田)万里他、茶の品種,摘採期と製造法によるエピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート含量の変動、日本食品科学工学会誌, 48(1), 64-68,2001
2) Maeda-Yamamoto M. et al. Changes in Epigallocatehin-3-O-(3-O-methyl) gallate and Strictinin Contents of tea (Cemellia sinensis L.) Cultivar 'Benifuki' in Various Degree of Maturity and Leaf Order, Food Science and Technology Research, 10(2), 186-190, 2004.
3)Nagai H. et al. The development of suitable manufacturing process for 'Benifuuki' green tea beverage, with anti-allergic effects, J. Science of Food and Agriculture ,85,1601-1612, 2005.
4)Maeda-Yamamoto M. et al. Epicatechin-3-O-(3-O-methyl) gallate content in various tea cultivars (Camellia sinensis L.) and its in vitro inhibitory effect on histamine release, J. Agric Food Chem, 60(9), 2165-2170, 2012.
5) 山本(前田)万里他、メチル化カテキン含有緑茶「べにふじ」の連続摂取によるスギ花粉症者への有用性と安全性について、健康・栄養食品研究、7(2),55-70,2004.
6) 安江正明他、通年性アレルギー性鼻炎患者を対象とした「べにふうき」緑茶の抗アレルギー作用並びに安全性評価、日本臨床栄養学会誌, 27(1),33-51,2005.
7) 安江正明他、「べにふうき」緑茶の抗アレルギー作用並びに安全性評価:軽症から中等症の通年性アレルギー性鼻炎患者、並びに健常者を対象として、日本食品新素材研究会誌, 8(2),65-80, 2005.
8) Masuda S. et al. 'Benifuuki' green tea containing O-methylated catechin reduces symptoms of Japanese cedar pollinosis: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial, Allergology International, 63(2), 211-217, 2014.
粉末茶の利用の注意
浅蒸しの「べにふうき」 緑茶は、たとえば一番茶を粉末にして水を注ぎ容器に詰めて持ち歩くなどすると、一番左下の図を見てわかるように、光過敏性皮膚炎の原因物質であるフェオホルビドが80mg/100g (40°Cで6時間) 生成します。
粉末茶を水につけた状態で長時間持ち歩いたり放置してから飲まずに、熱湯で攪拌しながら抽出したらすぐに飲むようにしてください。
粉末茶の利用の場合も、 (例えば1日2回に分けて飲む場合) メチル化カテキン含量が1.5%のお茶の葉であれば、1.9gの粉末茶を200ml以上の 「熱湯」 によくかき混ぜて抽出してから飲む必要があります。
関連論文:
1) Maeda-Yamamoto M. et al. Changes in O- methylated catechin and chemical component contents of 'Benifuuki' green tea (Camellia sinensis L.) beverage under various extraction conditions, Food Science and Technology Research,11(3), 248-253, 2005.
2) 山本(前田)万里他、「べにふうき」緑茶抽出条件の違いによるメチル化カテキン含量及びフェオホルビド生成量の変動、茶業研究報告、104,43-50, 2007.
「べにふうき」 緑茶のおすすめの飲み方は
(1) ティーバッグの場合 :
「べにふうき」 緑茶4~6g (2gもしくは3gのティーバッグ2個分) を500mlのお湯で5分煮沸→茶殻を取り出し→ 冷まして半分に分け、食後 (朝食後と昼食後か朝食後と夕食後) に1回ずつ、1日に2回飲んでください。
暖かいのが好みであれば、水筒などに入れておいても1日だったらOKです。
(2) 粉末茶の場合 (1回分) :
1.5g以上の粉末茶を200mlの熱湯に入れてよくかき混ぜる (1分くらい) → 冷ましてから一気に飲んでください。
※作り置きはしないで下さい。
「べにふうき」 緑茶のおすすめの飲み方は (どんなタイミングで飲み始めるのが良い?)
花粉が飛散する季節に目や鼻に不快感を感じる方では、スギ花粉が飛散する1.5ヶ月前から飲用を開始すると、花粉飛散時に飲み始めるより効果的でした。
早めの飲用がおすすめです。
関連論文:
1) Maeda-Yamamoto M. et al. The efficacy of early treatment of seasonal allergic rhinitis with benifuuki green tea containing O-methylated catechin before pollen exposure: an open randomized study, Allergology International, 58(3), 437-444, 2009.
渋くてあまり多量に飲めない方に
ショウガエキスを入れると、 ハウスダストや花粉暴露による目や鼻の不快感の緩和が増強されることがヒト試験で確かめられています。
2~3gの 「べにふうき」 緑茶のティーバッグをよく煮出して抽出した浸出液 (上のおすすめの飲み方) にすり下ろしショウガを耳かき1杯くらい入れて飲んでみてください。
香りも良く立つので暖かい時の方が美味しいですよ。
関連論文:
1) Mari Maeda-Yamamoto. et al. In vitro and in vivo anti-allergic effects of 'benifuuki' green tea containing O-methylated catechin and ginger extract enhancement, Cytotechnology, 55, 135-142, 2007.
「べにふうき」 緑茶のハウスダストや花粉暴露による目や鼻の不快感の軽減
メチル化カテキンの多い 「べにふうき」 緑茶のもつ目や鼻の不快感の緩和(ヒト介入試験)や作用機序を明らかにし、飲食品開発を行いました。
また、 「べにふうき」 緑茶からのメチル化カテキンの最適な溶出条件も明らかにしました。