東北農業研究センター

農地の高度利用のための立毛間播種技術

1. 立毛間播種とは

図1 大豆・小麦立毛間播種栽培の概念図現在我が国の農産物に対しては、生産コストの大幅な引き下げが求められています。土地の生産性を上げれば、その分生産コストを引き下げることができますが、そのための最も単純で効果的な方法は、作付け回数を多くする(二毛作)ことです。しかし、東北地方のように冷涼な気候条件の地域では、例えば大豆と麦では作期が競合するため、二毛作は困難です。それでどうしても1年1作が多く、全体の生産性が上がっていません。しかし寒冷地でも、収穫前の作物条間に次の作物を播種し、間作をすることによって年二作が可能になります。この方式を立毛間播種と呼んでいます。例として図1に示すのは、北東北における大豆-小麦の立毛間播種栽培の概念図です。大豆収穫の約1ヶ月前に畝間へ小麦を播種し、小麦収穫の約2週間前に大豆を畝間に播種することにより、二毛作が可能となります。水田転換畑では、転作期間中に2年3作・3年5作の大豆・小麦の作付、または、小麦・大豆二毛作の作付けとなります。

2. 立毛間播種栽培の種類

立毛間播種は古くからある手法で、1950年代には関東地方でも大豆栽培の多くが麦の間作であったといわれています。しかし、機械化された作業体系が確立されていなかったために、近年では一部を除いて、あまり実施されない技術となってしまいました。

(1)散播方式[さんぱほうしき]

水稲や大豆の立毛間へ、麦やヘアリーベッチなどを、動力散粒機により散播している例があります。北海道では大豆立毛間への小麦散播方式が実施されています。

(2)条播方式[じょうはほうしき]

ハイクリアランス型の乗用管理機に特殊な播種機を装着し、立毛中の作物列を跨いで作業する方式です。東北農業研究センターと農機メーカで共同開発した播種作業機が市販されています。対象とする作物は、大豆、小麦(大麦)、ソバ、ナタネなどです。

3. 条播方式の立毛間播種機

図2 立毛間播種機(全体構成)(1)ハイクリアランス型の乗用管理機のリアヒッチに、立毛間播種を行う作業機を装着した構成で、作物列を跨いで畝間を走行し、播種作業をおこないます。利用可能な乗用管理機は、クボタ(株)GR-16(-75)および、井関農機(株)JKシリーズ(17馬力以上)、です。播種作業機は、(株)ササキコーポレーションRT301RHです。

図4 小麦立毛間大豆播種(2)3条の不耕起作溝型播種機です。作物をまたげるように最低地上高が高くなっています。
(3)前作物の巻き込み防止のため、作溝部から播種ユニットの鎮圧輪まで伸びる分草桿を備えています。

図3 立毛間播種作業機

図5 大豆立毛間小麦播種

図6 小麦収穫前の大豆苗列

図7 ソバ立毛間ナタネ播種作業

(4)条間は50~75cmに適応します。一部パーツの交換により大豆、麦、ソバ、ナタネを播種でき、1畝あたりの播種条数は1条・2条を選択できます。

4. 収穫はどうなるのか

  • 大豆の間に播種された麦の場合は、麦が伸びすぎて大豆収穫の妨げになることはほとんどありません。また、大豆収穫時にコンバインが麦を踏圧しても問題ありません。
  • 麦の間に播種された大豆の場合は、間作期間が3週間を超えると徒長して、麦収穫に悪影響を及ぼします。コンバインの刈り高さを高くしても足りなければ、大豆がコンバインによって上部を刈られてしまいます。また、排ワラによって大豆が倒され、条が乱れることがあります。さらに、大豆ではコンバインに踏圧されるとダメージがでます。踏圧時の生育ステージによっては、30%以上の減収となることもあります。
  • ソバの間に播種されたナタネでも、コンバインに踏圧されるとダメージが残り、減収につながります。
  • 従って、使用するコンバインの走行部のサイズを元に、作物条間を決めることになります。刃幅150cmクラスのコンバインでは、75cmの条間にすれば、前作物収穫時の後作物踏圧をほとんどなくすことができます。刃幅200cmクラスのコンバインでは、立毛間播種機の不等条間播種機能を利用して踏圧を防ぎます。

図8 コンバインに合わせた採植様式

5. 立毛間播種機の作業能率、価格

立毛間播種の作業速度は、前作物の状況(倒伏、蔓化など)によって大きく左右されますが、0.3~0.8m/s程度です。倒伏の少ない大規模圃場のような好条件下では、1時間あたり30a程度の作業能率になります。播種機1台の負担面積は、岩手県の気象条件下で15ha程度と計算されています。立毛間播種作業機の価格は約150万円ですが、本作業機を使用するにはハイクリアランス型の乗用管理機を必要で、その価格は200~280万円です(いずれも定価)。乗用管理機は水稲や野菜の薬剤散布・中耕などの管理にも使用でき、汎用性のある機械ですが、所有していない場合には初期投資が必要となります。

6. 現地実証試験やマニュアルなど

岩手・宮城・山形の3県で、東北農研型立毛間播種機を利用した大豆・麦輪作体系の共同研究が実施され、普及に向けた取り組みがなされました。その報告書やマニュアル類は、下記ファイルダウンロードからダウンロードいただけます。

7. 現地実証試験の申し込み

うね立て同時部分施用機による現地実証試験の希望がある場合は、以下にご連絡ください。対応の可否等については、ご相談させていただきます。

お申し込み先

産学官連携支援センター
Tel 019-643-3402
メール T-sangakurenkei@ml.affrc.go.jp
※メール本文に必要事項を記載して送信してください。
メールへの記載項目は以下のどおりです。機関名、氏名、住所、電話、Fax、適用したい作物、栽培面積

8. 開発技術者への問い合わせ

お問い合わせ先
生産基盤研究領域 齋藤秀文
メール hides@affrc.go.jp

9. 関連情報

平成13年度東北農業研究成果情報
大豆・麦立毛間播種作業機(不等条間栽培対応型)

平成16年度東北農業研究成果情報
立毛間播種機のための大豆・麦両用施肥播種ユニット