食品研究部門

第2期SIP: 「食を通じた健康システムの確立による健康寿命の延伸への貢献」 (2018~2022年度)

SIPIIでの取組み

 内閣府 第2期戦略的イノベーション創造プログラム(SIPII)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」の中の「食を通じた健康システムの確立による健康寿命の延伸への貢献」(2018~2022年度)を担当し、健康状態・軽度心身不調の指標化と「軽度不調判定システム」の開発、農林水産物・食品の健康維持・増進効果に関する科学的エビデンスの獲得、及び腸内マイクロバイオームデータの整備等を行い、これらのエビデンス・データ等を活用して農林水産物・食品の健康維持・増進効果を解析する「農林水産物・食品健康情報統合データベース」を開発して、企業が製品開発に活用できる仕組みを提供し、研究成果の社会実装を行うことを目標としている。
 食を通じて生活習慣病リスクの低減、健康寿命の延伸等を可能とする、食の健康増進効果評価システム・データベース等を開発・構築バイオエコノミー(食関連含む)の拡大と技術基盤の強化、機能性食品市場拡大を含む農林水産業・食品産業の生産性向上・競争力強化により2400億円以上の市場創出が期待される。

【概要】

 我が国では、超高齢化や生活習慣の変化等により生活習慣病・認知症・がん等が増加しており、生活習慣病等の疾病リスクの低減と健康寿命の延伸、さらには、増大する国民医療費の抑制が社会的課題となっている。
これらの社会的課題を解決し、農産物の需要拡大に貢献するため、健康の源である「食」を通じて、健康寿命の延伸等を図る新たな健康システムを確立する。具体的には、医薬品・サプリメントと異なり、多様でバラツキのある成分を含有し、身体への影響がマイルドな農林水産物・食品について、その健康維持・増進効果を評価するシステムを開発・構築する。また、日本人のマイクロバイオームデータを収集・整備し、腸内マイクロバイオーム環境を整える食品の機能性評価を行う。これらにより、科学的根拠に基づき、「食」を通じて国民の健康増進に寄与するヘルスケア産業群の振興・創出を図る。さらに、個人の健康状態・生活習慣等に応じた食生活・食事の提案・提供を可能とする、「食」を通じたセルフメディケーションシステムの基盤を形成する。
本課題は、軽度体調変化を判定するシステムの開発や農林水産物・食品が健康に与える影響の研究、健康に関するデータベースの構築等を一体的に行うものであり、府省連携により、工業系、農業系、医学系、生物系の研究機関・大学と民間企業とが連携して取り組む必要がある。

【経費】

2018 年度 445 百万円
2019 年度 341 百万円
2020 年度 340 百万円

【研究開発の内容】

健康状態・軽度体調変化の指標化と「軽度体調変化判定システム」の開発、農林水産物・食品の健康維持・増進効果に関する科学的エビデンスの獲得、及び腸内マイクロバイオームデータの整備等を行い、これらのエビデンス・データ等を活用して農林水産物・食品の健康維持・増進効果を解析する「農林水産物・食品健康情報統合データベース」を開発する。具体的には、以下を実施する。
1.健康状態の指標化と「軽度体調変化判定システム」の開発
健康状態や軽度体調変化を評価する指標を探索・確立するとともに、これらの指標を簡便かつ低コストで日常的に計測する「軽度体調変化判定システム」を開発する。
2.農林水産物・食品の健康維持・増進効果に関する科学的エビデンスの獲得
「軽度体調変化判定システム」等を用いたヒト介入試験により、軽度体調変化の改善作用を持つ農林水産物・食品を科学的に明らかにする。さらに、網羅的解析により農林水産物・食品含有成分を明らかにする。
3.腸内マイクロバイオームデータの整備と機能性食品のプロトタイプによる検証
産業界からのニーズが高いメタゲノム・メタボローム情報を含む日本人の標準的な腸内マイクロバイオームデータを収集・整備し、食と関連付けたサンプリング・データ解析プロトコルの開発及び機能性食品のプロトタイプを用いたデータの有用性の検証を実施する。

【参画機関】

研究責任者:山本(前田) 万里 (国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、北海道情報大学、京都大学、宮崎大学、長崎県立大学、札幌医科大学、九州大学、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、国立研究開発法人理化学研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立遺伝学研究所、長崎県農林技術開発センター、一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアム、株式会社PGV、株式会社リンクアンドコミュニケーション、一般財団法人日本食品分析センター、アサヒクオリティイアンドノベーションズ株式会社、江崎グリコ株式会社、カゴメ株式会社、キリンホールディングス株式会社、月桂冠株式会社、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社、サントリーホールディングス株式会社、株式会社島津製作所、大正製薬株式会社、株式会社ちとせ研究所、株式会社日清製粉グループ本社、三菱ケミカル株式会社、株式会社明治、株式会社ローソン

【当該年度目標】

□軽度不調評価の指標とする睡眠の質及び自律神経の変化を計測できるデバイスをさらに準備し、食と健康の関係性調査のためのヒト試験及びパイロットスタディにてデータを取得する。取得した計測データから、健康―軽度心身不調の変動様式を解析して、評価指標を定める。
□食と健康の関係性調査のためのヒト試験を継続し、400 人x 2 回(夏冬)のデータを取得し、遺伝子(GWAS、EWAS)、食生活、日常生活とバイタルサイン、血液成分との関係を解析して、健康維持・増進に寄与する食生活を明らかにする。5 品目以上の農林水産物・食品について介入試験のパイロットスタディを行って本試験のプロトコルを作成する。
□400 人の日本人の腸内マイクロバイオームデータ(ロングリードメタゲノム;50 名、ショットガンメタゲノム;400 名、糞便・血中メタボローム;90 名)の解析を行い、日本人のマイクロバイオームのプロファイルを明らかにする。

【中間目標】

□2019 年度の進捗を踏まえ、2021,2022 年度の実証試験に向けた最終調整を行う。
□軽度不調評価の指標とする睡眠の質及び自律神経の変化の計測、及び食と健康の関係性調査のためのヒト試験及びパイロットスタディにてデータを取得する。取得したデータから、健康―軽度不調変化の変動様式を解析して、評価指標を定める。
□食と健康の関係性調査のためのヒト試験を継続し、健康維持・増進に寄与する食生活を明らかにする。5品目以上の農林水産物について介入試験のパイロットスタディを行って本試験のプロトコルを作成する。
□腸内マイクロバイオームデータの解析を行うとともに、メタボロームデータを取得し、日本人のマイクロバイオームのプロファイルを明らかにする。

【最終目標】

□「軽度体調変化判定システム」を開発すると共に、モデル地域のコンビニエンスストアやスーパーマーケット等と連携して導入し、食による健康維持・増進効果を検証する。
□5種類以上の「農林水産物・食品」の軽度不調改善効果検証の介入試験を実施して、健康維持・増進効果を明らかにする。
□前年度までに整備した標準データベースを用いて、上記の新たな食品・食品成分の介入試験サンプルを解析し、食品・食品成分による腸内フローラの改善効果の科学評価系としての有効性を確認・実証する。2種類以上の食品・食品成分の腸内マイクロバイオーム改善効果検証の介入試験を実施して、最終的に5種類以上の機能性食品プロトタイプの健康維持・増進効果を明らかにする。
□社会実装に向け、食・マイクロバイオーム・健康情報統合データベースの公開、軽度不調改善作用を持つ高付加価値機能性食品の開発、パーソナライズドヘルスケア中食・外食の販売、軽度体調変化の指標をもとにした健康管理サービスの提供、新規軽度不調評価簡易デバイスの提供を想定し、実用化を図る。

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 健康寿命の延伸を図る「食」を通じた新たな健康システムの確立

図 多様なニーズへの対応のイメージ
図 多様なニーズへの対応イメージ

図  食による健康増進社会の実現
図 食による健康増進社会の実現

図 パフォーマンス低下(生産性低下)を招く心身不調の負の連鎖
図 パフォーマンス低下(生産性低下)を招く新進不調の負の連鎖

SIPII「食を通じた健康システムの確立による健康寿命の延伸への貢献」での研究概要

図 研究概要