東北地域における耐倒伏性品種の根出し種子を用いた水稲無コーティング種子浅層土中播種栽培

要約

根だけを伸ばした「根出し種子」は育苗器や催芽器を使用して作成できる。根出し種子の無コーティング種子は催芽種子より浅層土中播種栽培における初期葉齢が大きく、苗立率が高い。耐倒伏性多収品種を用いることで多収となり、良食味品種の移植栽培より生産費が安く、利益が多い。

  • キーワード:水稲、浅層土中播種、湛水直播、根出し種子、無コーティング種子
  • 担当:東北農業研究センター・水田作研究領域・水田作グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水稲無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培は、浅い土中に播種することにより無コーティングでも苗立ちを確保できる技術であるが、東北地域においては環境条件により苗立率が低下する場合がある。そこで、根だけを伸ばす「根出し種子」を利用することにより苗立率の向上をねらう。耐倒伏性多収品種を使用することで一般的な良食味品種の移植栽培より生産費を抑えて利益を向上できることを実証する。

成果の内容・特徴

  • 根出し種子は育苗器や催芽器を利用して作成できる(図1)。育苗器を使う場合は、浸種した種子を脱水して玄米30kg用紙袋に入れ、30°Cの育苗器で35~45時間加温して作成するので、外気温の影響が少ない。催芽器を使う場合は、浸種した種子を30°Cの催芽器に12~24時間入れて、はと胸前まで催芽し、脱水後室内でパレットの上に置いて透明ポリマルチ等で覆い1~2日置いて作成する。室温で処理するので外気温の影響で処理時間が変動する。播種機の詰まりを防ぐため、平均根長は5mm以下とする。根長が長いほど播種機の繰り出し量が減るため、播種前に繰り出し量の調整をする必要がある。
  • 根出し種子を荒代かきした圃場に仕上げ代かきをしながら浅層土中に播種し、落水出芽後に入水して初中期除草剤を施用する(図2)。2回目の除草剤は残草程度により初中期除草剤または中後期除草剤を施用する。葉いもち防除は殺菌剤粒剤の水面散布またはルーチンシードFS等の種子処理剤を用いる。その後は移植栽培と同様の管理を行う。
  • 根出し種子は催芽種子より初期の葉齢が大きく、苗立率が高く、出穂期が早い傾向にある(表1)。根出し種子は倒伏程度、収量、整粒歩合は慣行技術の鉄コーティングや催芽種子を用いた従来の代かき同時浅層土中播種栽培と同程度である。
  • 耐倒伏性多収品種「ゆみあずさ」の無コーティング直播栽培は、慣行の「あきたこまち」の移植栽培より全算入生産費が少なく、収量が多いため粗収益が多く、その結果利益が多い(表2)。

普及のための参考情報

具体的データ

図1 根出し種子の作成方法と根出し種子,図2 栽培歴(秋田県・中生品種の場合),表1 根出し種子の苗立率、生育、収量,表2 「ゆみあずさ」の無コーティング直播栽培の生産費と利益(2020年秋田県大仙市)

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)、その他外部資金(H27補正「地域戦略プロ」、H28補正「経営体プロ」)
  • 研究期間:2015~2020年度
  • 研究担当者:白土宏之、笹原和哉、伊藤景子、今須宏美、川名義明、大平陽一、古畑昌巳
  • 発表論文等: