東北農業研究センター

折りたたみ式アブ防除用トラップ

アブの吸血行動によって、牛はストレスや病気の伝染といった被害を受けています。しかしアブの防除については現在のところ、トラップによる捕殺の他に有効な手段がありません。

これまで、牧野におけるアブ防除にはボックストラップが使われてきました。ボックストラップは牛の腹側から吸血する種類に対しては有効ですが、背中側から吸血する種類はほとんど捕獲できませんでした。また、かさばるため、設置の際の持ち運びや冬季の保管に不便でした。

そこで、全ての種類に対して有効で、持ち運びや保管が楽な折りたたみ式のトラップ (写真) を開発しました。このトラップの最大の特長は、飛来したアブの多くが上に向かうような構造とした誘引体です。右下の図 (ボックストラップとの構造の比較図、横から見たところ) に示すように、誘引体の上に透明の捕虫部を取り付けることによって誘引体へ飛来したアブの多くを捕獲できます。トラップの寸法は縦横90cm、高さ80cmです。

完成写真
折りたたみ式トラップ (組み立て後、設置前の状態)
折りたたんだ写真
折りたたみ式トラップ (折りたたんだ状態)
従来型との比較図
従来型のボックストラップ (上) と新型の折りたたみ式トラップ (下) の比較

実際に牧場に設置した捕獲試験でも、背中から吸血するアカウシアブをはじめボックストラップではあまり捕獲されなかったウシアブ、ヤマトアブといった大型の種類を多く捕獲することができ、ニッポンシロフアブやアオコアブなど小・中型の種類もボックストラップと同等に捕獲できました。

トラップの作製

用意するもの

トラップの捕虫部、誘引体はシートで作製します (部品の組み立ての詳細)。ただし、材質によってその作製法が異なります。自作に適した材質と作製法を現在検討中で、近日中に公開する予定です。なおシート部分は現在、下記の会社が製作販売しています。

堀合物産   〒020-0121 岩手県盛岡市月が丘3丁目40-34   電話 019-641-1190

支柱部分は、ビニールハウス用パイプとジョイント下記のとおり用意します (トラップ1台当たり) 。

  • 直管パイプ19mm径 1800mm支柱用 (手に入れば1500mmも可) 片スエジ 4本
  • 直管パイプ19mm径 1230mmクロス用 4本 (規格品はないので長いパイプから自分で切断)
  • Tバンド 19mm用 8個
  • フックバンド 19mm用 2個

組み立て

組み立て写真1
手順1 1800mmの直管パイプにTバンドとトラップの下側と上側のガイド線を引きます。スエジ側が上になります。ガイドラインは下側の金具が下から20cm、誘引体の下側が70cm、トラップ上端が150cm、上側の金具が170cmとなります。
組み立て写真2
手順2 誘引体のパイプ差し込み部分に下側からパイプを通し、下端をテープで固定します。
組み立て写真3
手順3 その後、捕虫部に差し込みます。
組み立て写真4
手順4 Tバンドをパイプに仮止めします。このとき対角になるTバンド1組を、ガイドラインの上側、他の1組を下側になるようにします。
組み立て写真5
手順5 Tバンドにクロス用パイプを差し込みます。
組み立て写真6
手順6 捕虫部が弛まないようにクロスパイプの固定位置を調整します。
組み立て写真7
手順7 支柱が4本とも垂直に立って、トラップが歪んでいないことを確認したらクロスパイプをフックバンドで固定します。

設置

組み立てが終わったら、地面に杭を打ち固定します。下の写真のようにトラップが歪むと、小型のアブが逃げやすくなります。

歪んだトラップの写真

2018年3月14日更新 / 2015年10月8日公開