平成14年度計画

I 業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置

1 評価・点検の実施
1) 外部専門家・有識者等を活用し、毎年度報告に先立ち、自ら点検を行う。
2) 全ての研究課題を対象に、自ら成果等の評価・点検を行う。特に、主要な研究については、研究の推進方策・計画及び進捗状況の点検を行うとともに、研 究機構内の研究所及び研究機構本部において、外部専門家・有識者等で構成する評価委員会を設置して成果の評価を行い、その結果は研究資源の配分に反映させ るとともに公表する。
3) 評価項目、評価基準を定める等公正さを確保しつつ、業績評価委員会を設置し、研究職員を対象として透明性の高い業績評価を行い、その結果は処遇、研究資源の配分に反映させる。

2 研究資源の効率的利用
1) 研究機構の本部及び研究所に設置した競争的資金プロジェクト研究推進本部等の連携の下に、中期計画達成に有効な競争的資金に積極的に応募し、研究資源の充実を図る。
2) 運営費交付金により実施するプロジェクト研究等を効果的かつ効率的に推進するため、研究資源の効率的・重点的な配分を行う。
3) 共同利用可能な施設、機械等を調査し、その情報に基づいてそれらの有効かつ効率的利用に努める。
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
1) 高度な知識及び技術を有する研究支援者の計画的な配置、職務に応じた任用や処遇のあり方を検討するとともに、これら職員の資質の向上に努める。また、現業業務に携わる職員については、一層の資質向上と併せて、管理的業務・専門的業務への重点的な配置を図る。
2) 特許、品種登録等の知的所有権の取得・移転に係る支援態勢を強化する。
3) 研究情報収集・提供業務の効率化、充実・強化を図る。
4) 施設、機械等の保守管理については、業務の性格に応じて外部委託に努める。

4 連携、協力の促進
(1)他の独立行政法人との連携、協力
1) 他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人事交流を含めた連携、協力を積極的に行う。特に、発展途上地域における農業技術研究の協力・支援にあたっては、国際農林水産業研究センターとの連携を図る。
2) 緊急に解決を要する重要な技術課題である「安全性に配慮した実用的な病害抵抗性組換えイネ系統の開発」、「トリプトファン含量の高い飼料用イネの開 発」及び「臭化メチル全廃に対応するための果樹害虫制御技術の開発」の3課題について、中央農業総合研究センター、作物研究所及び果樹研究所において研究 を実施するとともに、他法人の協力を得る。
(2)産学官の連携、協力
1) 国公立機関、大学、民間、海外機関、国際機関等との共同研究及び研究者の交流等を積極的に推進する。
2) 研究を効率的に推進するため、行政との連携を図る。
3) 科学技術協力に関する政府間協定等を活用し、先進国等との共同研究を推進する。
4) 国の助成により公立機関等が実施する研究等への協力を行う。
5) 関係独立行政法人、行政部局、都道府県等の参加を求めて、専門別、地域別に試験研究推進会議を開催し、相互の連携・協力のあり方等について意見交換等を行う。

5 管理事務業務の効率化
1) 事務の簡素化と迅速化を図るために、LAN等を有効に利用するとともに、人事・給与処理、会計処理、発注業務の電子化を進め、事務処理に係わる新たなソフトウエア等の導入を行う。
2) 管理経費の節減を図るため、光熱水料等の実績を調査し、分析を行う。

6 職員の資質向上
1) 業務上必要な各種の研修に職員を積極的に参加させるほか、必要な研修を実施し、職員の資質向上に努める。また、業務上必要な資格取得を支援する。さらに、事務の簡素化と迅速化に係る研修等の計画を作成する。
2) 各種制度を積極的に活用するとともに、研究機構に在外研究制度を整備し、職員の在外研究の機会増加に努める。
3) 博士号の取得を奨励し、適切な指導を行う。

II 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置

1 試験及び研究並びに調査

A 農業技術開発の予測と評価手法の開発研究

(1)食料・農業・農村等の動向解析による農業技術開発方向の解明
1) 農業技術開発の中長期的方向の解明のための調査分析
担当:総合企画調整部
研究計画:農業技術の担い手に関する分析、主要農畜産物の需要特性の解析、主要分野の技術開発上の諸課題を検討することによって、農業技術研究機構が行う農業技術開発の重点化方向を明らかにする。

(2)農業技術が国民経済、社会生活に及ぼす多様な波及効果の評価手法の開発
1)農業技術の社会的・経済的評価のための適用手法に関する調査研究
担当:総合企画調整部
研究計画:農業技術開発の効果的な評価に資するため、新たな農業技術の導入が農業生産、地域経済に及ぼす多様な波及効果の評価手法、消費者の技術受容性や消費ニーズを把握するための社会的・経済的手法及び持続的農業技術の評価手法の開発に取り組む。


B 多様な専門分野を融合した総合的な研究

(1)安全性に配慮した実用的な病害抵抗性組換えイネ系統の開発
1)障害特許技術を回避した実用的な遺伝子導入技術の開発
担当:総合企画調整部(中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部)
研究計画:8種の新規ディフェンシン遺伝子導入イネ系統の複数の病害抵抗性検定及び自殖後代での形質等を調査する。発現蛋白質によるin vitro での抗菌活性試験を引き続き実施し、有望な遺伝子を選抜する。一方、サイトカイニン合成酵素に替わる新規の選抜マーカーとMATベクターを併用し、形質転 換効率の向上と選抜マーカーの脱離条件を検討する。

(2)トリプトファン含量の高い飼料用イネの開発
1)種子稔性とトリプトファン含量の高い形質転換体作出
担当:総合企画調整部(作物研究所稲研究部)
研究計画:トリプトファン含量が高く稔性のよい固定系統について、非閉鎖系温室での安全性評価試験を行い、固定系統の特性を解析する。

2)トリプトファン合成系遺伝子の飼料用イネ品種への導入と形質転換イネ作出
担当:総合企画調整部(作物研究所稲研究部)
研究計画:飼料イネ品種形質転換体の作出を進めると共に形質転換体を解析する。

3)発現特性の異なるプロモーターによるベクター構築と遺伝子導入
担当:総合企画調整部 (作物研究所稲研究部)
研究計画:種子稔性への影響を検討するため、恒常的に強く発現するプロモーターに代えて弱い発現をするものや緑葉特異的に発現するプロモーターをOASA1D遺伝子に連結したベクターを構築し、イネに導入して形質転換体を作出する。

(3)臭化メチル全廃に対応するための果樹害虫制御技術の開発
1)クリシギゾウムシ成虫の配偶行動の解析及び誘引生理活性物質の探索
担当:総合企画調整部(果樹研究所生産環境部)
研究計画:クリシギゾウムシの配偶行動を詳細に観察するとともに、成虫を誘引源としたトラップの形状・設置時期・設置場所等について検討する。また、クリ シギゾウムシ成虫の捕集物質や近縁種 pecan weevil のフェロモン物質のクリシギゾウムシに対する生物活性を検討する。

2)クリシギゾウムシ被害軽減要因の探索
担当:総合企画調整部(果樹研究所生産環境部)
研究計画:クリシギゾウムシ幼虫に対し高い感染力を有する糸状菌の選抜を引き続き行うとともに、得られた有望菌株を用いて野外でのポット試験を行い、感染 力を評価する。また、年次変動、収穫時期、圃場における品種の配置を考慮した被害の解析を行い、クリシギゾウムシに抵抗性があるクリ品種の探索をさらに継 続する。


C 共通専門研究・中央地域農業研究

1)本州中部地域における土地利用高度化をめざした総合研究の推進

(1)大豆、麦、水稲の省力安定多収生産を基軸とした輪作営農体系の確立
1)大豆の不耕起播種栽培における生育安定化要因の解明
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:大豆の不耕起栽培における発芽・苗立ちの安定化を阻害している湿害への対策として、圃場傾斜化等の排水技術や種子消毒法について検討を進める。また、雑草制御に有効な狭畦栽培法を検討し、これらを組み合わせて大豆の不耕起省力安定生産の体系化に取り組む。

(2)ニンジン、レタスの養分吸収特性に基づく適正施肥技術並びに太陽熱処理等耕種的病害虫防除による環境負荷軽減型露地野菜生産体系の確立
[中期計画の当該中課題を13年度で完了した]

(3)新移植方式による水稲移植栽培の省力・軽労化技術の開発
1)苗マットの改良による省力・軽作業水稲移植栽培技術の開発
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:ロングマット水耕苗の巻き取り装置を試作し、省力化の程度を明らかにする。さらにマルチステージ苗については、育苗方法を検討する。

(4)関東東海地域における野菜産地の生産・出荷システムの再編戦略の開発
1)出荷予定情報システムを中核としたクイックレスポンスシステムの開発
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:出荷予定情報システムの中核となる圃場の作付計画や収穫予定などのデータを、複数の農家がインターネット等から容易に入出力できる圃場データベースシステムを開発するとともに、その現場適用性について現地試験を行う。

(5)東海地域の施設トマト生産における施設内環境の快適化技術の開発と培養液窒素を系外に出さない環境負荷軽減型生産体系の確立
1)施設トマト生産における担い手確保条件の解明、環境負荷軽減型生産体系の経営指標の策定及び熱水土壌消毒技術の開発
担当:中央農業総合研究センター経営計画部、病害防除部
研究計画:施設トマト生産において担い手として重要な女性労働の役割および養液土耕経営の経営的特徴を解明するとともに、経営指標策定のための経営データを収集する。また、熱水処理がトマトの生育に及ぼす影響、各種土壌における熱水の浸透様式を調査する。

(6)稲麦二毛作限界地帯における飼料用イネの資源循環型生産技術の開発
1)「ホシアオバ」の栽培特性および飼料適性の解明
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:「クサホナミ」に比べて早生多収な飼料イネ用系統の「ホシアオバ」の乾田および湛水直播適性を検討するとともに、堆肥の利用を前提とした施肥反応を調査し、目標TDN収量1.1トン/10aに近づける栽培条件を解明する。また麦作跡の晩播適性の評価を行う。

(7)家畜ふん等各種有機質資材の特性を活用した堆肥利用技術の開発
1)各種堆肥の製造・利用システムの解析・評価
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:堆肥センター、畜産経営、食品産業等を調査して、各種堆肥の製造・利用システムを技術、経営面から評価する。さらに、幼植物栽培試験装置を用いて、各種堆肥品質・成分の簡易評価を行う。

 

2)重粘土・多雪地帯における低投入型水田農業をめざした総合研究の推進

(1)大規模稲作における高品質化のための局所管理生産技術システムの確立
1)大区画水田における地力ムラに対応した局所栽培管理システムの確立
担当:中央農業総合研究センタ-北陸総合研究部
研究計画:これまでに開発されたセンシング・マッピング等の要素技術について、それらの作業時期、作業時間等を明らかにし、局所栽培管理のための適切な作 業システムを明らかにする。また、地力窒素量や水稲生育量の違いに対応できる施肥管理ソフトウエアを作成する。以上を合わせて、大区画水田における局所栽 培管理システムを確立する。

(2)排水性改善技術等基盤技術を核とし、大麦・大豆・野菜等を導入した水田高度輪作技術システムの確立
1)重粘土転換畑における大豆安定生産のための栽培管理技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸総合研究部
研究計画:重粘土転換畑圃場の大豆作において生育制御、安定生産の条件を解明するとともに、耕うん等の効率的な栽培管理技術を開発する。

(3)大規模高品質稲作及び水田高度輪作に関する新技術システムの経営的評価と普及・定着条件の解明
1)圃場管理技術等を核とした水田利用システムの経営的評価及び土地利用調整支援方策の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸総合研究部
研究計画:水田圃場の地力窒素計測技術やセンシング技術等の圃場管理技術を核とした水田利用システムが営農現場に導入されるための条件と可能性について、 経営的視点から明らかにする。また、集団的土地利用の先進事例を調査対象にして、土地利用の調整主体、調整方法、調整効果について検討する。

3)農業技術の経営評価と経営体の経営管理のための研究の推進

(1)輪作体系等水田利用新技術の経営的評価と普及・定着条件の解明
1)転作作物の経営的評価のための経営分析モデルの構築
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:水田輪作営農による経営体の確立に向けて、麦、大豆、飼料作物およびカンショ等の一般畑作物の導入条件を検討し、大規模水田経営の展開条件とそれを支援する地域営農システムを解明する。

2)土地利用型経営の安定的継承条件の解明
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:土地利用型の家族経営を対象に、後継者の参入前及び参入後における経営者の管理活動及び後継者の対応を実態調査により把握し、労働力や部門構成に応じた継承過程における経営対応の解明を行う。特に、後継者不在の経営に対する第三者への継承条件を解明する。

(2)畜産及び園芸経営における新技術導入のための経営的費用効果の分析と手法の開発
1)牛肉の品質管理・保証に向けたチャネル構築条件の解明
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:安全な牛肉商品化の推進のために、生産者側からの生産者段階から小売・外食段階に至る品質管理・保証のためのチャネル構築条件の解明に取り組む。

(3)農産物における消費者ニーズの把握手法及びマーケティング管理支援手法の開発
1)家計簿を利用した消費者ニーズの把握手法の開発
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:消費者の家庭内における青果物の消費行動を家計簿記帳によって把握する。このデータを用いて、多変量解析による分析を行い、青果物の家庭内消費 パターンを抽出する。把握された消費者ニーズに迅速・的確に対応するためマーケティング情報システムの構築に取り組む。

(4)価格変動等のリスクを考慮した農業経営診断・計画手法の開発
1)収益変動リスク対応型経営計画評価手法の開発
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:価格変動や収量変動などの収益変動が生じた場合に、財務指標がどのような影響を受けるのかを定量的に評価できる試算式であるアルゴリズムに基づいてソフトであるシステム試作に取り組む。

(5)多様な経営体育成のための地域営農システムの解明
1)多様な担い手間の有機的連携方策の解明
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:不安定兼業地帯及び安定兼業地帯における集落営農活動を対象に、主に組織化プロセスに関する調査を行い、両地域における担い手と集落営農の連 帯・協力関係の比較分析を行う。また、集落営農に参加している担い手と兼業・高齢農家等との連携関係や協力関係を可能にする要因について誘因・貢献分析を 用いて明らかにする。

2)農地利用集積を促進するための地域支援方策の解明
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:農地流動化先進地帯を対象に、担い手、調整主体、所有管理主体間の連携・協力関係についての調査を行い、借入地の団地化、借地者間の借地交換 等、新たな調整課題に対する利用調整組織の機能と役割について明らかにする。さらに、典型的タイプを比較し農地管理運営方式を解明する。

4)農業・農村の情報化と農業技術革新のための情報研究の推進

(1)農業、作物等に関する物理・化学的情報や事例・知識情報等の処理技術の開発
1)膨大・多様なデータの収集利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:現場発生情報及び広域気象情報を組み合わせたデータ利用・解析手法の開発を進め、これらを応用した病害虫発生予測等のアプリケーションの作成・改良を行う。

2)農業事例情報の収集利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:農業研究成果ライブラリの全文検索システムの開発に取り組むとともに、特定の作物等を対象とした栽培管理事例ベースの入力システムの改良及び栽培管理支援機能の設計を行う。

(2)ソフトコンピューティング等による頑健で柔軟な農業情報解析手法の開発 1)曖昧で定性的な農業データ評価のための頑健で柔軟な情報解析手法の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:観測データ等により自己修正する柔軟なモデルのための計算手法の開発を行う。

(3)複雑な生物現象、物理現象、社会現象等のモデル化手法の開発
1)生物現象等のモデル化のための超分散型Webシステムの開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:生育モデル等リアリスティック・モデル開発に必要な生産現場の情報を自動収集するフィールドサーバ及びそれを利用した超分散型圃場モニタリングシステムの試作を行う。

(4)ネットワーク上に分散するコンピュータ資源の統合利用技術の開発 1)分散するモデル及びデータベースを連携させるための基盤技術の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:気象情報仲介システムの機能拡張と安定性・セキュリティの向上に加え、分散する多様なデータベースを調査して、気象情報以外の仲介ソフトについても必要な機能等を解明し開発に取り組む。

(5)農業経営の改善や農業者の意思決定支援のための情報システムの開発 1)大規模土地利用型経営体の生産管理システムの開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:小規模分散多圃場の生産管理システム、データ・モデル協調型生産支援システム、経営設計システムなど、農業者の生産管理作業を支援する情報システムの開発に取り組む。

5)持続的な耕地利用技術の高度化のための耕地環境研究の推進

(1)耕地の持続的利用技術の開発
1)新規導入作物の水田適応性と後作水稲の生育収量
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:水田に導入したヘアリーベッチ、エンサイ、セスバニア等のカバークロップの後作水稲の生育・収量、養分吸収状況等を引き続き調査するとともに、各種カバークロップ跡の水稲の収量に差異が生ずる要因を解析する。

2)作物と土壌微生物との相互作用を活用した栽培管理技術の開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:不耕起条件において、牛糞堆肥からの可吸態窒素の放出とアーバスキュラー菌根菌による養分吸収促進との関係を解明する。また、根粒着生能が異な る大豆品種・系統間のダイズ黒根腐病抵抗性の差異について引き続き要因を解明し、さらに、耕起法、有機物施用と黒根腐病及びシストセンチュウの発生推移と の関係について調査する。

(2)雑草の省力・安定管理技術の開発 1)イネ科水田多年生雑草の除草剤反応の差異の解明
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:キシュウスズメノヒエ、アシカキ、ギョウギシバ、チゴザサなどのイネ科多年雑草について、切断桿からの再生力、さらに再生個体を対象に除草剤に対する反応の種間差を圃場条件下で解明し、種ごとの生態的・化学的防除法を開発する。

2)麦作における強害イネ科雑草の生態解明および防除技術の確立
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:休眠性が異なると想定されるカラスムギ集団の出芽におよぼす遺伝的・環境要因の影響を明らかにする。また、総合的防除体系を確立するために、耕 起体系と発生消長との関係、ならびに各耕起体系における石灰窒素と除草剤の効果との関係を解明する。さらに、前年度収集した集団について均一条件で育成し て試験材料を得る。

(3)生存戦略の解明に基づく環境保全型雑草管理技術の開発
1)水田用微生物除草剤の適用性評価技術の開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:ノビエを対象とした微生物除草剤候補剤(糸状菌Drechslera monoceras)を用いて、除草効果に及ぼすオーバーフロー、土性等の影響、さらに、本剤使用条件下における残草個体の生育特性及び水稲への影響を解 明し、適用性評価技術の開発に取り組む。

2)多年生雑草の栄養繁殖様式の切り替え要因の解明
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:多年生雑草としてショクヨウガヤツリを材料とし、繁殖様式の切り替えに関して、塊茎形成時に蓄積し、萌芽とともに消失する特異的なタンパク質を 効率的に抽出する方法を検討する。さらに、その特異的なタンパク質を電気泳動法によって単離同定し、機能の解明に着手する。

(4)気象・作物・土壌間相互作用の解明に基づく気象環境調和型作物管理技術の開発
1)小麦の高品質化のための成熟期・穂発芽の気象予測モデルの開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:小麦数品種の登熟気象反応の試験結果等より、気象的成熟期モデルを構築するとともに、穂発芽耐性の異なる穂近傍の環境要因を計測し、子実水分含量との関連を調べる。

(5)広域的な鳥害軽減手法の開発
1)ヒヨドリの渡来数予察システムの開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:ヒヨドリの餌量と個体数の簡便な調査手法を開発し、調査協力者からのデータを集約して全国的なヒヨドリの移動と個体数変動を解明する。また、つくば地区での調査範囲を拡張して秋冬期間のヒヨドリの中距離移動を把握する。

2)低毒性鳥類用忌避剤の早期開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:鳥類に対して強い忌避効果を有することが証明された殺虫剤フェニトロチオンについて、水稲乾田直播栽培におけるスズメ・ハト対策用忌避剤として利用できる種子処理技術を確立する

6)持続的・環境保全型農業生産の基盤としての土壌肥料研究の推進

(1)根域土壌の物質動態の解析による窒素等の挙動予測及び制御手法の開発 1)土壌の窒素動態に基づく小麦等の窒素吸収判定・制御法の開発
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:小麦の窒素吸収・収量・子実のタンパク含量等を判定・予測する手法を開発するため、耕うん処理による地力発現の肥料換算における土壌の違いなど、土壌の窒素動態に基づいて生育過程を解析・モデル化し、適切な管理法を探索する。

(2)土壌生産力への影響要因の解明及び土壌機能評価手法と土壌診断管理システムのフレームの検討 1)土壌の肥沃度変動要因の解明と機能評価手法の検討
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:土壌環境基礎調査基準点調査(一般調査)結果のデータベースにデータを追加し、充実を図るとともに、本データベースより長期有機物連用圃場の野菜畑圃場を抽出し、土壌タイプ別に土壌理化学性の経年変化を明らかにする。

(3)植物成分の機能・代謝過程の解析及び作物の栄養診断技術の開発 1)作物の窒素吸収・同化に伴う代謝成分の変動ならびに機能の解析
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:作物の窒素栄養を制御するため、窒素の吸収・同化過程で変動する代謝成分を解明するとともに、これら成分の窒素代謝における機能を評価するため、遺伝子組み換え体の作出に取り組む。

(4)有機質資材の有効成分評価法及び有機質資材投入の影響解析手法の開発 1)有機質資材の品質評価法の開発並びに資材の特性に応じた類型化
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:前年度収集した有機質資材の分解特性、肥効特性に関する試験データを拡充し、資材の成分含量、C/N比、作物及び土壌などの要因別解析を進めるとともに、収集した有機質資材について、微少熱量計による易分解性有機物含量の推定手法の適用性を解明する。

(5)窒素等養分循環に関与する土壌微生物代謝の定量的把握並びに微生物-植物相互作用の解明 1)有機質資材等施用下での土壌微生物の代謝作用が窒素収支に及ぼす影響の解明
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:前年度調査した土壌微生物の窒素代謝作用、及び微生物バイオマスを介しての窒素のフローを炭素の動態と関連づけて把握し、C・N複合モデルの基礎データを得る。また、畑土壌において有機物施用の脱窒促進に及ぼす影響を圃場条件下で計測する。

(6)畑地における養水分動態のモニタリング並びに施設栽培排水等の資源循環型水質浄化技術の開発 1)有機質資材等施用下での硝酸性窒素等の溶脱量の調査・解析
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:モノリスライシメータを用いて、土性や有機質資材の施用が硝酸性窒素等の溶脱パターンに与える影響を調査・解析するとともに、数学モデルにより土壌構造が硝酸性窒素等の溶脱に及ぼす影響を評価する。

7)環境と調和した持続的農業生産のための病害研究の推進

(1)イネいもち病、コムギ赤かび病等の発生予察技術の高度化と減農薬防除技術の開発
1)小麦赤かび病菌のマイコトキシン産生抑制型品種の探索と利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:赤かび病に対するコムギ品種の抵抗性の強弱がマイコトキシン産生性に及ぼす影響を明らかにし、マイコトキシン産生抑制型品種を探索する。また、マイコトキシンの産生を低減する薬剤を探索する。

(2)ウイルス等病原体と宿主植物との相互間作用の分子生物学的解析による発病機構の解明 1)トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒ウイルス系統の作出とその利用による防除技術の開発
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:既往の弱毒ウイルスの干渉性等に関わる遺伝子解析情報に基づき、トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒化感染性cDNAクローンを人為的に多数デザイン・作出し、宿主作物における防除効果を評価して、最適弱毒株のモデルを創造する。

(3)土壌病原菌の感染・定着機構の解明に基づく土壌伝染性病害抑制技術の開発 1)フザリウム菌の不活化機構・感染機構の解明
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:熱水土壌消毒や土壌還元消毒等のフザリウム菌密度低減効果を評価し、低減に寄与する条件を明らかにする。

(4)新発生病原菌及び系統の診断・同定技術の開発 1)細菌病診断・同定のための汎用的高精度検出法の開発とその利用
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:大容量検体からの検出法を用いて、農業生態系におけるイネもみ枯細菌病菌の分布および挙動を解明する。また、大容量検体からの定量的検出法についても検討する。

(5)臭化メチル代替防除を目指した土壌伝染性病害の総合防除技術の開発 1)トウガラシマイルドモットルウイルスの圃場診断技術の開発
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:前年度に考案したトウガラシマイルトモットルの新検出法を用いて、ピーマン栽培圃場の各種土壌中におけるウイルス濃度を調べ、ウイルス濃度とモザイク病の発病との相関を解明する。

(6)病原体と媒介生物間相互作用の解析による媒介機構の解明 1)ファイトプラズマの媒介昆虫特異性の解析
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:ファイトプラズマの昆虫媒介能力普通株と喪失株について、遺伝子レベルで相互に差異が認められたものを効率的に識別できるDNAマーカーを探索する。

8)環境と調和した持続的農業生産のための虫害防除研究の推進

(1)耐虫性品種の持続的活用を柱とする省力的IPM理論と先導的技術の開発
1)バイオタイプ発達速度に及ぼす害虫の生態的特性の影響評価
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:抵抗性形質が1遺伝子座の一対の遺伝子に支配されているケースについてバイオタイプの発達を予測する汎用モデルを開発する。このモデルを解析してバイオタイプ発達を持続的に阻害できる条件を解明する。

(2)害虫の発生動態と加害機構の解明に基づく発生予察技術の高度化
1)分布北限地域におけるスクミリンゴガイの密度制限要因の解明
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:スクミリンゴガイの個体群管理の効率化と分布拡大の阻止のために、野外におけるスクミリンゴガイの密度の時空間変動パターンと物理・化学・生物学的要因を明らかにする。

(3)天敵の潜在的害虫制御能力の解析と評価法の開発
1)NPV感染力増強物質及び天敵の行動制御物質の機能解析と評価法の開発
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:ヨトウムシ類のNPV(核多角体ウイルス)とGV(顆粒病ウイルス)の相互作用による感染力増強効果をもたらす物質の機能を、生物検定と昆虫培 養細胞を用いた遺伝子発現により解析する。ハダニ類等の天敵の行動制御物質であるHIPV(植食者誘導性植物揮発物質)や花蜜等の成虫餌の機能解析と評価 法の開発を行う。

(4)ダイズシストセンチュウ等の動態に及ぼす耕種的・生物的諸因子の影響解析
1)関東地域におけるダイズシストセンチュウ個体群の寄生性の解明
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:抵抗性打破系統発生地域より線虫を採取し、これらの各種抵抗性ダイズ品種に対する寄生性の調査を行う。

9)IPM技術の確立

(1)施設トマトの病害虫防除技術の体系化と実証
1)熱水、生物的防除資材及び植穴燻蒸処理の組合せ効果
担当:中央農業総合研究センター病害防除部、虫害防除部
研究計画:熱水土壌処理、パスツーリア菌、VA菌根菌、植穴燻蒸処理等について、それらの組合せによる有害生物(線虫・萎凋病)の防除効果を2研究室共同ハウスで実証し、効率的防除技術の体系化に取り組む。

10)低コスト・省力化及び環境保全のための機械・施設に関わる作業技術研究の推進

(1)水稲・麦・大豆等の不耕起を中心にした低コスト・省力機械化作業技術の開発
1)麦・大豆の不耕起省力機械化作業技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:作土の物理性改善技術については、削溝・耕耘法の効果及び現地調査等により排水性改善指標を明らかにする。不耕起作業技術の安定化・高度化につ いては、麦・大豆では転換田における高精度施肥播種法、水稲では植生マルチを活用した有機米生産のための機械移植の高精度化に取り組む。

2)田植機汎用利用による水稲湛水直播技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:長尺種子シートを田植機で掻き取り押し込む方式の湛水直播技術を開発する。長尺種子シートの連続製造法とともに、田植機掻き取り部でのシート保持性を改良し苗立ち率の向上に取り組む。

(2)センシング技術の高度化による精密・軽労作業技術の開発
1)精密農業のためのセンシング・適正制御技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:基盤技術として原子間力顕微鏡や微細操作技術を活用した高度センシング・加工制御技術の開発に取り組む。精密農業のためのセンシングでは水稲・ 麦の生育・収穫情報の計測法開発に取り組み、適正制御技術では、GPS等利用による田植え・管理の一貫無人化や重量野菜の自動搬出技術を開発する。

2)施設利用における高効率・軽労作業技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:育苗代替資材等を用いた水稲種子のすじ状精密播種プラントにより苗箱数の低減化に取り組む。また、園芸用パイプハウスにおけるユーザビリティを 考慮した軽労作業法の開発に取り組むとともに、育苗ハウスにおいて局所的に冷水を利用した効率的温度環境調節法の開発に取り組む。

(3)高品質プレ・ポストハーベスト作業技術の開発
1)穀物の低コスト・高品質収穫乾燥調製技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:収穫期に広い水分分布を持つ高水分小麦のコンバイン収穫時の品質低下を改善するとともに、穀粒を水分別に選別し、適温で効率的に乾燥する方法の開発に取り組む。

(4)バイオエネルギー資源等の省力生産・利用及び省エネルギー作業技術の開発
1)資源作物等の省力生産・利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:なたねのロス低減収穫法、高収率搾油法及び超臨界アルコールによるバイオディーゼルフューエル変換法の開発に取り組む。また、ケナフについて収穫機の収穫時期別作業性能の確認及び皮剥ぎ機の性能試験を実施し、中型機による収穫調製機械化作業法を策定する。

(5)農作業快適化条件の解明及び作業システムの評価手法の開発
1)快適性指標等に基づく作業システム評価モデルの構築
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:13年度に開発した携帯電話を活用した農作業緊急情報通報システムを民間企業と共同で小型化、多機能化を行う。また、水田輪作作業体系を対象 に、快適作業要因の解明と軽労・快適性、収益性、環境保全等に関わる実証データの収集、及び作業体系シミュレータの改良を行い、機械化作業システムを総合 的に技術評価する手法を検討する。

11)重粘土・多雪地帯における水田高度利用研究の推進

(1)重粘土、夏期高温多湿地帯における水稲・転換畑作物の生育特性の解明と栽培法の改善
1)大規模栽培並びに飼料利用のための水稲の生育特性の解明と耐湿性大豆育種素材の選抜
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:直播栽培下での水稲出穂の変動特性を解明するとともに、その予測法を開発する。飼料イネについては、ホールクロップ利用上有利である茎葉の炭水 化物再蓄積量と栽培条件との関係解明を行う。大豆では、耐湿性育種素材の特性を湿潤条件と生育前期における大豆葉身の黄化の進行・回復との関係から解明す る。

(2)品種抵抗性を活用した環境保全型病害防除システム構築のためのいもち病等抑制技術の開発
1)コシヒカリマルチラインによるいもち病発病抑制効果の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部

研究計画:コシヒカリ同質遺伝子系統の効果的ないもち病発病抑制混植法を中山間などの条件で検討する。また、そのような条件下での菌糸融合によるいもち病菌の病原性変異菌出現率を調べて、スーパーレース出現の対策確立に資する。

(3)水稲害虫の発生機構の解明及び耐虫性を利用した管理技術の開発
1)アカヒゲホソミドリカスミカメの基礎的生態と生活史の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:成虫の体内にルビジウムでマークし、マークした成虫を野外で放飼し再捕することにより、移動分散能力を調査する。また、雑草地、牧草地、畦畔を含む水田で定期的にすくい取り調査を行い、年間を通じての個体数変動を把握する。

(4)重粘土水田の土壌生産機能の解明及び環境保全型土壌・施肥管理技術等の開発
1)米品質に係わる土壌中微量要素の吸収予測・制御技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:直播や移植水稲の玄米中微量要素の分析手法としてICP発光分析法が有効であることが分かったので、土壌からの微量要素の吸収予測法の高精度化を図り、年次変動や玄米中微量要素との関係を検討する。

(5)重粘土壌の物理特性の解明による、汎用農地の排水性、砕土性等を制御する技術の開発
1)重粘土水田における亀裂形成制御法の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:重粘土汎用水田の排水性改善のために亀裂ネットワークを営農的に制御する手法を開発する。亀裂形成パターンの形成メカニズムの成果を踏まえ、乾 燥期間と土壌水分の変化、亀裂の消長を調査するとともに、降雨に対する暗渠排水量の変化からその排水性改善効果を評価する。

(6)重粘土圃場における水田機械作業の安定・軽労化技術の開発
1)水田機械作業の安定・自動化技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:車両走行性については、開発した計測手法を活用し、試験データを蓄積する。また、水稲の生育・収量を検出し地図化するシステム、および局所精密管理を行うための自動化技術を開発する。

(7)地域気象資源等の評価及び利用・制御技術の開発
1)気象資源等の評価手法高度化と特性の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:寒候期における降水量計の捕捉特性に関する成果をもとに降水量観測値の補正方法を確立し、寒候期降水資源量の再評価を行う。

(8)有用大麦育種素材の選定及び重粘土・多雪地帯に適する雲形病抵抗性大麦等の品種育成
1)高品質な雲形病抵抗性大麦の品種育成
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:大麦の品種育成のため、平成11年度以前交配の系統・系統群から、系統選抜と個体選抜を継続する。また、多収・高白度・高タンパクの特性を持つ 「北陸皮35号」の越冬後施肥反応を調査する。併せて大麦搗精麦色相改善のために、黒条線の影響を少なくして大麦胚乳色を測定する方法を開発する。

12)良食味・高品質米の高能率・低コスト生産のための基盤研究の推進

(1)寒冷地南部向き良食味・直播適性・水田高度利用型水稲品種の育成
1)寒冷地南部向き晩植適性を備えた良食味品種・新形質米品種の育成
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:交配、雑種集団養成、個体選抜、系統選抜、生産力検定試験、特性検定試験を行い、晩植適性及び新しい玄米特性をもつ個体、系統を選抜する。特に 晩植による生産力検定試験の確立を図るともに、リポキシゲナーゼ欠失系統北陸PL2とインド型系統北陸149号の特性解明を重点的に行う。

(2)米の品質構成要因と関与遺伝子の機能及び水稲のでんぷん生合成等の物質生産機能の解析
1)コメの品質形成に関連する蛋白質の解析
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:高品質米の作出にはコメの品質の形成に重要な役割を果たす酵素・蛋白質を明らかにする必要がある。このために栽培・保存履歴の異なるコメやプロラミン変異系統などの胚乳形質変異米で特徴的に発現される蛋白質を解明する。

2)水稲のでんぷん蓄積及び胚乳細胞数決定機構の解析
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:米粒の品質及び特性に大きく影響するでんぷん蓄積に関与する遺伝子の作用を解明するため、でんぷん合成の基質である糖類の代謝・輸送に関わる遺 伝子の発現特性を解析する。これにより、でんぷん蓄積の場である胚乳細胞の分化とその後のでんぷん蓄積過程におけるこれらの遺伝子の役割を明らかにする。

(3)実用的な遺伝子組換え技術の開発及び病害抵抗性等の実用的な導入遺伝子の単離
1)イネにおける実用的な遺伝子組換え技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:新規選抜マーカー遺伝子の検索並びに実用化条件の検討とMATベクターシステムによる選抜マーカー遺伝子の除去技術を開発し、イネの実用組換え 体作出に最適化したベクターの構築を図る。また、導入遺伝子を目的に合致した正確なパターンで発現させるためのプロモーター等の開発により実用化に直結し た独自のイネ遺伝子導入技術を開発する。

(4)実用形質の遺伝的発現機構の解析及び効率的な育種選抜技術の開発
1)分子マーカー等を利用した水稲の実用形質の効率的な育種選抜技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:各種いもち病抵抗性遺伝子をDNAマーカー選抜育種法を用いて効率的に既存品種へ導入していけるような系の開発を行うために、ゲノム中の SNP(1塩基置換)を利用したPCRマーカーを遺伝子近傍に確立する。今年度は抵抗性遺伝子の中でも、Pib, Pita, Pita-2, Piz-tを主な目標遺伝子とする。

(5)遺伝子組換え系統の形質発現評価及び安全性評価
1)遺伝子組換え系統の環境に対する安全性評価
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:ナシ・タウマチン様タンパク質遺伝子(psTL1)及びイネ科植物由来のリボゾーム不活性化タンパク質遺伝子(RIP)を導入した組換えイネを 隔離温室等で栽培し,組換え当代及びその自殖後代でのいもち病等の糸状菌病抵抗性,白葉枯病等の細菌病抵抗性及び導入遺伝子の発現等を調査し,組換え系統 の環境に与える影響を評価する.

 

D 北海道農業研究

1)北海道地域における大規模専業経営の発展方式並びに大規模水田作・畑作・酪農生産システムの確立

(1)平成22年度までの寒地農業構造の動向予測と生産技術の展開方向の解明
1)大規模農業の主要指標動向と技術の展開方向の解明
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:「2000年農業センサス」や大規模農業経営の面接調査結果の分析により、大規模水田地帯における水田輪作の展開条件や畑作・草地地帯におけるふん尿処理技術の導入条件を解明する。

(2)寒地大規模専業経営における開発技術の経営的評価と土地利用型経営の展開条件の解明
1)畑地型酪農経営における高品質飼料生産システムの経営的評価
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:畑地型酪農経営モデルを用いたシミュレーション分析を行い、単播アルファルファを基幹とする高品質飼料生産システムの導入による経営的効果を解明する。

(3)寒地大規模専業地帯における新生産システムの普及・定着条件と地域農業支援システムの形成条件の解明 1)酪農における新生産システムの定着条件およびファームインを核とした地域農業活性化メカニズムの解明
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:高品質飼料生産システム定着のためのコントラクタによる作業受託システムのあり方を解析する。また、ファームインによる活性化のメカニズムを明らかにするため地域ネットワークの構造を解析する。

(4)寒地の大規模水田作における水稲・麦・大豆等の安定輪作技術の開発
1)大豆の遅まき栽培における安定生産技術の開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:表層砕土部分耕において、6月上旬に遅まき栽培された大豆新品種の最適な播種方式等を明らかにし、遅まき栽培における安定生産技術を開発する。

(5)基幹畑作に直播キャベツを導入した新作付体系の確立
1)直播キャベツの省力収穫システムの開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部 研究計画:キャベツ収穫機とこれに伴走するキャベツの調製・箱詰め用トレーラ等を改良し、直播キャベツの収穫作業をさらに省力化する作業体系を構築する。

(6)アルファルファを導入した畑地型酪農営農システムの確立
1)フォレージマットメーカを軸とした収穫・調製技術体系の開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:フォレージマットメーカおよびロールベール運搬密封機を利用して、水分の安定した高品質な単播アルファルファの低水分サイレージを収穫・調製する作業技術体系を確立する。

2)大規模生産基盤技術の開発

(1)大規模水田の排水技術及びコージェネレーションシステムを利用した寒地生産施設内の環境制御に関する基盤技術の開発
1)疎水材充填暗渠の構造解析
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:疎水材充填暗渠の設計条件、特に設置間隔の根拠を明らかにするとともに、踏圧沈下性の小さい充填素材を開発する。

(2)大規模圃場における稲・麦・大豆等の安定輪作のための汎用機械作業技術の開発 1)マルチシーディング技術の開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:表層砕土・部分耕ロータリと稲・麦・大豆等に汎用的なより軽量・小型化に配慮した高精度播種機をリンクして耕耘・施肥・播種を迅速・高精度に行うマルチシーダ2号機を試作する。

(3)大規模圃場の効率的利用管理のための生産技術情報の収集・利用手法の開発
1)作物生産情報による圃場・栽培管理システムの作成
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:収集した大豆成育情報から成育段階ごとに最大繁茂量到達時期並びに最大繁茂量を予測するための基本関数を決定する。また、北海道の作物生産に関 連するメッシュ情報を地図情報とリンクさせて参照するための三次メッシュ地図情報表示プログラム部品開発のための基本構造を決定する。

3)寒地に適応した優良作物品種・系統の育成

(1)水稲の直播用・高付加価値型新品種及び高度障害耐性系統の開発 1)低アミロース品種の育成
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:早生直播向け低アミロース系統「北海288号」、中生で高品質の低アミロース系統「北海292号」について命名登録に向けた栽培特性・食味特性等の評価を行う。

(2)寒地向け畑作物の高品質優良品種・系統の育成
1)パン用硬質秋播小麦「北海257号」の適応性評価と育成
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:収量性などの栽培特性、デンプンやタンパク質など物性に関わる品質の特性、および良質安定生産のための普及条件を明らかにして「北海257号」を奨励品種として完成させる。また、秋播小麦の赤かび病抵抗性育種素材の開発に着手する。

2)てんさい病害抵抗性系統「北海83号」の適応性評価と育成
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:てんさいの糖分低下を引き起こすそう根病、褐斑病に抵抗性で、直播栽培で問題となる黒根病に対して耐性を持つ、複合抵抗性系統「北海83号」の系統適応性検定試験を実施し、低コスト化に向けた北海道の奨励品種として完成させる。

3)紫肉ばれいしょ品種の適応性評価と育成
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:紫肉ばれいしょ「北海88号」の現地適応性試験を実施し、栽培特性、収量性、品質特性を評価し、奨励品種として完成させる。

(3)寒地向け園芸作物の省力・高付加価値な系統・育種素材の開発
1)アルストロメリアの新花色育種素材の開発
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:アルストロメリアの種間雑種について、花弁中のアントシアニン分析を行い、新花色を有する素材の選抜を行うとともに、それを母材とした後代の育成を行う。

2)高品質・短節間カボチャ親系統の選抜
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:F4、F5世代の系統から短節間、高Brix・硬果肉について選抜を進め、固定を図る。また、果実品質はやや劣るが固定の進んだF7系統についても選抜を行い、固定度の高い系統を得る。

(4)寒地向け飼料作物の耐寒性優良品種・系統の育成
1)越冬性に優れるアルファルファ「北海3号」の開発
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:新品種候補としての提案の可否を検討するため、アルファルファの系統「北海3号」の地域適応性、耐寒性、飼料成分、採種性等を評価する。

4)大規模畑作の持続的生産技術の開発

(1)輪作畑への休閑・緑肥や精密農業技術等の導入効果の解明
1)北海道畑作地帯における輪作体系のLCAによる環境評価手法の確立
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:大規模機械化畑作の各生産過程において排出される地球温暖化ガス、農薬、硝酸態窒素などの環境負荷の定量的評価手法を確立し、簡易耕などの新技術導入の環境負荷低減効果を評価する。

(2)畑輪作における生態機能を活用した土壌微生物・雑草の制御技術の開発
1)輪作畑土壌における土壌微生物の群集構造および線虫密度の定量的評価
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:現地輪作畑土壌を用いて、前年度開発した微生物群集の簡易多様性評価技術の検証を行う。また、対抗植物や休閑を組み入れた輪作体系が線虫密度に及ぼす影響を解明する。

(3)てん菜・大豆等の品質形成生理の解明
1)ばれいしょ塊茎貯蔵中の品質変動の解明
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:貯蔵中のバレイショ塊茎中の糖変動に関与している酸性インベルターゼ等の酵素量変化、活性調節機構を解明するとともに、酵素の遺伝子レベルでの調節機構を解析する。

2)北海道産硬質小麦粉生地の物性・デンプン特性の評価・解析と最適ブレンド技術の開発
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:北農研育成の超強力小麦系統「勝系33号」、強力小麦系統「北海257号」を中心に生地物性、デンプンの膨潤、糊化特性を解析する。また、中華麺、冷凍生地パンへの超強力粉ブレンド効果を解明する。

(4)硬質秋播小麦等の利用技術及び品質評価・貯蔵技術の開発
1)乳酸生成糸状菌の生ポテトパルプにおける乳酸生成能の改良
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:糸状菌Rhizopus oryzae IFO 4707の生ポテトパルプにおける乳酸生成を向上させるため、前培養条件の検討および変異株の取得により、乳酸生成能を改良する。

5)草地・自給飼料を活用した酪農技術の開発

(1)高泌乳牛の遺伝特性・繁殖機能の解明と利用技術の開発
1)分娩後の高泌乳牛の繁殖機能回復過程の解明
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:卵巣及び子宮の回復過程を超音波診断装置により経時的に観察し、乳量・栄養条件等との関係を明らかにするとともに、回復過程にある卵巣内の卵子 の品質を、経膣採卵および体外培養技術を応用して評価する。また、初産分娩月齢の早期化が分娩後の繁殖機能回復に及ぼす影響を明らかにする。

(2)高泌乳牛の栄養管理技術と自給飼料の安定調製・利用技術の開発
1)自給粗飼料のエネルギー含量の定量とアルファルファの給与技術の開発
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:自家調製した各種自給粗飼料を、高泌乳牛に給与してエネルギー含量を定量し、粗飼料の違いによるエネルギー要求量を解明する。また、アルファルファサイレージ等の自給粗飼料を高度に利用した乳牛に対する給与技術を開発する。

(3)牛群の合理的管理技術と寒地向き家畜ふん尿処理技術の開発
1)フリーストール牛舎における乳牛の肢蹄障害と生産に及ぼす影響の解明
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:前年度までに蹄底潰瘍が蹄球糜爛に継発することが明らかになったことから、産次、乳期、季節別に乳牛の蹄底面積、蹄壁長、蹄の高さ・角度・硬度 と蹄球糜爛発症との関係を解析する。また、起立時の乳牛の後肢内側蹄、外側蹄にかかる加重の測定方法を検討し、蹄球糜爛発症時における蹄の負重機能変化を 解明する。

(4)高品質自給飼料の持続的な生産・利用技術の開発
1)放牧牛の栄養摂取量制御技術の開発
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:乳牛を種々の面積の牧草地に放牧し、栄養摂取量と割当草量との関係を解明する。また、肉用繁殖牛の母子分離放牧技術とケンタッキーブルーグラス活用による肥育素牛の高増体育成技術を開発する。

2)採草地の年1回刈り利用技術の開発
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:チモシー晩生品種とマメ科牧草の混播草地を用い、年1回遅刈り省力管理区の収量ならびにマメ科牧草の永続性を年2回刈り対照区と比較検討し、年1回刈り利用技術の開発を進める。

6)寒地生態系を活用した生産環境の管理技術の開発

(1)寒地作物病害の特性解明と制御技術の開発
1)わが国に発生するジャガイモウイルス病の総合検定システムの確立
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:わが国に発生記録がある11種全てのジャガイモウイルスを、遺伝子診断により検出できる、ばれいしょ塊茎のウイルス検定総合システムを確立するため、キュウリモザイクウイルス(CMV)およびジャガイモSウイルス(PVS)の検定法を確立する。

2)ジャガイモ疫病圃場抵抗性に関与する要因解明
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:ジャガイモ疫病圃場抵抗性の評価指標として重要な要因を明らかにするために、病斑形成率、病斑進展速度、遊走子のう形成量および感染から遊走子のう形成に要する時間等の抵抗性関連要因と圃場抵抗性程度との関係を解明する。

(2)寒地作物害虫の発生生態の解明と制御技術の開発
1)土着天敵利用によるばれいしょ害虫防除技術の実証
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:殺虫剤無散布でも安定して慣行防除並みのばれいしょの収量・デンプン価を確保できることを実証するとともに、減農薬に伴って顕在化する害虫の有無を解明する。

2)抵抗性ばれいしょ品種によるシストセンチュウ密度低減技術の実証
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:ジャガイモシストセンチュウの高密度汚染農家圃場において、栽培管理条件の違いによるばれいしょへの線虫加害程度を解析し、抵抗性品種の安定生産条件を解明する。

(3)寒地における土壌生態系の構造・機能の解明と環境負荷の評価・低減化手法の開発
1)寒地農耕地における有機物の根発達促進機能の解明
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:家畜ふん堆肥等の有機物とその施用土壌を対象に、根伸長促進機能に関与する生理活性物質の消長を明らかにするため、機器分析による定量法を確立する。また、生理活性物質の構造と根伸長活性の関係を解析し、根の発達を根長や根系構造で評価する方法を開発する。

2)有機物資材を利用したダイズのカドミウム吸収抑制技術の開発
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:土壌有機物の特性調査およびカドミウムを不溶化させる働きの強い有機物資材の検索を行うとともに、子実へのカドミウムの分配割合が有機物資材によって異なる理由を検討し、有機物資材を利用したカドミウム吸収抑制技術を確立する。

(4)寒地における土壌の養分供給能及び作物の養分吸収特性の解明と土壌・栄養診断技術の開発
1)復元田における直播水稲の低タンパク米生産技術の開発
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:米のタンパク質含量に影響を与える、生育後半の下層土からの窒素供給量を推定する方法を開発するとともに、水稲品種「北海288号」についての施肥管理試験を様々な栽培条件で行い、米のタンパク質含量などへの影響を比較・解析する。

2)小麦のタンパク質含量制御技術の開発
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:パン用秋播き小麦の新品種候補「北海257号」を、起生期以降の窒素追肥方法および量を変えて栽培し、養分吸収特性および子実タンパク質蓄積過程に対する窒素栄養条件の影響を明らかにする。さらに、栄養診断指標としての葉色について基準値の策定に取り組む。

(5)寒地の耕地気象要素の評価と気象要素に対する作物反応の解明
1)耕地の気象環境の長期・広域動態評価手法の開発と気象要素に対する作物反応の解明
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:耕地気象要素の評価については、地温、土壌凍結深、熱収支などの季節変化を一般気象データから評価する簡便で広域適用可能な手法を開発するため に、数理物理的な手法によるモデルの作成を行う。作物反応の解明については、異なった圃場管理による温度・水分環境の違いがダイズの生育に及ぼす影響を解 析する。

7)作物の耐冷性・耐寒性・耐雪性機構の解明と利用技術の開発

(1)作物の耐冷性機構の解明と耐冷性関与遺伝子群の単離
1)植物の低温ストレス耐性獲得機構の解明
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:4°Cと12°Cの異なる低温度域で発現する主要なシグナル伝達タンパク質を単離し、その低温応答性や発現の組織特異性を明らかにする。また、シグナル伝達経路の下流に位置し、低温ストレス耐性に寄与する機能性タンパク質を同定し、その機能を解明する。

2)ミュータントパネルを利用したイネ低温耐性関連遺伝子の単離と機能解明
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:イネのレトロトランスポゾン挿入による変異系統(ミュータントパネル)の中から、穂ばらみ期耐冷性などイネの低温耐性に関する変異系統を選抜する。形質とPCR遺伝子型との解析から、原因遺伝子を単離し、その機能を解明する。

(2)作物の耐寒性・耐雪性機構の解明と分子育種のための基盤技術の開発 1)フルクタン合成酵素遺伝子群の単離と機能解明
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:コムギの耐凍性や耐雪性に密接に関連するフルクタン合成酵素(1-SSTと6-SFT)遺伝子のゲノムクローンを単離し、それらのプロモーター領域やシグナルペプチド領域を解析し、フルクタン合成酵素遺伝子の越冬性に及ぼす効果を明らかにする。

8)寒地向け優良品種育成のための基盤技術の開発

(1)寒地向け作物の遺伝資源の評価と育種素材の開発
1)コムギの低分子量グルテニン遺伝子の単離と機能解明
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:小麦粉の生地物性に関連する低分子量グルテニン・サブユニットを分画し、そのアミノ酸配列を明らかにするとともに、対応するcDNAを単離する。

2)イネ科牧草の耐凍性、耐雪性育種素材の開発
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:ロシア遺伝資源について耐凍性、耐雪性を検定し、優れたオーチャードグラスおよびメドウフェスク個体を選抜する。日本で育成した品種・系統と交配し、耐凍性、耐雪性の育種素材とする。

3)高機能性野菜の品質成分評価
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:タマネギのフラボノイド類、キャベツのビタミンU、および大根や白菜のグルコシノレートの機能性成分の評価法を開発し、各種成分の環境による変動を解明する。

(2)分子マーカーを利用した効率的育種技術の開発
1)インド型稲由来の耐冷性遺伝子の解析
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:インド型稲に由来する耐冷性極強品種「初雫」のリコンビナントインブレッド系統群(F5、100系統)を育成し、冷水田を用いて耐冷性の遺伝解析を行う。さらにマイクロサテライトマーカーによる耐冷性遺伝子座の解析を実施する。

 

E 東北農業研究

1)東北地域の立地特性に基づく農業振興方策の策定並びに先進的な営農システム及び生産・流通システムの確立

(1)農業の担い手と米等主要作目の消費の動向及び地域資源を活用した活性化方策の解明
1)平成22年度までの農業の担い手及び米等の主要作目の動向解析
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:平成22年度までの農業の担い手動向予測モデルのプロトタイプを構築するために、東北6県における1990・1995・2000年農(林)業セ ンサス農家調査票の農業従事者単位への組み換えを行い、世帯員及び他出あとつぎ予定者の就業分類別推移状況集計表を作成するとともに就業動向推移確率を算 出する。

2)地域振興型公企業を核とした活性化メカニズムと効果の評価
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:地域振興型公企業の事業展開過程および展開条件、事業効果、公企業を核とした地域農業振興等のあり方について、補足調査を行い、分析結果の検証 を行う。また、アンケート調査及び事例調査の分析結果をもとに、地域振興型公企業の経営的評価指標及び公的機関の支援方策の有効性評価指標の策定を行う。

(2)営農システムの展開方向の解明と先進技術導入の評価・分析
1)大規模水田作経営の経営管理の確立
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:東北地域では平坦地においても担い手不足等から水田の耕作放棄などが発生している。農地集積を目指す大規模水田作経営においては経営管理、なかでも効率的な土地利用管理のあり方が重要となるため、これら農地荒廃の実態と要因を解明する。

(3)複粒化種子直播体系を活用した水田輪作営農システムの確立
1)寒冷条件における複粒化種子の特性解明と栽培管理技術の確立
担当:東北農業研究センター総合研究部・水田利用部
研究計画:複粒化種子を用いた高精度株形成方式による耐倒伏性などの生育特性を解明するとともに、高精度株形成の特性を生かすための栽植密度、施肥管理、雑草防除、水管理等の栽培管理技術を確立する。

(4)寒冷地大規模草地・林地を基盤とした日本短角種等の低コスト牛肉生産・流通システムの確立 1)良質赤肉生産に向けた地域飼料資源の評価と利用方策
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:公共牧場の貯蔵粗飼料や地域食品製造副産物等を対象に、生産・供給量、飼料品質について調査・分析し、赤肉生産に向けた地域飼料資源の賦存量を解明する。

(5)生物利用等による寒冷地環境保全型野菜栽培技術の開発
1)生物機能等の利用によるアブラナ科野菜の寒冷地環境保全型栽培技術の確立
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:アブラナ科野菜根こぶ病を対抗性植物、各種資材、及び耕種的方法を用いて総合的に防除する現地実証を行うとともに、病原菌密度-発病度曲線による土壌診断等に基づく総合的病害管理のためのマニュアルを作成する。

(6)非破壊センシングを活用した品質本位リンゴの省力生産・流通システムの確立
1)非破壊品質評価情報の高度利用による高品質・均質化技術の確立
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:「ふじ」の蜜入り、でんぷんについて非破壊品質評価情報と肉眼による指数値データに加えて画像情報や生化学的分析データなどを調査・収集し、そ の関係解析を進める。 また、リンゴの樹相診断情報や非破壊品質評価情報などの収集を継続し、果実品質との関係を解析する。

(7)寒冷気象を活用した新規導入作物の生産・流通一貫システムの開発
1)マーケティング・サイエンス手法による消費者の購買行動の解明
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:消費モニターを再募集するとともにインターネットによるアンケートを実施する。これまでに解明したマーケティング・サイエンスの手法を有機的に 組み合わせて、消費モニターとインターネットを活用し、新規導入作物並びに商品・製品開発のためのマーケティング・リサーチのモデルを作成する。

2)寒冷地における水田基幹作物の省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)水稲の革新的育種法の開発及びいもち病抵抗性品種の育成
1)新形質米・飼料用品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:実需者から要望の高い赤米糯系統の育成を加速化するとともに、色素米の普及により問題視されている花粉飛散による一般品種の汚染の実態を調査す る。飼料用イネはTDN収量 1.1トン/10a(乾物全重 2.0トン/10a)でいもち耐病性、耐冷性を強化した系統育成を目標に選抜を行う。

(2)初期生育性及び登熟機能の解明による高品質米等安定生産技術の開発
1)胴割れ米発生に及ぼす環境及び生理遺伝要因の解明
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:圃場及び人工気象室を用いて、胴割れの発生の品種間差異を検討するとともに、胴割れ発生の難易に及ぼす登熟期の気象条件の影響を明らかにする。また、胴割れの発生しにくい「ひとめぼれ」と発生しやすい「トヨニシキ」の組換え近交系を用いて遺伝解析を行う。

(3)低温出芽・苗立性を備えた直播用水稲品種の育成
1)直播用品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:良食味で耐倒伏性の強い早生の直播適性系統育成を目標に選抜を行うとともに、いもち耐病性、耐冷性等の特性の強化を図る。特に有望系統を播種密度の高い散播条件で栽培して耐倒伏性が極強の系統を選抜する。

(4)寒冷地向け高製めん・製パン適性、良粉色、早生・安定多収の小麦品種の育成
1)高製めん・高製パン適性、良粉色、早生・多収の小麦新系統の選抜
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:早生・多収で耐病性・障害抵抗性が強い、高品質のめん・パン用系統を選抜する。色相が優れためん用系統の早期選抜法の開発に取り組む。めん用・ パン用有望品種・系統について青森畑園試、岩手農研センター、秋田農試及び福島農試に栽培試験を委託し、高品質・安定栽培法の確立する。

(5)寒冷地向け高精麦白度、早生・安定多収の大麦品種の育成
1)高精麦白度、早生・安定多収の大麦系統の選抜
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:引き続き、早生・多収で、耐病性・障害抵抗性の強い、高精麦・炊飯白度の系統を選抜する。高精麦白度・加熱後色相の優れた系統の早期選抜法の開 発に取り組む。有望系統の「東北皮34号」について、命名登録申請を行う。さらに、宮城県古川農試に栽培試験を委託し、高品質・安定栽培法の確立を目指 す。

(6)重要病害虫に対する複合抵抗性を具備した大豆の優良新品種の育成
1)ダイズモザイクウイルス等病虫害抵抗性等大豆優良品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:ダイズモザイクウイルス抵抗性とダイズシストセンチュウ抵抗性を有して安定多収、高品質の系統育成を継続する。安定多収・高品質の「東北126号」の品種登録、命名登録を進める。

(7)水田環境における雑草の生態解明と制御・管理技術の開発 1)積雪寒冷地におけるノビエの動態解明と要防除水準の策定
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:タイヌビエの土壌中種子密度と発生数、発生数と残存量との関係を解析して、要防除水準を策定するための簡易なタイヌビエ動態モデルを作成する。

2)除草剤抵抗性雑草の生態的特性の把握と管理への応用
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:スルホニルウレア抵抗性イヌホタルイ種子の発芽特性と初期除草剤に対する反応を解明して、蔓延防止技術を開発する。

(8)水田病害虫の発生生態に基づく省資材型総合管理技術の開発
1)水田病害虫の発生生態、生理および薬剤反応性の解明
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:水田における重要害虫であるアカヒゲホソミドリカスミカメを対象に、その移動実態解明のため飛翔に関与する要因(温度、時刻、寄主植物等)を明らかにする。

(9)いもち病抵抗性機作の解明に基づく防除技術の開発
1)イネいもち病圃場抵抗性の評価法、遺伝解析、遺伝子の単離と機能解明
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:「農林29号」と「中部32号」の後代系統の中から、いもち病圃場抵抗性遺伝子近傍における組換体を選抜し、遺伝子領域の絞込みを行う。「コシ ヒカリ/Kasalath染色体断片置換系統」と「中部32号」のF2、F3系統から、大規模分離集団を選抜・養成し、遺伝子領域の高密度連鎖地図・物理 地図の作製に供する。3同質遺伝子系統―3菌系の組み合わせで作動するマルチライン用シミュレーションモデルを開発する。薬剤耐性菌を用いた切り穂噴霧接 種による穂いもち圃場抵抗性検定法を開発する。

(10)水田土壌環境の制御による効率的管理技術の開発
1)家畜糞堆肥等有機物資材に由来する窒素の動態解明
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:堆肥等有機物資材の長期連用試験における差し引き法や、重窒素標識牛糞堆肥を使用したトレーサー法により、有機物資材に由来する窒素の行方を明らかにする。また、窒素の安定同位体自然存在比の変異を利用する方法の適用可能性を検証する。

(11)省力水田営農のための高精度機械化生産技術の開発
1)減農薬のためのハイブリッド除草技術の開発
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:前年度に明らかとなった機械除草部の駆動力不足を解消するために、電気駆動からPTO駆動に変更する。また、除草剤の付着性を増すため、噴霧ノズルの再選定を行う。改良したハイブリッド除草機を用いて圃場試験を行い、有用性を検証する。

(12)高度機械化作業を軸とした輪作営農技術体系の開発
1)立毛間播種機の動作の安定化と多機能化
担当:東北農研センター総合研究部
研究計画:実用化された立毛間播種作業機について、作業精度・操作性の向上と多機能化を図る。播種機のアタッチメントとして立毛間播種栽培様式に適合する麦踏みローラを開発する。また、走行速度に応じた施肥播種量制御を行う。

3)寒冷地における畑作物の生態系調和型持続的生産技術の開発

(1)不耕起、緑肥、有機物等を活用した生態系調和型持続的畑作物生産方式の開発
1)自然循環機能を活用した畑作物作付体系の開発
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:不耕起栽培及びリビングマルチ(生物マルチ)栽培を中心とする作付体系において、作物の生育特性を解析し、省除草剤栽培法を確立するために雑草 の生態的特性を解明するとともに、持続的な減肥栽培法を確立するために圃場における養分収支を解析する。また、転換畑における畑作物の湿害回避技術に関す る研究に着手する。

(2)畑作物等の成分特性等の向上のための栽培管理技術の開発
1)野菜、地域植物資源に含まれる有用成分の解析と蓄積要因の解明
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:モデル植物を用いて、光条件、温度条件等の栽培環境条件とポリフェノール等の有用成分含有量の関係を解析し、有用成分の変動とその要因との関係 を解明する。さらに、コシアブラの促成栽培条件による有用成分の含有量の変動を明らかにするとともに有用成分を解析する。

(3)生物種間相互作用を利用した畑土壌病害虫制御技術の開発
1)生態系調和型畑作における土壌病害の防除技術の開発並びに線虫群集の特性解明
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:キャベツ萎黄病菌の病原性発現機構について遺伝子レベルで解析するとともに、病原性を喪失した菌株を利用したキャベツ萎黄病の防除技術を確立する。

(4)土壌動物・微生物相を利活用した畑土壌管理技術の開発
1)土壌動物の生物相制御・物質循環機能の評価と活用技術の開発
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:資材施用や耕起が畑土壌の繊毛虫及び微生物の量と組成に及ぼす影響を明らかにする。また、微生物相と作物生育との関係をモロヘイヤを用いて解析する。

4)寒冷地における野菜花きの安定・省力生産技術の開発

(1)寒冷地向け夏秋どり野菜有望系統の選抜に関する研究
1)エバーベリー・サマーベリーを上回る四季成り性イチゴ有望系統の選抜
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:果実の大きさ・食味等が既存の四季成り性品種「エバーベリー・サマーベリー」を上回る有望系統選抜のため、夏秋どりで生産力検定試験を実施する。また、「盛岡29~31号」の特性検定・系統適応性検定試験を実施する。

2)低シュウ酸ホウレンソウ系統の育成
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:シュウ酸含量が及ぼす温度の影響について予備試験を実施する。低シュウ酸の育種素材検索を行う。

(2)寒冷地向け野菜、花きの生理生態特性の解析及び栽培技術、作業技術の改良・開発に関する研究 1)夏秋期におけるイチゴの安定栽培技術の開発
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:短日処理によるイチゴの秋どり作型において、‘女峰’や‘さちのか’などの一季成り性品種を用いて、短日処理の花芽分化促進効果に及ぼす苗の生育ステージの影響について明らかにする。

2)露地野菜生産における省力作業技術の開発
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:減農薬のための農薬の条施用技術については、機械の改良を進め、農薬の土壌混合精度を向上させるとともに、肥料の土中局所施用技術の開発を試 み、土中局所施用機を試作する。また、標準セルトレイを用いてのネギの省力播種技術、水耕育苗技術を用いた省力・大量育苗技術に着手し、播種機、育苗装置 を試作する。

3)高リコペントマト系統の育成と栽培条件等による変動要因の解明
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:高リコペントマト系統の特性検定試験(1~2年目)を実施する。F1組合せ検定のための交配を行う。環境条件によるリコペン含量の変動についての予備試験を行う。

5)寒冷地における高品質畜産物の自然循環型生産技術の開発

(1)冷涼気候適応型牧草・飼料作物の生産機能強化技術の開発
1)牧草・飼料作物の寒冷地における持続型高位生産技術の開発
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:トウモロコシ栽培におけるシロクローバ・リビングマルチの雑草防除効果と窒素源としての効果を明らかにする。また、家畜糞尿堆肥の施用がトウモロコシ圃場の土壌理化学性および地温に及ぼす影響を明らかにする。

(2)牧草優良品種の育成及び次世代型育種法の開発 1)寒冷地域に適応する牧草優良品種の育成
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:転作田等で採草利用に適するフェストロリウム等牧草の系統育成を行う。具体的には、前年度に評価・選抜したライグラス類の個体及び系統を母本と して、種属間交雑や多交配を行い、優良形質を集積する。並行して、既存品種や遺伝資源を導入・収集し、それらの環境耐性を効率的に評価するための基礎的試 験に取り組む。

(3)自給貯蔵飼料の栄養成分・消化性並びに品質安定性向上のための調製技術・品質評価法の開発 1)新飼料資源の調製・貯蔵特性及び家畜の消化特性解明と飼料の簡易評価
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:自給粗飼料源として有望な飼料作物や飼料イネのサイレージ発酵・貯蔵特性の比較並びにサイロ開封後の好気的変敗抑制乳酸菌の有効な添加方法を開発する。

(4)草林地複合植生地帯における家畜放牧機能強化技術の開発
1)寒冷地放牧草地の植生管理及び放牧利用法
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:家畜の放牧圧等が野草地植生の動態に及ぼす影響及び、肥料と土壌改良資材の施用バランスに着目した草地植生の維持回復法、植生の異なる分散草地における繁殖牛の効率的放牧法を検討する。

(5)耕草林地利用による放牧等の粗飼料利用性に優れた家畜の育種繁殖技術の開発
1)家畜卵胞内卵子の有効利用システムの開発
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:ウシ卵子の安定的な採取技術を確立するために、生体内卵子吸引方法を開発する。さらに、卵子採取の高度化のために卵子の採取効率に及ぼす影響を解明する。

(6)自給飼料を高度に活用した家畜の飼養管理技術の開発
1)飼料用イネを活用した肉用牛生産技術の開発
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:食用米と識別が容易で稲発酵用飼料として使いやすい新品種(羽系668-5)の大粒種について、肥育牛に給与した場合の栄養特性を解明する。

2)牛における微量生理活性物質が乳肉生産および内分泌機能に及ぼす影響
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:家畜の栄養水準の変動が産乳、産肉制御ホルモン分泌機能ならびに脂質・糖代謝に及ぼす影響を明らかにする。また、機能性タンパク質の給与と内因性微量生理活性物質の発現の関係を調査する。

(7)地域資源を高度に活用した畜産物の品質制御技術の開発
1)牛肉の硬さ及び風味を制御する因子の解明
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:牛肉の熟成に関係するタンパク分解酵素の遺伝子多型を探索し、その変異と酵素機能との関係を解明する。また、放牧した牛から得られる牛肉のフレーバー成分を分離同定し、牧草給与の影響を明らかにする。

(8)放牧地を含む畜産環境の総合的管理技術の開発
1)飛来性家畜害虫の加害様式の解明
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:ブユが家畜に与える被害を軽減するため、ブユの家畜への飛来量を気象要因との関連で調査するとともに、飛来により家畜が受けるストレスを家畜の忌避行動の調査により明らかにする。

6)地域産業創出につながる新形質農産物の開発及び加工・利用技術

(1)小麦の寒冷地向け高品質、早生・安定多収のもち性等高付加価値品種の育成
1)早生・安定多収のもち性等新用途小麦系統の選抜
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:製粉性、粉色が良く、加工適性が優れたもち性小麦系統を選抜する。また、中華めん適性上重要なめん色の系統間差異を調査し、めん色の優れた系統を選抜する。

2)新形質小麦系統のブレンドによる製パン適性の安定化技術
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:もち性、低アミロース、高蛋白等の新形質小麦品種・系統とパン用品種・系統のブレンドによる、製パン適性の高位安定化技術の開発に取り組む。

(2)大豆の低アレルゲン等高付加価値品種の育成
1)大豆の青豆等高付加価値品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:低アレルゲン、リポキシゲナーゼ欠失、サポニン変異等の新規形質を有した系統の農業特性、品質特性を明らかにして、新規形質品種の開発を目指した選抜を進める。早熟・青大豆の「東北141号」の品種登録、命名登録を進める。

(3)なたね、はとむぎ等資源作物の新品種育成
1)良質・多収ななたね、はとむぎ、そば等資源作物の新品種育成
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:早生で無エルシン酸のなたね「東北90号」、「東北91号」、「東北92号」、早生で多収のはとむぎ「東北3号」について、生産力検定試験を実 施し、収量・品質・耐病性等を検定する。また、県農試において優れた成績を示した系統は命名登録及び品種登録申請する。そばについては、選定した母本間で 交配する。

(4)地域畑作物の先端手法による品質評価・向上技術の開発 1)酵素処理等による穀類微量元素の動態分析
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:主要穀類について、酵素等で処理し、その際に発生する微量元素の動態を、ICP-MSを用いた分析によって解明する。

(5)生物工学的手法等を活用した畑作物機能改良技術の開発
1)細胞及び遺伝子操作手法を用いた畑作物の機能改良及び利用技術の開発
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:ダイズの遺伝子導入系の効率化を進めるとともに、コムギの加工品質に関与する有用遺伝子の発現を同定するためのシステムを開発する。

(6)雑穀類の機能性及び加工適性の解明
1)雑穀類の免疫機能に及ぼす影響の解明
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:雑穀類を摂取することによる免疫調節機能への影響を、物実験により評価する。また、ハトムギのラジカル消去活性を評価し、含まれる抗酸化物質を検索する。

(7)地域農産物の特性評価及び品質保持・利用技術の開発
1)東北地域農産物の新機能性検索と用途開発
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:色素米、菜類等の生理機能性検索を継続して行うとともに、動物実験により酸化ストレスマーカー物質の動態が作物の抗酸化成分によって改善されるか否かの証明実験を実施する。

2)食物アレルギー発症機構の解明
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:コムギアレルゲン蛋白質の多形性(polymorphism)の解析を開始する。すなわち、多数のコムギ遺伝資源を収集分析することによって、アレルゲン蛋白質の含有量の差異、一次構造の多様性(多形性)について検討する。

(8)麦類、大豆及び資源作物遺伝資源の特性調査と再増殖
1)小麦グルテニンサブユニット構成およびはとむぎブレンド麺適性の調査
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:高分子グルテニンサブユニット構成について、小麦育成系統を中心に調査し、品質関連形質との関連を解明する。はとむぎ「東北3号」のブレンド麺を試作する。

7)やませ等変動気象の特性解析と作物等に及ぼす気象影響の解明

(1)やませ地帯の気象変動機構の解析及び気象-作物生育反応の解明
1)やませ等によりもたらされる冷涼気象特性の解明
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:斜面方位など地形因子の違いによってもたらされる、やませ吹走下での地域的な気象特性を解明する。

(2)作物の冷害等温度ストレス発生機構及び環境適応機構の解明
1)作物の冷温障害発生機構の解明
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:作物の生殖器官を中心に冷温ストレス反応を細胞生理学、生化学および分子生物学的に解析することにより発生メカニズムを解明し、耐冷性向上に向けた分子的基礎を明らかにする。

8)やませ等変動気象下における農作物の高位・安定生産管理技術の開発

(1)情報技術の活用による水稲冷害早期警戒システムの高度化
1)冷害に伴ういもち病発生予測技術の高度化と水稲冷害早期警戒システムの高度化
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:気象、水稲生育等の各種デ-タを解析対象にして、広域的かつ実用レベルの高精度を有するいもち病発生予測技術を開発すると共に、低温被害予測モ デルの開発ならびにいもち病の発生予測情報の高度化を進め、水稲冷害早期警戒システムをより総合的かつ実用的なものに改良する。

(2)環境制御技術及び作物の環境適応機能利用による環境低負荷型生産管理技術の開発
1)土壌環境の好適化と根圏環境の制御による高品位作物生産技術の開発
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:機能性成分の増加等、作物を高品質化する土壌環境制御技術を開発する。また、土壌-作物間の物質動態および物質の作物への影響を安定同位体等を用いて検討すると共に土壌環境センシング技術の開発を図る。

(3)病害虫を中心とする農業生態系構成生物の動態解明と管理技術の開発
1)東北における発生予察、抵抗性品種を核としたいもち病等病害の総合防除技術の確立
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:イネ葉いもちを対象に、シミュレ-ションモデルを利用した農薬散布要否意思決定支援ソフトを開発する。また、コムギ縞萎縮病の防除のため、抵抗 性品種育成の基礎となる、小麦品種・系統等の抵抗性とコムギ縞萎縮病ウイルス病原性系統との相互関係を評価する研究を開始する。

2)導入天敵を利用したアブラナ科植物の減農薬害虫管理技術の開発
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:コナガの導入寄生蜂セイヨウコナガチビアメバチの生産効率を増殖技術の改良等によって倍増させる。

(4)中・長期的気象変動に対する農作物生産力の変動予測及び生産技術体系の評価
1)CO2濃度及び温度上昇に対する作物の適応機能の解明と環境適応型生産技術体系の評価
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:近い将来に予測される高濃度CO2環境下で作物生産力を効率よく高めるために、温度・施肥量・品種等との関係を考慮して高濃度CO2に作物が順 化・適応する過程を定量的に解明する。この結果を踏まえて、今後の気象変動に適応しかつ持続的な生産を実現するための技術体系シナリオを構築する。

 

F 近畿中国四国農業研究

1)近畿・中国・四国地域の農業の動向予測と農業振興方策の策定並びに地域資源を活用した中山間地域営農システムの開発

(1)地域農業情報の処理法及び有効利用システムの開発
1)近畿中国四国地域地図情報のデータベース化と地形特性の把握
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:近畿・中国・四国地域の中山間地域を対象として作成されたデジタルオルソ画像及び標高データを様々なGISソフトで相互利用するための変換法を開発し、データの汎用化を図る。また、それらのデータに基づいた詳細メッシュを用いて地形特性を解析する。

(2)地域農業の動向予測
1)2000年センサス分析による近畿・中国・四国地域における農業担い手の動向予測
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:分析の基礎として、1990年、1995年、2000年の3回分の農業センサス個票を連結し、動態分析を行うためのデータベースとして変換作業 を行う。これをもとに近畿・中国・四国地域における専兼別世帯主年齢別等の構造動態表を作り、これまでの研究成果と併せて、近畿・中国・四国地域における 農家単位での農業担い手の構造動態モデルを開発する。

(3)都市近接性中山間地域における開発技術の評価及び高収益営農方式の解明 1)中山間地域における集落営農組織の管理・運営方式の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:中国中山間地域の集落営農組織を対象とする実態調査により、各作業への対応方式や出役体制の特徴と成立条件、収益の配分方式とそのあり方、及び法人化が組織の管理・運営に及ぼす影響を明らかにする。

(4)園芸作における新技術の経営経済的評価と先進的営農方式の解明
1)園芸作における担い手構造の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:近畿中国四国地域を中心に園芸作(野菜経営・カンキツ経営)農業労働力の保有・利用状況の特徴を2000年農林業センサス等の統計データから明らかにする。また、園芸作を中心にみられる新規参入の実態とその成立条件を解明する。

2)高品質ミカン生産技術の経済性評価と営農モデルの策定
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:高品質ミカン生産技術(周年マルチ点滴かん水同時施肥法)導入によるミカンの収量、品質向上効果を把握するとともに、コストの精査をはかり、新 技術の経済性を検討する。さらに、数理計画法等を用いて、新技術を導入したカンキツ作経営モデルを策定し、経営評価を行う。

(5)地域資源を活用した農業の活性化条件の解明
1)中山間地域における多面的交流活動の評価モデルの開発
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:広島県芦田川流域を事例対象地区として、地域内の観光農園や産地直売所等における多面的交流活動の連携効果を、ネットワーク分析の手法等を用い て人・もの(農産物・加工品等)・情報の3つの観点から多面的交流を捉え、農村地域活動の連携効果の評価モデルを開発する。

(6)中山間小規模産地に適した生産・地域流通システムの確立 1)近畿中国地域における契約による農産物生産販売の特徴解明
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:近畿中国地域では都市近接性を活かした生産流通システムの一つとして、契約による農産物生産販売が今後重要になる。そこで、近畿中国地域内にお ける農産物の契約生産販売の実態を、アンケートや聞き取り調査等によって明らかにする。また、契約の形態、内容、機能などから契約生産販売の類型化を行 い、類型ごとの特徴を整理、分析する。

(7)高品質化のための土壌管理技術を導入した中山間カンキツ園の軽作業システムの確立
1)中山間カンキツにおける高品質果実生産技術の体系化と営農システムの確立
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:カンキツ樹のマルドリ方式における施肥反応や水分消費特性等を明らかにし、適正施肥や潅水指標を策定して、マルドリ方式を体系化する。また、マ ルチ敷設程度などと降雨・土砂流亡特性のデータ集積や法面侵食防止技術の適用幅を広げるなど、園地整備技術を確立し、生産現地への技術導入の適正条件の評 価と提示を進めることで営農システムの確立を図る。

(8)傾斜地域資源を活用した集約的野菜・花き生産システムの確立
1)傾斜畑野菜産地の営農実態把握と平張型傾斜ハウスの導入
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:徳島県三加茂町の新規営農試験地における農業生産、営農実態の特徴と課題、今後の意向等を調査し、傾斜畑野菜産地における農業の展開方向を明ら かにする。また、気象条件や地形条件及び農家の意向を踏まえ、平張型傾斜ハウスを導入し、野菜等の高品質栽培技術開発のための夏秋期野菜栽培試験を行う。

(9)中山間地域における害虫総合防除等による高品位野菜生産技術システムの確立
1)有機・減農薬野菜栽培圃場での害虫発生実態の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:安全で安心な野菜生産を目指す有機・減農薬の栽培では、虫害により生産が不安定となっている。そこで、アブラナ科野菜の中でも害虫が多いとされ るコマツナを対象に、年間を通して害虫の発生を調査する。発生実態から、生産者の虫害対策検討に役立てられるよう、害虫の写真や生活史情報を加えた「害虫 発生暦」を作成する。

(10)中国中山間地域における遊休農林地活用型肉用牛営農システムの確立
1)遊休農林地を活用した複数の放牧モデルの提示とその波及効果の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:遊休農林地を放牧利用した複数の和牛飼養モデルを、実態調査を踏まえて構築し、その普及がもたらす波及的効果を、輸入飼料の節約・自給飼料の増加、農用地資源管理の省力化等の面から検証する。あわせて、一層の普及定着のための支援策を提示する。

2)傾斜地農業地域における地域資源の利用、及び農地管理・安定生産技術の開発

(1)傾斜地域の土・水機能の特性解明及び地域特性に適合した小規模整備管理技術の開発
1) 傾斜地圃場が持つ機能性を考慮した管理手法の検討
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:中山間傾斜地の圃場の整備・管理技術および基準の確立に向け、圃場特性に応じた安全性、作業性から見た進入路、圃場形状の設計手法、放棄地の保全・利用面から見た管理手法、ため池等の保全面から見た圃場排水手法などの検討を行う。

(2)傾斜地域における土地利用、地形解析及び農地の防災機能向上技術の開発
1)地盤情報の調査・解析技術を用いた防災機能向上のための要素技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:土地利用・管理現況と斜面災害発生実態の調査を実施し、農地利用・管理状態の変動機構を整理する。また、画像解析を用いた流速測定法及び水面画 像を用いた流量測定法について、精度向上のための手法改良を行う。さらに、傾斜地農地の地震時挙動予測を行い、被災農地における事後管理が果たす防災機能 の復元性を評価する。

(3)傾斜地域における土・水・生物資源の機能解明による省力・低負荷型管理技術の開発
1)四万十川清流保全のための低環境負荷型農業生産方式の提言
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:前年度までに確立した起源別窒素負荷量推定モデルを活用し、四万十川最大支流のひとつであるN川流域について、窒素負荷排出特性を評価するとと もに、農家経営や行政、さらには農家意識などの諸条件を考慮しつつ、現地に最も適した低環境負荷型生産方式のあり方を提言する。

(4)傾斜地における局地気象発生条件の解明
1)傾斜ハウス内環境の解明と予測モデルの作成
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:傾斜ハウス内の環境を解明し予測するため、傾斜ハウス内での気温などの内部環境を明らかにするとともに、密閉した任意の大きさを持つ傾斜ハウス 内での不均一な環境を予測するシミュレーションモデルを、ハウス内中央部での気温の誤差を数°C以内を目標として開発・作成する。

(5)傾斜地域における軽労化作業技術開発のための要素的作業技術の開発
1)急峻傾斜地カンキツ作における軽作業化システムの開発
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:急峻傾斜地カンキツ園における労働負担の少ない管理作業を実現するため、狭幅作業道導入による栽培管理作業の省力・軽作業効果の調査、およびモ ノレールと狭幅作業道を組み合わせた園での薬剤散布作業の軽作業化効果を評価し、要素的作業技術の組み合わせによる軽作業化システムを検討する。

3)高付加価値化、軽労化等に対応した作物の開発及び高品質・安定生産技術の開発

(1)高付加価値化、軽労化等に対応した作物開発のための分子マーカー及び遺伝子組換え体の開発
1)小麦、大豆等の品質改変及び抵抗性に関わる遺伝子の解析と導入
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:小麦の品質改変としては、日本小麦の生地物性に関わる蛋白質及び遺伝子を探索し、DNAマーカー化する。豆類についても、有用形質に関わる DNAマーカーを開発する。また、大豆等の豆類へ子実害虫抵抗性やアミノ酸合成遺伝子を導入することにより、新規種子成分素材を開発する。

(2)高付加価値化、軽労化等に対応した水稲品種の開発
1)温暖地西部向き新形質米品種の育成
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:新形質米品種の育成については、平成13年度品種登録出願を行った良食味の低グルテリン系統「中国173号」の命名登録申請を行うとともに、他 機関との共同研究等により易消化性蛋白質の少ない良食味米としての利用法の検討を行う。また、より易消化性の蛋白質含量が低い系統の選抜を行う。

(3)温暖地西部向け高品質・早生小麦品種の育成
1)色相を改善した温暖地西部向け早生小麦品種の育成
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画::温暖地西部向け小麦品種の育成としては、色相改善と早生化を主目標に約200組合せの交配、約400系統の生産力検定を行い、新配付系統を選 抜する。また、農林61号より熟期が5日早く、ミリングスコアが2ポイント、製めん評点が6点高い、色相の優れる小麦系統「中国146号」の命名登録を行 うとともに種子を増殖する。

(4)高品質多収裸麦品種の育成
1)裸麦の早生耐倒伏良質多収品種の育成
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:強稈性、多収、高精麦適性を重視した50~70組合せの交配を実施する。系統育種法および集団育種法により選抜、育成を進める。生産力検定予備 試験に約180系統、同予備試験に約120系統、生産力検定試験に約30系統を供試する。四国裸100号~107号の品種化を目指し、圃場および精麦品質 関係のデータを蓄積する。

(5)温暖地向け高品質・多収・機械化適性大豆系統の開発
1)温暖地向け豆腐用高蛋白質・多収・機械化適性大豆系統の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:温暖地水田転換畑向け豆腐用高蛋白質多収大豆系統の開発としては、高蛋白質かつ多収性を重視した約20組合せの交配を実施するとともに、転換畑 において集団育種法及び系統育種法により選抜を進める。また、突然変異育種に関しては、M2集団の中から原品種のフクユタカより1週間以上早生化した個体 の選抜を実施する。

(6)水稲・大豆の生理生態特性の解明及び高品質低コスト安定栽培法の開発
1)乾田直播栽培における早期入水、浸種処理及び高窒素含有率種子播種による出芽・苗立ちの安定化
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:除草剤散布回数を慣行より低減するために、入水時期と雑草発生量との関係を明らかにする。また、早期入水を行った場合でも慣行並みの苗立ち率を確保するために、高窒素含有種子、浸種、走水の処理が苗立ちに及ぼす影響を明らかにする。

(7)高付加価値化、軽労化等に対応した機械作業技術の開発
1)大豆の不耕起栽培作業技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:不耕起播種機を用いた湿害軽減効果、鳥害防止効果の2年目の評価を行うとともに、緩効性肥料を用いた全量基肥栽培と不耕起播種栽培を組み合わせて追肥、除草作業が省略可能な大豆栽培法を検討する。

2)黒色再生紙マルチ直播シートを利用した水稲直播栽培技術の確立
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:地域総合研究で開発した無着色シートによる栽培湛水による浮き上がりを回避するため、水稲の根が伸張する約2週間後までは乾燥しないように表面 水の補給程度に保っており、これが鳥による種子の食害及び強風によるシートの剥離を招いている。そこで、土壌との密着性が高く敷設1日後に湛水可能な黒色 シートの有効性を明らかにし、技術の普及拡大を図る。

(8)地域ニーズに対応した主要穀類の高品質・高付加価値化技術の開発
1)穀類の品質特性に関与する澱粉関連成分等の解析
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:米について、アミロース含量の異なる品種系統を用いて、粘性多糖の量的な差異を解析するとともに、複数存在することを確認している呈味性をもつ 複合蛋白質の種類と量的な差異を解析する。また、小麦等他の穀類についても、アミロプラスト膜構成脂質等加工特性に関与する成分の特性を解析する。

4)傾斜地農業地域における果樹、野菜、花きの高品質安定生産技術の開発

(1)傾斜地果樹園に適応する高品質・安定生産技術の開発
1)隔年交互結実栽培法におけるカンキツの生理生態的特性の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:温州みかんを用いて着果の有無が光合成、樹体養分に及ぼす影響を明らかにするほか、夏肥Nの多少の果実品質への影響と夏肥Nの樹体中への配分割合を明らかにする。

(2)地域特産野菜、花き等の高品質・安定生産技術の開発
1)耐病性品種と薬剤防除手法を組み合わせたレタスビッグベイン病防除体系の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:レタスビッグベイン病に対する耐病性品種の病徴発現の作期変動を明らかにし、品種抵抗性による防除効果が不十分な作期については最小限度の薬剤使用を組み合わせることで、当面、最大限の防除効果が実現できる防除体系を開発する。

(3)病原ウイルスの特性及び発病・流行機構の解明
1)レタスビッグベイン病に関わる2種ウイルスの相互作用の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:ビッグベイン症状のレタスから検出されるレタスビッグベインウイルス及びMirafiori lettuce virus(MiLV)が本病にどのように関わっているのかをウイルス感染・増殖特性の解明を通じて病徴発現との関係から明らかにする。また、そのために 必要なMiLVの抗血清を早期に作製する。

(4)果樹、野菜等の環境に配慮した持続的生産技術の開発
1)有機質肥料の窒素利用効率の高い作物、品種の抽出、及び肥料の形態(有機と化成)が作物品質に及ぼす違いの解明
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:米ぬか・イナワラ等の有機質資材中の窒素の利用効率の高い作物・品種を圃場試験、及び15Nを用いたポット試験によって抽出する。また、有機質 資材施用区と化成肥料施用区において収穫された作物品質の違いを、糖度、酸度の測定、アミノ酸分析等により明らかにする。

5)地域産業振興につながる新形質農作物及び利用技術の開発

(1)新形質農作物の開発
1)ヤーコンの高品質・多収系統の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:ヤーコンは機能性の根菜として注目されるようになった。食材としては、高機能性よりも、食味、外観品質の向上、貯蔵性が重要な要素となる。多収 性で選抜した系統について、良食味・良質性を重視した選抜を行う。外観品質の優れたSY206の品種登録を出願する。

(2)地域農作物の機能性解明及び利用技術の開発
1)褐変に関与する大麦成分の分画
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:大麦糠に含まれる成分を抽出・分画し、大麦粉ペーストに添加して加熱による色相への影響を調べ、褐変に促進的あるいは抑制的に作用する画分をさ らに分画する。また、プロアントシアニジン欠損系統を中心に粗ポリフェノール画分の分析を行い、褐変しにくい系統に共通する成分があるか否か調べる。

6)都市近接性中山間地域における野菜の安定生産技術及び高品質化技術の開発

(1)高付加価値野菜の安定生産技術の開発
1)高機能性野菜生産のための栽培技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター野菜部
研究計画:周年的に栽培されるコマツナを対象に、栽植間隔、被覆方法、施肥条件などの栽培管理法の違いがビタミンCなど機能性成分量に及ぼす影響を調査 し、これを一定値以上に保つための条件を明らかにする。また、有害成分である硝酸含量を一定値以下に保つための条件を明らかにする。両者の関連において、 安全性と品質を保証する方策を提示する。

(2)高齢化に対応した野菜の養液栽培技術等の開発・改良
1)形状記憶合金(SMA)バネを使用した簡易栽培施設の環境調節技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター野菜部
研究計画:トンネル等小型簡易被覆の換気を省力的に行うため、形状記憶合金バネによってトンネル被覆材の開閉を自動化する機構を開発する。既往の成果とし て、高温によって縮むバネの特性を活かしたトンネル被覆材の開放機構が開発されているが、本研究ではバネに適度な加重を与えることで、温度低下に伴い自動 的にトンネル被覆材を閉鎖する機構を付加させる。

(3)塩類集積が野菜の代謝に及ぼす影響の解明、微生物を利用した塩類集積土壌の診断技術の開発
1)土壌細菌群集構造の変動に及ぼす肥料・有機物の影響の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター野菜部
研究計画:土壌細菌群集の構造を明らかにするため、新たに作製した2種類のプライマーを用いて、ダイレクトPCRによるDGGE解析を行うためのPCR増 幅条件およびDGGE解析条件を検討する。また、細菌群集の多様性の評価法を検討する。これらの解析手法を用いて、肥料や有機物の施用が土壌細菌群集構造 の変動に及ぼす影響を明らかにする。

7)野草地等の地域資源を活用した優良肉用牛の低コスト生産技術の開発

(1)肉用牛の遺伝的能力の評価法及び繁殖機能制御技術の開発
1)母系側からの育種改良に利用できるウシ・ミトコンドリアDNAマーカーの検討
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:ウシ11品種68頭のゲノムDNAを用い、LA-PCR法により大部分のミトコンドリアDNA(mtDNA)を増幅し、コーディング部分の RFLP解析と高変異部位の塩基配列を決定する。両者の変異性を比較検討し、母系ラインマーカーとしてmtDNAのどの部位が適切か、解析手法と合わせ検 討する。

(2)シバ等の地域資源の飼料特性の解明及び食品工業副産物の有効利用技術の開発
1)トウフ粕給与時の血液・ルーメン液解析と酵母の人工消化法による栄養評価
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:トウフ粕の簡便な保存方法を確立するとともに、肉用牛に給与時の血液・ルーメン液を解析して、その飼料価値を評価する。また、酵母の種類(清酒酵母、乳製品由来酵母)、酵母の状態(生、乾燥、粉砕処理の有無)の違いをin vitro法で調査する。

(3)肉用牛の育成・肥育における遺伝的能力・飼料成分等の影響の解明及び肥育技術の開発
1)黒毛和種におけるミオスタチン遺伝子ノックアウトベクターの作製および脂肪蓄積関連遺伝子の発現解析
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:クローン化に成功したミオスタチン遺伝子の相同領域を基にしてミオスタチン遺伝子のノックアウトに必要なベクターの作製を行う。また、腰最長筋における脂肪蓄積関連遺伝子の発現量と脂肪交雑との関係についても解析を行なう。

(4)シバ型草地等の植生構造及び野生ヒエ類の自然下種繁殖特性の解明
1)放牧と林床環境が下草の群落構造に及ぼす影響の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:疎開林への放牧において、放牧牛の諸行動(採食、踏圧等)と林床の環境要因(相対照度、土壌水分、リターの存在等)が、シバを含めた林床植生の群落構造に与える影響を明らかにする。

8)都市近接性中山間地域における持続的農業確立のための生産環境管理技術の開発

(1)生物資源の利用と病害の発生特性に基づく省農薬・環境保全型病害防除技術の開発
1)水稲苗腐敗病に対する拮抗微生物の発病抑制能検定法の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:湛水直播栽培で発生するピシウム菌による水稲苗腐敗病の発病を抑制する拮抗微生物の抑制能を検定する手法を開発する。これに基づき各種土壌等から発病抑制効果の高い拮抗微生物の選抜を行う。

(2)天敵等による害虫防除法の開発と難防除害虫の省農薬・環境保全型防除技術の開発
1)トマトハモグリバエの生活史特性の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:トマトハモグリバエの発育日数、発育零点、有効積算温度など、発育に関わるパラメーターを近縁種であるマメハモグリバエと比較する。これらを用 いてシミュレーションモデルによる防除適期の解明に着手する。また、主要寄主植物における発育日数やトマト主要品種間における産卵数の違いを明らかにす る。

(3)イノシシ等野生動物の行動及び生態の解明と被害防除に関する技術開発
1)イノシシの行動から見た既存防除技術の問題点とその解析
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:イノシシによる農業被害対策の効果を高めるため、被害調査とともにイノシシの侵入方法について詳細なデータを収集する。200カ所を目標に、島 根県内の被害現場でイノシシの侵入痕跡を調べ、農地へのイノシシの侵入過程を分析する。それに基づき、既存防除技術について、不備や改良点、また優れた点 を整理し、評価を行う。

(4)有機資源の利用に基づいた環境保全型土壌管理技術の開発 1)転換畑における堆肥施用が脱窒活性に及ぼす影響の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:ポット条件下および転換畑で堆肥を施用し、デントコーンを栽培して土壌の脱窒活性と地下水の硝酸濃度を測定する。これらから得られる結果をもとに、硝酸性窒素の負荷軽減に果たす有機物施用と地下水位の影響を解明する。

(5)複雑地形下の気候資源の評価と利用に関する研究
1)リモ-トセンシング技術を活用する気温分布図作成法の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:熱画像をモザイク化して作成した広域の地表面温度分布を、地表被覆の種類や地形で大きく変化する地気温差で補正して、空間分解能が高く、推定精度も高い気温分布図を作成する手法を開発する。

(6)植生を利用した畦畔等の生物学的雑草管理技術の開発
1)畦畔における被覆植物の土壌保全機能の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:被覆植物の斜面における根の伸長特性および根の発達による土壌の締め固め作用を明らかにするとともに、被覆植物を植栽した畦畔法面における表土 流出量の解析から、畦畔法面の崩壊防止および侵食防止機能の高い被覆植物種を選定し、植生を利用した畦畔法面保護技術を開発する。

 

G 九州沖縄農業研究

1)九州・沖縄地域の立地特性に基づく農業振興方策及び水田・畑作・畜産における省力・環境保全型・持続的地域農業システムの確立、並びに沖縄など南西諸島農業における持続的農業システムの確立

(1)担い手等の地域農業構造の解析と平成22年までの農業動向の予測
1)畑作地域における担い手等の農業構造の動向解析
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:農業動向の予測の前提となる条件を確定するため、現地実証試験対象地域における農業の展開方向に対する農業関係機関の将来意向を把握する。また これらの将来意向に、前年度に行ったトンネル敷設撤去技術等に対する農家の意向調査結果を併せて技術開発ニーズを整理し、新技術の地域への導入条件を明ら かにする。

(2)水稲ショットガン直播等の開発技術の経営的評価と営農モデルの策定及び開発技術定着のための地域的支援方策の解明
1)開発技術の経営的評価と営農モデルの策定
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:水田作では作期拡大を目的とした新技術(品種)の導入による気象変動リスク軽減効果の評価を行うため、農繁期移動を考慮した稲麦大豆作経営モデ ルを策定する。また畑作では新技術導入の経営的評価における比較対照として、慣行技術に基づいた甘しょ+露地野菜作経営モデルを試作する。

(3)複合経営等における労働力等経営内外資源を有効利用した経営モデルに基づく経営展開方式の解明
1)水田作経営における複合化効果の解明と繁殖牛の最適規模拡大計画モデルの策定
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:早期、普通期、直播(および対応適品種)による米価変動の差異を組み込んだ水稲作経営モデル分析により作期・栽培様式別の最適作付面積を提示す る。また、繁殖牛増頭計画モデルでは、素牛購入・子牛販売のタイムラグを考慮した予測価格を設定し、実現値による検証を行うことにより精度向上を図る。

(4)地場農産物直売所等による地域農業の組織化と行政等による支援システムの解明、及び堆肥等の流通構造の解明と農業情報処理手法の開発
1)地場農産物直売所の波及効果の解明
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:行政、JA、農家グループ等が地場農産物直売所を設置したことによって派生する地域農業への多様な波及効果をフローチャート化して定量的に把握する。

(5)水田高度輪作体系における暖地適応型水稲直播栽培技術を核とする省力・省資材・安定生産技術システムの確立
1)水稲代かき同時土中点播機の汎用利用技術を活用した水田輪作体系の組立て
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:播種機の一層の高精度化と播種同時作溝、兼用化のための播種ロ-ルの改良を行う。また、この改良機を用い、水稲・麦・大豆の2年あるいは3年輪 作体系確立に向け、水稲の播種晩限、大豆の熟期の前進化、小麦の早・晩播種技術を検証し、対象作物及び作期に対応した合理的栽培管理技術を開発する。

(6)暖地畑作地帯における持続的農業を目指した省力・安定生産システムの確立
1)暖地畑作物体系における環境負荷のLCA評価と環境負荷低減方向の解明
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:主要作物としての甘しょ、露地野菜、飼料作物のインベントリ分析結果に基いて、環境保全型技術の改善方向を示す。

(7)アンモニア回収型高品質堆肥化技術、成分調整成型堆肥の生産・利用技術、及び地域バイオマスのエネルギー化等利用技術の開発
1)成分調整堆肥の生産・利用技術を基幹とした耕畜連携営農システムの開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:成分調整堆肥の生産・加工システムの設計仕様を明らかにするとともに、システムのコスト試算を行う。また、堆肥脱臭技術を開発するため、出来上がった堆肥による堆肥化過程で発生する悪臭の吸着能力を高めるための基礎的技術要因を明らかにする。

(8)沖縄地域における高収益複合営農の確立のための、ばれいしょ及び新規野菜・花きの導入及び安定栽培技術の開発
1)亜熱帯環境条件下での野菜・花きの生育反応の解明
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:イチゴ、ユーチャリスにおいて確立した基本的な花芽分化促進技術、定植後の栽培技術の導入可能性について沖縄の現地農家ほ場で実証し、技術の安定化条件を解明する。

2)暖地水田作地帯における基幹作物の生産性向上技術の開発

(1)水稲の晩播適性の高い直播用良食味品種、暖地向け新規形質品種及び複合抵抗性良食味品種の育成
1)水稲の直播栽培における苗立ち特性検定技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:暖地での直播栽培の普及には、安定した苗立ち特性を有する直播品種の育成が不可欠である。そこで、直播栽培での苗立ち特性を効率的に評価するための検定技術を開発する。

(2)暖地向け稲発酵粗飼料用イネ品種の育成及び栽培・利用技術の開発
1)飼料稲のサイレージ品質改善のための調整技術及び牛への給与技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:刈り取り時期、調製法の改善等による飼料稲サイレージの品質向上及びその飼料特性を明らかにし、乳牛への最適給与技術を開発する。

(3)暖地向け高品質・早生小麦品種の育成と作期前進化栽培技術の開発
1)高品質・早生小麦品種の育成と赤かび病抵抗性品種・系統のスクリーニング及び品質・収量の安定化技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:早播き栽培の西海185号については引き続き早播き栽培において製粉性・製めん適性の評価等を行う。また、高品質・早生系統の開発と地域適応性 の評価を行うとともに、赤かび病抵抗性品種・系統のスクリーニングに着手する。さらに蛋白質含量の適性化や安定多収のための施肥管理技術、難防除雑草制御 技術を開発する。

(4)高精麦特性を備えた焼酎醸造用及び食糧用の二条大麦品種の育成
1)高精麦二条大麦系統の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:白度が50%以上で、欠損粒が5%以下の食用及び味噌用の高精麦系統を開発する。また、白度や欠損粒の産地・年次間変動要因を明らかにする。

(5)温暖地・暖地向け高品質大豆品種の育成
1) 地域のニーズに対応した納豆用小粒大豆品種ならびに青大豆品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:納豆用小粒大豆品種ならびに青大豆品種の、命名登録申請ならびに普及に必要な栽培特性を解明し、九州内での普及を目指す。

(6)耐倒伏性を強化した温暖地・暖地向けハトムギ及びソバ品種の育成
1)耐倒伏性を強化した中生ハトムギ品種の有望系統の育成
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:ハトムギの難脱粒性および葉枯病耐病性を具備した暖地・温暖地に適する中生有望系 統を育成する。生産地において、適当な機関(普及センター・JAなど)を選定し、系統適応 性を検証する。

(7)高温・多湿条件下における水稲・麦類の物質生産機能の解明及び生育制御モデルの開発
1)暖地水田作における水稲及び小麦の生育診断指標と生育量との関係の定量化
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:水稲については節位別器官長の変化と層位別の葉面積・相対照度との関係を、小麦に ついてはデジタルカメラ画像による植被率と生育・収量との関係を、それぞれ定量的に明らか にし、生育診断と生育改善に利活用できる基礎資料とする。

(8)稲・麦・大豆を基幹とする水田輪作体系における窒素動態を主にした地力変動等の解明と環境負荷軽減型の土壌・施肥管理技術の開発
1)水田の輪換利用及び有機物連用に伴う地力変動の解明と減肥率判定技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:異なる作付け体系において、地力評価のための幾つかの指標について継続検討し、ま た輪作体系で生ずる落葉や収穫残査鋤込みからの窒素放出量を継続調査し、跡地土壌の地力評 価と減肥率との関係を解明する。

(9)暖地汎用化水田における雑草の生理・生態の解明及び低投入型雑草制御技術の開発
1)除草剤抵抗性雑草等難防除化雑草の発生特性の解明と防除技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:除草剤抵抗性雑草や水稲直播栽培の乾田期間に多発する田畑共通雑草等の難防除化し た草種について、発生に関わる特性を解明するとともに、有効除草剤等の選定を行い、防除技 術開発のための指針を得る。

(10)暖地水田輪作における基幹作業の省力・軽作業・高精度化技術の開発
1)精密肥料散布技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:環境負荷低減のための資材投入量の適正化技術として、小麦の生育マップを作成する とともに、マップに従って施肥を行う可変施肥技術を開発する。

3)暖地畑作地帯及び南西諸島における持続的作物生産技術の開発

(1)青果用、加工用、でん粉原料用など利用目的に応じた高品質甘しょ品種の育成と新用途向けや省力栽培向け新タイプの品種開発
1)でん粉原料用等優良甘しょ品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:でんぷん原料用優良甘しょ品種の育成としては、有望系統九州123号の品種登録をめ ざした特性調査を継続して実施する。併せて、我が国の甘しょ品種に必要な交配種子の作成、 平成13年度以前交配の系統群から高トリプシンインヒビター・高アントシアン等について選 抜を続行する。

(2)暖地畑作物の収量・品質に関わる栽培環境条件、作物の持つ生物機能及び作付けによる土壌養分動態の解明による持続的生産管理技術の開発
1)亜熱帯地域における持続的輪作体系のための土壌管理法と内生窒素固定菌の特性解明
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:沖縄本島国頭マ-ジ土壌畑において緑肥のすき込み効果や輪作体系が土壌環境に与え る影響を究明し、持続生産型の輪作体系を構築するための土壌管理法を提示する。また内生窒 素固定菌の分離・同定を進めるとともに、菌の有効活用のために、生育部位の特定や窒素固定 能の評価を行う。

(3)甘しょ直播栽培の機械化等暖地畑作物栽培における軽労化作業システム技術の開発及び農産物の一次処理加工条件等の解明
1)野菜の生育斉一化のための機械的処理技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:ダイコン地上部を機械的に切除する生育管理技術を考案し、圃場作業に適応しうる環 境にやさしい生育斉一化技術を開発する。

(4)甘しょ等暖地畑作物の機能性の探索・同定、特性解明及び未利用部分や加工廃棄物の利用可能性の評価
1)甘しょ、さとうきび及びその副産物の健康機能の検索と特性評価
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:カンショ葉のポリフェノール各成分と栽培条件及び機能性との関係を明らかにする。 これらの成分のアントシアン色素安定性に及ぼす影響を明らかにする。サトウキビについては、 動物実験に向けた大量試料調整法を確立するとともに、機能性成分の化学特性に関する基礎デ ータを蓄積し、成分特性を解明する。

(5)収穫適期の異なる高糖性さとうきび品種等の育成
1)機械収穫適性の高い高糖性・多収さとうきび有望系統の評価
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:命名登録に向け、早期高糖性のKN91-49、KF93-174、KTn94-88、95GS-7等、また早期 高糖株出し多収性のKF92-93、KF93-173、95GS-3、95GS-113等の普及性を評価する。さらに、 極多収性系統KRSp93-19等について品種登録に向け成績を整備する。

4)暖地における物質循環型・高品質畜産物生産技術の開発

(1)暖地向け飼料用とうもろこしの、耐倒伏性・耐病性・消化性等に優れた熟期別多収系 統及び品種の開発
1)暖地向き高品質・耐倒伏性とうもろこし品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:栄養価を効率的に評価し、熟期別に有望系統の選抜を進めるとともに、中生の「ゆめ そだち」に代わる耐倒伏性多収品種の育成を進める。また、晩播・夏播き栽培の主要病害であ る南方さび病について抵抗性自殖系統を育成しつつ、抵抗性遺伝子と連鎖するDNAマーカーの 作出を進める。

(2)ロールベール向きソルガム類優良自殖系統の開発及び「はえいぶき」に代わるえん麦 品種の育成
1)冠さび病抵抗性えん麦極早生品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:極早生で冠さび病・倒伏抵抗性を改良した新系統の系適3年目の評価が終了する。3 年間の成績を総合的に判断して「はえいぶき」に置き換える品種候補を選定する。

(3)不耕起播種等による夏作、冬作飼料作物の周年省力栽培技術及びロールベールサイレージの品質改善技術の開発
1)物理的処理によるロールベールサイレージの品質改善技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:ロールベール調製時における材料草の物理的な破壊処理によるサイレージの品質改善 技術を開発する。

(4)利用期間が長いトールフェスク優良品種の育成及び寒地型・暖地型牧草等を組み合わ せた肉用牛周年放牧技術の開発
1)寒地型及び暖地型牧草等の組み合わせによる多様な周年放牧利用技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:中~高標高地におけるススキ等の植生の推移並びにシバ型草地の一次生産量、放牧可 能頭数を明らかにし、シバ型牧草の安定利用技術を確立する。

(5)家畜の暑熱適応性、エネルギーの蓄積、ミネラルの分配等の調節機構の解明と生殖細胞、胚等の分子レベルでの評価法の開発
1)飼養環境が牛乳品質及び乳牛のカルシウム、リン等の分配に及ぼす影響の解明
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:暑熱環境や飼料組成が乳牛の暑熱適応性やエネルギーの蓄積に関わる機構に及ぼす影 響並びに、カルシウム、リン等の分配や牛乳の品質に及ぼす影響を解明する。
2)胚発育における暑熱、酸化ストレスの影響の解明
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:ウシ生殖細胞における暑熱ストレス耐性に対する酸化ストレスの作用機序を生化学的、 分子生物学的に明らかにする。

(6)若齢期肉用牛の飼養管理が生理機能に及ぼす影響の解明
1)若齢期の飼料給与水準がその後の成長及び生理形質に及ぼす影響
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:妊娠中の母畜の栄養水準が産子の生理形質に及ぼす不可逆的な影響を、内分泌系を中 心に検討する。

(7)窒素排出量低減のための肥育豚へのアミノ酸給与技術の精密化及び牛からのメタン発 生量抑制等のための飼料給与技術の開発
1)アミノ酸人工消化率に影響する要因の解析並びに肥育豚のリジン要求量の解明
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:アミノ酸消化率に及ぼすインビトロでのインキュベーション条件を解析するとともに、 肥育豚の蛋白質蓄積速度に応じたリジン要求量を解明する。

5)暖地等における野菜花きの高品質・省力・安定生産技術の開発

(1)イチゴの促成・四季成り等作型適応性、省力果房型適性、各種病害抵抗性等の中間母本等の開発並びにスイカの立体栽培適性素材の検索
1)イチゴの施設栽培適応性品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:省力型果房形態を有する‘久留米56号・同57号'について地域適応性を検定すると ともに、実用系統の育成を進める。ビタミンCについて遺伝解析するとともに、高ビタミンC 含量系統を絞り込む。暖地向き四季成性系統の選抜を進める。

(2)イチゴ等施設栽培品目の光合成・花成等についての生理生態反応の解明と培養液等の栽培環境制御法並びに省力化栽培技術の開発
1)高設栽培におけるイチゴ省力花房型適性品種の養分吸収、生育、収量特性の解明
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き究部
研究計画:草勢・収量の安定的向上と収穫期延長を目的として、「久留米56号」を含め、各品種 の生育時期別(冬季、春季)の最適培地温を培地加温、培地冷却により検討する。あわせて、 高設栽培条件下での根群の発達について調査し、従来の土耕栽培のものと比較する。
2)ストレス緩和によるパプリカ等の生理障害軽減効果の解明
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:パプリカ等において高温期に発生する各種生理障害の原因解明のため、果実等の水分 状態に関係する植物体各部の水分状態、成長速度、それを取り巻く地上部・地下部の環境要因 の相互作用について解明する。

(3)キク等主要花きの暖地気象環境等に対する環境応答機構の解明に基づく育種素材の検索、系統の開発と省力化等生産技術の開発
1)トルコギキョウのロゼット化低減技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:登熟期の温度環境を制御することにより、ロゼット化しにくい性質を種子に付与する 技術等を開発する。交配後の未熟果に対する温度処理開始時期、処理温度等について検討し、 好適な処理条件を明らかにする。

(4)主要野菜・花きについての主要病虫害の発生・発病機構の解明及び天敵や有用微生物 等の利用による生物防除を基幹とした病虫害制御技術の開発
1)レタス根腐病の発生抑制技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:野生型F.oxysporum用選択培地を開発する。また、病原菌密度と非病原性フザリウム 菌による発病抑制効果の関係を解析して、土壌消毒と非病原性フザリウム菌を組み合わせた生 物防除技術を開発する。
2)アブラムシ類の在来一次寄生蜂の天敵としての有効性の評価および二次寄生蜂の影響 に関する研究
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:アブラムシ類の在来寄生蜂、Aphelinus sp.とAphelinus gossypiiの生物特性を解明 する。また、これら寄生蜂のキュウリのワタアブラムシとナスのモモアカアブラムシに対する 密度抑制効果を評価し、在来寄生蜂の役割と有効利用の可能性を明らかにする。

6)高温多雨条件における自然循環増進技術の開発

(1)暖地における環境保全的養分管理技術及び地力消耗型土壌の管理技術の開発
1)ホウ素等の植物細胞壁での機能の解明
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:植物の必須元素であるホウ素等のホウ素欠乏植物細胞壁への取り込みを分子レベルで 分析し、ホウ素等の細胞壁での機能を明らかにする。
2)新規形質大豆「エルスター」の減化学肥料栽培技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:家畜ふん尿を調製した成分調整堆肥(ぺレット堆肥)を利用し、大豆「エルスター」 の無化学肥料あるいは減化学肥料による環境負荷低減を指向した栽培技術を開発する。

(2)暖地農業地帯での温室効果ガスの発生に関わる脱窒菌あるいは環境負荷物質の代謝に関わる農業化学物質分解菌等の微生物の特性解明
1)亜酸化窒素等温室効果ガスの発生に関わる脱窒菌等の特性解明及び環境負荷評価
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:家畜スラリー還元畑土壌から分離した低栄養要求型脱窒菌の同定と特性を評価すると ともに、農林業センサスを利用した温室効果ガス等の環境負荷評価方法の開発に着手する。
2)難分解性有機塩素系化合物の嫌気分解に関与する微生物の特性及び分解機構の解明
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:新たに分離された嫌気性微生物の特性と難分解性有機塩素系化合物の分解機構を解明 する。また、分解産物等の土壌への吸着性、作物への移行性、他環境への流出の有無等の研究 に着手する。さらに、新型電気泳動装置とプログラムを組み合わせた高精度な細菌同定システ ムを開発する。

(3)暖地での気象資源特性の解明並びに水稲・葉菜類等の気象災害評価方法の開発
1)水田・畑等の熱収支特性解明及び小麦・葉菜類の強風害による減収尺度の評価
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:熱収支法と乱流変動法による飼料畑・水田の群落内微気象を観測し、CO2収支とエネ ルギー収支を解明する。また、小麦赤かび病防除のための出穂期予測モデル並びにサトイモ等 の強風被害の減収尺度を作成する。

(4)暖地における農地及び周辺地域の水循環の解明並びに農村流域における環境負荷物質 の動態の解明
1)農村流域の圃場管理形態が水資源動態に及ぼす影響の解明
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:GISを用いて圃区形状の違いが圃場間の水の流れや土砂災害に及ぼす影響を解明す る。さらに、圃場管理形態の違いが圃場の土壌物理性及び土壌流亡特性等に及ぼす影響の解明 とそれらの評価手法の開発に着手する。

7)地域産業創出につながる新形質農畜産物の開発と加工利用技術の開発

(1)作物の環境ストレス耐性・加工適性等関連遺伝子の解析及び利用技術の開発
1)帯状粗皮症ウイルス抵抗性付与形質転換カンショの安全性評価
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:帯状粗皮症ウイルス抵抗性付与形質転換カンショに関する閉鎖系での安全性評価方法 を参考にして、非閉鎖系(網室)での安全性評価法を確立するとともに、その評価法の安定性 を検証する。

(2)水稲、麦類、大豆、甘しょ、さとうきび、ソバ、飼料作物等の遺伝資源収集、有用形 質の評価及び育種素材化
1)甘しょ遺伝資源を活用した有用遺伝子の解析と高付加価値化を図るための特性の探索
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:皮色変異体などを用いて、その生理的特性に関わる遺伝子を解析する。また、近年そ の利用が注目されている茎葉の成分特性について近縁野生種遺伝資源を中心に探索する。さら に、カンショの窒素固定能の差違を解析する。

2)不良環境に適応性が高く、新たな利用に適した多収性さとうきび育種素材の開発
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:97GA系統、KRSp系統等の多収性F1系統、その他多収性遺伝資源等の生産力及び用 途に応じた適性を評価する。自殖性および耐倒伏性、難脱粒性など農業実用形質も改良された 普通ソバ系統を選抜する。

(3)作物中のアントシアニン等の健康機能性成分の分析手法、評価手法の開発及び食品としての用途開発研究
1)和食素材に含まれるアントシアニンの体内吸収による生活習慣病予防効果
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:紫黒米・紫カンショ等に含まれるアントシアニンの生体組成物モデル系に対する酸化 抑制効果を明らかにする。

(4)畜産物の機能性成分等に及ぼす飼養条件の影響の解明
1)給与飼料や運動量が畜肉中の共役リノール酸や結合組織構成成分に及ぼす影響
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:給与飼料の違いや運動などの飼養条件が、畜肉中の共役リノール酸含量や結合組織の 加熱溶解性及び架橋形成に及ぼす影響を解明する。

8)暖地多発型の難防除病害虫の環境保全型制御技術の開発

(1)病原菌等の遺伝的特性の解明に基づく主要病原菌レース、ウイルス、ネコブセンチュウ等の同定、診断、防除技術の開発
1)トスポウイルスの病徴決定遺伝子の同定
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:トスポウイルスの複数系統を重複感染させてRNA成分の交換を誘導し、得られた組換 え株の特性を親系統と比較することによって病徴決定RNA成分を同定し、弱毒ウイルスの作出 に利用する。

2)九州沖縄地域に生息するネコブセンチュウ類の天敵細菌Pasteuria penetransの特性解明
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:九州沖縄地域に生息する天敵パスツリア菌の特性とその分布を解析し、線虫制御能の 高いパスツリア個体群を選抜する。また、線虫に対するパスツリアの付着性の変異特性を解析 する。

(2)熱水土壌消毒、機能水、品種抵抗性等の活用による病害虫の減農薬防除技術の開発
1)抵抗性増強資材によるイネいもち病、紋枯病の減農薬防除技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:珪酸資材であるシリカゲルとALC(軽量発泡気泡コンクリート)廃棄物を組み合わせて 施用することで、稲体の侵入抵抗性を増強し、いもち病と紋枯病の発病を抑制する技術を開発 する。

(3)弱毒ウイルス、形質転換体の作出、利用や害虫の生態的特性、天敵、フェロモン等に 基づく生物防除技術の開発と有効性の評価
1)九州沖縄地域におけるサツマイモネコブセンチュウレース分布と輪作作物等への加害 特性の解明
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:13年度に新たに類別した7種のサツマイモネコブセンチュウレースの地域内分布を 明らかにする。また、輪作作物や対抗植物等に対する加害特性を解明する。

(4)イネウンカ類等のモンスーン移動性水稲害虫と侵入害虫スクミリンゴガイの増殖機構 の解明に基づく総合管理技術の開発
1)イネを介する昆虫と病原微生物との相互関係の解析
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:セジロウンカの加害を受けたイネに誘導されるいもち病(葉いもち)抵抗性の現象を 詳細に解析するとともに、その発生メカニズムの解明を試みる。

2)湛水直播水田におけるスクミリンゴガイの被害回避技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:農薬の種子コーティングによる省力的被害回避技術の開発およびスクミリンゴガイの 雌雄性比の決定要因を究明し、性比制御による防除技術開発に向けた基礎研究を推進する。

9)沖縄県北部地域の農業の振興に資する研究の推進

(1)沖縄北部地域の農産物における品質・機能性成分の評価と利用技術の開発
1)ニガウリの抗酸化活性に及ぼす栽培要因の影響解明
担当:九州沖縄農業研究センター沖縄農業研究官
研究計画:施肥法や誘引法等の栽培方法が、ニガウリのビタミンCやポリフェノール等の機能性 成分含量に及ぼす影響を調べるとともに、これら機能性成分とニガウリの抗酸化活性との関係 を明らかにする。

H 作物研究

1)水稲等の先導的品種育成、遺伝・育種研究及び栽培生理・品質制御技術の開発

(1)水田高度利用のための優良水稲品種の育成
1)水田高度利用のための晩播適性・飼料適性水稲品種の育成
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:既存の育成系統・品種を晩植栽培で選抜または母本として選定し、良食味新形質米の 晩植適性品種の育成を進める。また、高乾物生産性でTDN収量が高く、耐倒伏性等の栽培特性 に優れた稲発酵粗飼料用系統を選抜する。

(2)需要拡大のための新形質水稲品種の開発
1)米品質の高位安定化機構の解明と新形質イネ育種素材の開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:登熟温度非応答性系統候補やwx座遺伝子変異系統の澱粉特性、澱粉分解酵素の餅生 地の硬化性に及ぼす影響、機能性成分の質的・量的な差異等の解明に取り組み、新形質イネ育 種素材の開発を進める。

(3)省力・低コスト生産のための水稲直播栽培適性品種の開発
1)直播栽培向き品種の育成
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:複合病害虫抵抗性を備えた直播適性品種や高度耐倒伏性を備えた品種の育成並びに出 芽性極良の育種素材の開発を進める。また、耐倒伏性や直播での多収性に関わる形質について DNAマーカーを選定するための遺伝子分析を進める。

(4)省力・低コスト稲作における高位安定生産及び高品質・良食味栽培技術の確立
1)水稲の物質生産及び蓄積機構の解明と高品質安定生産技術の開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:不良環境下における水稲の生理機能や代謝成分の解析を進めるとともに,施肥反応特 性を解明する.また,米の食味関連遺伝子の単離に向けたDNAマーカーと目標遺伝子の連鎖解 析を行う.

(5)環境保全型農業推進のための複合病虫害抵抗性水稲品種の開発
1)複合病虫害抵抗性水稲の開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:少なくとも2つ以上の病害虫に抵抗性を備えた品種やDNAマーカーを利用した同質 遺伝子系統等の育成を進める。また、紋枯病等の病害虫抵抗性の付与を目的とした遺伝子組換 え体を作出し、その評価を行う。

(6)育種素材作出のための遺伝子組換え技術の利用法開発と組換え体の評価
1)イネ遺伝子の形質転換体作出による機能解析と利用法開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:遺伝子組換え技術を利用してトリプトファン合成系遺伝子等の機能を解明するととも に、改変型遺伝子等を作製して作物育種への利用法の開発に取り組む。

2)豆類、甘しょ、資源作物の先導的品種育成、遺伝・育種研究及び安定多収栽培・品質制御技術の開発

(1)豆類の先導的品種育成と利用技術の開発並びに多収栽培技術の確立
1)高品質多収大豆品種の育成
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:高タンパク品種、7Sタンパク質欠失品種等と既存の品種の交配後代の雑種集団・系 統の選抜を行うとともに、新たな組合せの交配を行う。

2)大豆の窒素代謝等の生理・生態的特性の解析に基づく画期的多収技術の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:根粒の固定窒素で窒素必要量を満たせる初めての大豆である根粒超着生系統を用いて、 イネ等と同様に生育量確保が子実収量増大に繋がるという画期的な多収栽培技術の開発を進 める。

3)大豆発芽期間における湿害抵抗性生理機構の解明
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:発芽期の低酸素ストレスが大豆収量に与える影響の生理機構の解明:発芽期低酸素ス トレスに抵抗性の品種及び感受性の品種の代謝系の変動、及び抗酸化系や嫌気呼吸関連酵素群 の比較・検討を行う。

(2)良食味、高機能性等優良甘しょ品種の開発
1)高品質青果用等かんしょ品種の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:機能性と食味を両立させた良食味紫かんしょ品種や迅速調理が可能な低糊化温度でん ぷん品種を開発するとともに、地域の特産物である蒸切干し加工に適する品種特性の解明を進 める。

(3)新規形質資源作物の育成と育種素材の探索及び栽培技術の開発
1)新規形質資源作物品種の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:ゴマやアマランサス等雑穀類における、子実成分の変異体を探索するとともに、高バ イオマスなどの新規用途開発にむけた育種素材の開発を進める。

(4)大豆、甘しょ、ごま等の品質制御技術の開発及び栄養機能性の評価
1)豆腐加工適性の評価法の開発と変動要因の解明
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:国産大豆の豆腐加工適性評価法を確立するとともに、品種、地域別などで異なる豆腐 加工適性の変動要因の解明を進める。

2)畑作物における機能性成分等の簡易・迅速成分測定法の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:大豆(枝豆を含む)、甘しょ、ゴマ、アマランサス等の畑作物に関して、タンパク質、 糖質、脂質などの分析を進め、一般主要成分の品質評価技術の確立に取り組む。

(5)DNAマーカー等の遺伝子解析技術を利用した豆類、甘しょの新育種法の開発
1)大豆、甘しょ等における新育種技術の開発と利用
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:大豆の黒根腐病抵抗性のマッピング、大豆の形質転換のための培養条件と遺伝子導入 条件の解明、かんしょの立枯病抵抗性選抜マーカーの開発等、遺伝子解析や遺伝子組換え技術 を活用した新たな育種法の開発を進める。

3)麦類の先導的品種育成、遺伝・育種研究及び栽培生理・品質制御技術の開発

(1)早生、高品質、安定多収めん用小麦品種の育成とたん白質含量制御技術の開発
1)食感等の品質を改善した安定多収小麦の育成と選抜技術の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:めんの食感に優れ、製粉性や色相の改善された小麦系統育成のための交配、選抜、評 価を行い、縞萎縮病に関する研究に着手する。また、穂発芽耐性の飛躍的な向上をめざし分子 生理学的研究に取り組む。

2)小麦品種における高品質化栽培技術の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:あやひかり等の小麦新品種を播種期、播種量と施肥量を変えて栽培し、葉色、収量、 小麦のたん白質含量、粉の色相等の関係を解明し、あやひかりの栽培技術マニュアルの改良に 取り組む。

(2)縞萎縮病抵抗性等を備えた食用及び麦茶用大麦品種の育成
1)縞萎縮病抵抗性、食用及び麦茶用大麦の育成と選抜技術の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:精麦及び麦茶品質の優れた大麦の育成のための交配、選抜、評価を行う。また、赤か び病及び縞萎縮病抵抗性の評価、選抜技術の開発及び抵抗性系統の作出に取り組む。

(3)品質形成機構の解明と新規用途向け麦類系統の開発
1)蛋白質・澱粉組成の改変による新規形質麦類系統の育成
担当:作物研究所麦類研究部 研究計画:多用途向け品種の開発に向けて、高蛋白、もち性、高β-グルカン等の新規胚乳形質 を有する麦類系統を選抜する。また、β-グルカン含量等と大麦胚乳の硬軟質性の関係解明に 取り組む。

2)小麦の製粉特性・粉色支配要因の解明と加工適性評価手法の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:小麦種皮の「切れ込み」性の指標となる化学成分の特定とその簡易評価技術の開発に 取り組む。また、澱粉分子の構築に関与する酵素の機能的特性の解明に取り組む。

(4)小麦の多収・高品質栽培技術の確立と生理機能の解明
1)高品質安定生産技術のための麦類の生理生態的諸特性の解明
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:大麦の開穎に関わる準同質遺伝子系統などを用いて、閉花受粉性遺伝子に連鎖する分 子マーカーを開発する。また、既知の小麦の閉花受粉性系統の形質を調査する。大麦の耐倒伏 性向上のために半わい性遺伝子の特性についての研究に着手する。

I 果樹研究

1)省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)省力・低コスト樹形を備えた育種素材及び新たなわい性台木素材等の作出並びに樹体 生育関連遺伝子の単離・評価
1)交雑によるリンゴのカラムナータイプ育種素材の効率的開発
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:海外から導入したカラムナータイプ品種・系統等と、果実品質の優れた栽培品種との 交雑を行い、交雑種子を獲得する。前年までに獲得した交雑種子の実生集団を養成し、カラム ナータイプ個体の幼苗選抜を行う。ガラス室段階で第1次幼苗選抜を行った個体について、苗 圃で形態的観察を行い、第2次幼苗選抜を行う。幼苗選抜を終了した個体については、わい性 台木に接ぎ木し、選抜圃場に定植するための苗木を養成する。なお、所内における課題評価結 果に基づき、実施課題名「リンゴのカラムナータイプ等交雑実生群の養成と幼苗選抜」は本課 題に統合する。

2)イチジク株枯れ病抵抗性台木育成のための育種素材の選抜
担当:果樹研究所遺伝育種部
研究計画:ロシア・トルクメニスタンから導入した実生個体、イチジク近縁種に対してイチジク 株枯れ病の有傷接種試験を行い、本病に抵抗性を示す優良系統の選抜を行う。

(2)省力樹形品種及び新わい性台木利用樹における樹体管理技術の開発
1)リンコ ゙JM台木等わい性台木による主要品種の生育制御の特性評価
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:リンゴJM台木の接ぎ木親和性を評価する。

2)カキのわい性台木による主要品種の生育制御の特性評価
担当:ブドウ・カキ研究部
研究計画:各種のわい性台木候補に接木したカキ樹の樹高、新梢伸長等の生育特性を解析する。

(3)結実管理等の省力・低コスト適性形質を備えた優良個体の育成及び育種素材の作出
1)ナシ黒星病抵抗性等の遺伝解析
担当:果樹研究所遺伝育種部
研究計画:チュウゴクナシ品種「蜜梨」とセイヨウナシ品種「ラフランス」の黒星病抵抗性遺伝 子が同一の遺伝子座にあるかを検定するための検定用集団、8組み合わせ、125粒の種子を得 た。これを播種して実生を養成し、接種により黒星病抵抗性を検定する。

2)ウメの自家和合性等の品種育成のための交雑実生の獲得
担当:果樹研究所遺伝育種部
研究計画:ウメにおいて、品質優良な品種・系統と自家和合性品種との交雑を行い交雑実生を獲 得するとともに、得られた実生の養成、花粉稔性等の予備調査を行う。

(4)園地別隔年交互結実技術等による結実管理作業の省力化
1)カンキツの園地別隔年交互結実技術の開発
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:ウンシュウミカンの品種・着果負荷が休眠の深さ、萌芽率、花芽分化率に及ぼす影響、 せん定から発芽にかけての樹体内成分の変化を検討する。新台木候補について皮接ぎや生育に よる樹勢評価及び割接ぎ苗利用による樹勢と生産性・品質を検討する。

2)リンゴの花芽関連遺伝子の単離・同定
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:リンゴ生殖器官の形態形成を支配する複数の遺伝子群を単離し、それらの発現特性を 解析する。

(5)高品質果実安定生産のための物質生産特性の解明
1)わい性台リンゴ樹等における炭水化物代謝、蒸散等の解析・評価
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:JM台木利用の「さんさ」、「王林」、「ふじ」等の低樹高化を図りつつ生育特性等の調 査を継続する。また、果実のデンプン代謝酵素の活性変動を調査する。

(6)果樹の自発休眠覚醒機構等に関する生態反応の解明
1)ナシ、モモ等における自発休眠覚醒の機構解明及びモデル開発
担当:果樹研究所生理機能部
研究計画:自発休眠の高温による休眠覚醒阻害効果の評価を行う。

2)消費者ニーズに対応した品質・機能性・貯蔵性の向上技術の開発

(1)果実形質に関連する遺伝子の単離・解析
1)リンゴ、モモ等の着色等果実形質関連遺伝子の発現解析
担当:果樹研究所生理機能部、ブドウ・カキ研究部 研究計画:アントシアニン生合成の最終段階を触媒するフラボノイド糖転移酵素の遺伝子の全長 をリンゴから単離し、リンゴ果皮におけるアントシアニン蓄積との関係を明らかにする。また、 ブドウ「巨峰」から単離したmyb様転写制御因子が他のブドウ品種における着色制御にも関わ っているか明らかにする.モモについては、エクスパンシン以外のエンド型キシログルカン転 移酵素等細胞壁代謝関連タンパク質をコードする遺伝子を単離し、果肉軟化との関係を解析す る。

2)カンキツの果実形質関連遺伝子の発現解析
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画: カンキツの交雑系統、ウンシュウミカンの突然変異系統等を材料として、様々な多 型解析技術と連鎖解析により果実形質に関連する遺伝子の単離を目指す。

(2)果実の非破壊品質評価技術の高度化
1)リンゴ及びカンキツにおける果実品質の高精度非破壊評価技術の開発
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:携帯型非破壊品質評価装置による、樹相の異なるリンゴ樹の樹冠下部における果実糖 度の分布を調査し、樹相診断に着手する。

(3)モモ等果実の生体機能の解析による鮮度保持技術の開発
1)落葉果樹果実の品質構成要素の解析及び代謝経路の制御法の検討
担当:果樹研究所生理機能部
研究計画:アルカリ性溶液によって可溶化してくるペクチン性多糖の構造の解析をさらに進める とともに、果実の成熟や老化に伴うこれらの多糖の構造変化を解析する。

(4)消費者ニーズに対応した食べ易さ、機能性等を付与した高品質品種の育成及び育種素 材の作出と果樹品種等に関する情報の効率的提供手法の開発
1)成熟期の異なる食味の優れるカンキツ系統口之津24~32号、興津50~54号の地域適 応性の検討
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:第8回系統適応性・特性検定試験に供試されている口之津5系統、興津3系統の特性 を検討する。特に、4年間にわたり果実品質等が検討され、中生系統として有望とされている 「口之津32号」について、果実特性、樹体特性の最終評価を行い、命名登録候補として重点 的に検討する。

2)品質等の優れるカキ品種育成のための交雑実生の養成と選抜
担当:果樹研究所ブドウ・カキ研究部
研究計画:前年度選抜した5つの優良系統を繁殖し、地域適応性の検定試験を開始する。また、 平成11年度以前に交配し、高接ぎした交雑実生群を養成し、その果実形質、栽培性を調査す る。平成12年度交配の交雑実生を高接ぎ・養成し、平成13年度交配の交雑種子の実生を育成 する。新たに交配を行い、種子を獲得する。

3)果樹関係情報の効率的提供手法の開発
担当:果樹研究所企画調整部
研究計画:果樹に関する各種情報について、最新のインターネット技術を活用した情報提供システムの 開発を行いつつ、国内で育成された果樹品種に関する情報のデータベースを構築する。

(5)果樹における効率的遺伝子導入技術の開発と導入遺伝子の発現解析
1)病害抵抗性遺伝子等を導入したブドウ等の形質転換体における導入遺伝子の影響評価
担当:果樹研究所遺伝育種部、カンキツ研究部、生産環境部
研究計画:リゾチーム遺伝子を導入したブドウ形質転換体における病害抵抗性評価に着手する。 また、温州萎縮ウイルスの細胞間移行タンパク質遺伝子等を導入したカラタチを育成するとと もに、既存のカラタチ形質転換体のウイルス抵抗性評価をすすめる。

(6)果実等の機能性成分の分析及び関連遺伝子の単離と遺伝子導入による新素材の開発
1)カンキツ摂取量推定のためのバイオマーカーの開発
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:前年度に得られた成果である、血清中β-クリプトキサンチン濃度がウンシュウミカ ンの摂取量に依存して冬場に著しく高くなり、ウンシュウミカン摂取量を推定する為のバイオ マーカーとなる可能性を更に詳細に検討するため、2ヶ月毎に血液分析と食事摂取頻度調査を 行い、詳細な季節変化を追跡する。

2)カンキツのイソプレノイド代謝遺伝子の単離・解析
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:カンキツのアロマ成分などを変更した新しい育種素材の作出に有効なテルペン合成酵 素遺伝子群の単離・解析を継続し、多様な遺伝子素材を得るとともに、その形質転換体の作出 と特性解析に着手する。

(7)モモ、カンキツ等の遺伝子地図の高密度化及び果実等由来cDNAのカタログ化
1)バラ科果樹等における高密度遺伝子地図作成のための各種分子マーカーの開発
担当:果樹研究所遺伝育種部
研究計画:モモ果実由来のcDNA及び濃縮ゲノムライブラリーからのSSRマーカーを、前年度 に引き続き開発する。開発したSSR等のDNAマーカーは、モモの集団で解析を行い、地図上に 張り付ける。

2)カンキツ等果樹のcDNAクローンのカタログの作成と利用
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:カンキツ果実等由来cDNAクローンの大量解析とそのカタログ化を進め、果実の生理 解明及び育種に有用な遺伝子情報の抽出と機能推定に利用するとともに、データベース化を推 進する。

3)環境負荷低減技術の開発

(1)果樹病原体の同定と発生動態の解明
1)カンキツ病原菌における伝染能力の解明
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:カンキツかいよう病菌に対する有望新品種の感受性を明らかにする。本菌の伝染能力 発現機構を解明するため、本細菌の病原性関連遺伝子の機能及び遺伝子間の相互作用について 調査する。

2)リンゴ根頭がんしゅ病の高精度診断技術の開発
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:リンゴ根頭がんしゅ病菌の菌株の収集を行い、病原性を調べ、遺伝子診断法による検 出を行う。

(2)果樹病害の拮抗微生物等を利用した防除技術の開発
1)ブドウ灰色かび病菌に対する拮抗菌の選抜及び白紋羽病菌に対するバチルス菌の効率 的施用条件の解明
担当:果樹研究所生産環境部、ブドウ・カキ研究部
研究計画:ブドウ灰色かび病菌に対する拮抗微生物を継続して探索するとともに、既に選抜した 拮抗菌についてはブドウ植物体上での拮抗性の比較検討、拮抗性の発現条件等の調査を行う。 白紋羽病菌に対する強い拮抗菌バチルス菌について、さらに強い拮抗性を発揮する増殖資材に おける増殖条件を明らかにするとともに鉢試験におけるその効果を継続して調べる。
2)菌糸融合による紫紋羽病菌へのdsRNA導入条件の検討
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:紫紋羽病菌について、菌株の組み合わせや培地内での炭素源濃度を比較し、対峙培養 によるdsRNAの導入効率の差を調べる。

(3)果樹における発病機構の解明
1)ナシ黒星病抵抗性と病原菌レースの相関解析
担当:果樹研究所生産環境部
研究計画:前年度確立したナシ黒星病菌3レースの分生胞子形成法を用いて、種々の黒星病抵抗 性系統に対する3レースの病原性を検定し、抵抗性と病原菌レースの相関解析を引き続き行う とともに、これらの抵抗性系統を侵す新レースの存在の可能性を調べる。

(4)果樹害虫等の分類・同定技術の開発及び発生条件の解明
1)果樹微小害虫のマイクロサテライト解析
担当:果樹研究所ブドウ・カキ研究部
研究計画:ブドウ等より採取したチャノキイロアザミウマ等果樹微小害虫について、さらにマイ クロサテライト領域を探索し、新たな対立遺伝子座を明らかにする。それらを用いて、地域個 体群間、寄主植物間や同一圃場で経時的に各マイクロサテライト領域の遺伝子頻度を調べ、遺 伝的変異を解析する。

(5)主要害虫に対する生物防除資材の探索と利用技術の開発
1)吸汁性害虫に有効な生物防除資材の探索と特性解明
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:ミカンヒメコナカイガラムシ2齢幼虫に対する寄生蜂Allotropa sp. の冬季自然日 長条件下における放飼効果を明らかにする。

2)リンゴ寄生ハダニ類に対する土着天敵類の探索および生態特性の解明
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:リンゴ寄生ハダニ類の天敵素材を探索し、基礎的生態特性及び捕食者としての能力を 評価する。

(6)フェロモン等の昆虫に由来する防除素材の作用解明と利用技術の開発
1)土着天敵群を用いたハダニ類・鱗翅目類等害虫の防除を核とした総合防除技術の確立
担当:果樹研究所生産環境部
研究計画:防除強度の異なる圃場におけるハダニ類及び天敵類の種構成と発生動態の変異を明ら かにするとともに、それに関与する要因を検討する。天敵類誘引物質の野外での誘引効果を解 析し、密度抑制効果を検討する。

(7)クリ果実害虫に対する臭化メチルくん蒸代替防除技術の開発
1)クリシギゾウムシに有効な天敵糸状菌等の探索・選抜
担当:果樹研究所生産環境部
研究計画:クリシギゾウムシに対して感染力が認められた複数の糸状菌株について、病原力等の 生態特性を比較検討し、生物的防除因子として有望な菌株の選抜をさらに進める。

(8)施肥等に起因する環境負荷の評価及び果樹根の養分吸収機能の評価
1)果樹園等における重金属等の動態解析
担当:果樹研究所生理機能部
研究計画:果樹園土壌に蓄積した銅等重金属について、樹体への吸収移行の実態調査を行うとと もに、土壌からの亜酸化窒素発生に及ぼす施肥量、施肥時期の影響をさらに検討する。

J 花き研究

1)新規性に富み付加価値の高い花きの開発

(1)新規花き育種技術及び育種素材の開発
1)アグロバクテリウム法によるキクの形質転換系の開発
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:cabあるいはEF1αプロモーターにインスレーターを結合した場合の効果について検 討する。セイマリンで確立した形質転換条件が他の系統に適用可能かどうかを調査する。また、 セイマリン以外の系統におけるキクのcabプロモーター及びタバコのEF1αプロモーターの有 用性を調べる。

(2)低コスト・高品質化のための花き育種素材・パイロット品種の開発・育成
1)種間交雑等によるキク等の育種素材の開発・育成
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:イソギク等野生種とキク栽培種との種間交雑後代について、多収性等の有用特性に関 する二次選抜等を行う。また、カーネーション萎凋細菌病抵抗性に関連したRAPDマーカーの STS化等を行う。ツバキとヒメサザンカの節間雑種系統の実用性を検討する。

(3)花きの生育・開花生理の解明
1)植物ホルモン関連遺伝子の単離と発現解析
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:トレニアからクローニングされた、ジベレリンの生合成酵素をコードする遺伝子につ いて、RT-PCR法、Northern法などにより、茎伸長に伴う発現の変化と組織特異性について解 析する。また、ジベレリン生合成遺伝子を導入したトレニアの組み換え体を作出し、ジベレリ ン生合成遺伝子の形態形成に及ぼす機能を解析するための実験系を作出する。

(4)花きの品質生理の解明
1)未同定色素の分子構造の解析
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:ペチュニアの覆輪花弁を構成するアントシアニン-フラボノイド系色素を分析し、そ れぞれの物質の花弁における部位特異的な分布を明らかにする。

2)高品質で安定な生産及び流通利用技術の開発

(1)花きの環境保全的省力・高品質生産技術の開発
1)系外排出を抑制したバラ等の養液栽培技術の開発
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:バラ等植物の養分吸収および蒸散速度に生育環境が与える影響を調査する。環境条件 をコントロールしたグロースチャンバー内で栽培し、光強度や温度が養分吸収速度、蒸散速度 および生育に及ぼす影響を調査する。また、バラアーチング栽培において同化専用枝の光合成 速度は生産性と密接に関わることから、培地内の窒素濃度と光合成速度の関係を検討する。

(2)花き病害の発生生態の解明と総合的制御技術の開発
1)カーネーション萎凋病等花き類の土壌伝染性病害の発生生態の解明
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:前年度に作出した同菌栄養要求性突然変異株を土壌及びカーネーションに接種し、選 択培地上での回収性能を検討し、これに改良を加える。

(3)花きの日持ち性機構の解明と品質保持技術の開発
1)切り花花きの品質に及ぼす新規品質保持剤の影響
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:新規エチレン作用阻害剤である1-MCPにスクロースを組合せた処理がスイートピー切 り花の品質保持に及ぼす効果を調べるとともに、バラ切り花の品質保持に効果が見いだされた 薬剤処方(GLCA)の実用性を検討する。また、スイートピーのエチレン生合成機構の解明や、デ ルフィニウムのエチレン受容体遺伝子の発現解析を行う。

(4)花きの持つ多面的効用の解明と利用技術の開発
1)花きの心理的効用の解析及び有用形質についての選抜
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:花き観賞時に特異的に表出する感性スペクトルの種類の抽出と解析精度向上のための 最適データ区間、特異データの取り扱い、個人差等について吟味し、心理的効用を総合的に評 価する手法について検討する。育成中の低性ハマナス系統の中から樹形及び着花性の年次変動 を考慮しつつ、地被能力等について検定を加え、最終選抜を目標に選抜を進める。

K 野菜茶業研究

1)葉根菜の省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)葉根菜の省力・機械化適性育種素材及び不良環境適応性育種素材の開発
1)キャベツ及びネギの省力・機械化適性の解析並びにハクサイ晩抽性系統の評価
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:多様なキャベツ品種を用いて機械化一貫体系に基づいた栽培・機械収穫を行い、機械 収穫に適した品種を選定する。また、機械収穫適性に関与する特性及びそれに関与する形質を 抽出する。初期生育量の異なるネギ系統間で多型を示すSSR等の共優性DNAマーカーを新たに 10個以上開発し、連鎖地図上に位置付ける。また、短葉性根深ネギ育種について、短葉性の 評価法を確立し、F2世代を選抜する。極晩抽性ハクサイについては、引き続き中間母本候補 系統の特性検定と系統適応性検定を行う。

(2)葉根菜の生育斉一化・生産安定化技術の開発
1)キャベツ等におけるセル成型苗の高品質化技術の開発及び生態反応の解明と生育段階予測法の開発
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:エブ&フロー方式による高品質苗生産技術の開発のため、レタス育苗における培養液 管理技術の開発とキャベツ育苗における培養液管理方法の改善を行うとともに、キャベツの生 育斉一性を解析するためのシミュレーションモデルを開発する。さらに、キャベツ・レタスに ついて気温による葉令進行モデルを策定する。

2)果菜の省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)果菜の省力・低コスト・安定生産性育種素材の開発
1)単為結果性ナス、多両性花性スイカ等の省力適性系統の選抜試験
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:ナスの単為結果性及びトマトの短節間性育種では、F3、F4世代から優良個体を選 抜するとともに、育成固定系統を用いたF1の特性を明らかにする。また、スイカの多両性花 性育種ではF4、B1F2世代から、メロンの短側枝性育種ではF3世代から、それぞれ優良 個体を選抜する。諸形質の向上を図るため必要に応じ戻し交雑を行う。

(2)果菜における栽培管理の改善とその工程の機械化・装置化、資機材等利用及び環境・ 生育制御技術の開発
1)トマト等の新栽培法の評価、新資材利用下の生育解析及び施設内熱水分環境の解析
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:トマト長段栽培では、受光量・光合成・収量等を調査し、適切な整枝高さを明らかに する。また、細霧冷房の利用等によって生じる気象環境変化を解析する。トマトの一段栽培に おける収穫期の斉一化技術の効果を明らかにし、無排液養液管理の生育・収量等に与える影響 を解明する。機械化・装置化では、イチゴ果実搬送機構を設計する。

3)茶の高品質化・省力・低コスト化生産技術の確立

(1)茶の省力・軽作業化生産技術の開発
1)茶園における施肥・防除作業の省力・軽作業化技術の開発
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:中山間地茶園用に試作した多口ホース噴頭、送風式肥料散布機、小形自走式ブームス プレーヤ、送風式捕虫機等の作業精度・能率を明らかにする。また、茶樹や茶園環境のセンシ ング技術と、試作した可変散布機構を有する施肥機の液肥吐出特性を明らかにする。さらに、 構築した茶園情報システムの高度化を図るため、3次元表示機能、条件別解析機能を付加する とともに、GPSを利用した測量法を検証する。

(2)製茶工程の自動化・低コスト化及び高度情報化技術の開発
1)低コスト・無人化を目指した製茶工程統轄制御システム等の開発
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:熟練者並みの高品質製茶が可能なエキスパート製茶システムのプロトタイプを作成し、 実際にエキスパート製茶システムによる製茶を行ってその品質向上効果等を検証する。また、 ゼロエミッション製茶に向けて製茶工場廃棄物の処理法を開発するため、これら廃棄物の成分 分析を行う。

(3)摘採期の分散化に対応する茶育種素材と品種の育成
1)早生・高品質品種の育成及び有望な素材の選抜
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:味及び香りに特徴を持ち,炭疽病,クワシロカイガラムシに抵抗性のある早・中・晩 生系統を育成するために、交配・個体選抜・系統比較試験を行う。また、13年度に明らかに した新芽の発育モデルを基礎に新芽の生長量を推定し,これと枠摘み収量との関係を解明する。 さらに,交配後の結果率向上を図るために、受精から種子形成過程のうち,受精胚発育の主に ハートステージを中心に解析し、種子の発育あるいは座止に関わる要因を解明する。

4)葉根菜生産における環境負荷低減技術の開発

(1)葉根菜の病害虫抵抗性育種素材の開発
1)ハクサイ根こぶ病抵抗性の遺伝解析並びにネギさび病抵抗性素材及びレタスビッグベ イン病抵抗性素材の開発
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:根こぶ病抵抗性品種を侵す根こぶ病菌を日本各地から収集し、その病原性に基づきレ ース判別を行う。ネギの循環選抜の2サイクル目を実施し、さび病に対する圃場抵抗性が改良 された集団を選抜する。レタスのビッグベイン病抵抗性素材と栽培品種を交配した後代等から 抵抗性系統を選抜する。

(2)葉根菜の病害発生機構の解明
1)レタス根腐病菌の系統またはレースの分類
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:レタス根腐病菌病原性グループ1に対して、品種の持つ抵抗性の遺伝様式を推定する ため、抵抗性品種と感受性品種のF1およびその自殖後代のF2、F3集団について、本病抵抗性 を検定する。

(3)葉根菜害虫の生理生態特性の解明と害虫管理技術の開発
1)ハルザキヤマガラシのコナガ抵抗性機構の解明及び昆虫の変態抑制に関与する遺伝子 の探索と機能解明
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:ハルザキヤマガラシ葉に含まれる第2の摂食阻害活性成分を単離し、その化学構造を 明らかにする。また、類似構造を持つサポニンのコナガ摂食阻害活性を検定し、構造活性相関 を明らかにする。

(4)野菜畑における養分動態等の解明と環境負荷低減技術の開発
1)野菜畑における環境負荷発生ポテンシャルの解明と低減技術の開発
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:キャベツを基幹とする栽培体系を対象に、家畜ふん堆肥の施用が土壌中の微生物相、 作物の生育・品質に及ぼす影響の解明に着手するとともに、各種資材の局所施肥による根系の 発達と窒素収支の改善効果を定量的に把握する。また、キャベツ-スイートコーン体系を対象 に、環境負荷物質のインパクト評価によるLCA評価を行う。

5)果菜生産における環境負荷低減技術の開発

(1)果菜の病害虫抵抗性素材の開発
1)ピーマンPMMV等ナス科野菜、つる割病等ウリ科野菜の病害抵抗性素材の検索及び系統 選抜試験
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:ナス・ピーマン育成系統の台木適応性及びメロン育成F1(病害虫複合抵抗性)の栽 培適応性を検定する。ピーマンPMMV抵抗性育種では、F3世代で台木用の選抜を行う。また、 メロンMNSVおよびつる割病抵抗性素材を検索するとともに、トマト青枯病抵抗性、メロンつ る枯病抵抗性、カボチャのうどんこ病抵抗性・耐暑性については、それぞれ抵抗性等を検定し 世代を進める。

(2)果菜病害の発生生態、発病機構の解明とその制御技術の開発
1)青枯病、疫病等ナス科土壌病害抵抗性機作の解明と太陽熱土壌消毒技術等の検討
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:ピーマン疫病の抵抗性に関与する遺伝子を検出する。トマト青枯病菌の情報伝達をか く乱する物質を探索する。また、トマトの少量土壌培地での根腐萎凋病に対する太陽熱消毒法 を開発する。キュウリうどんこ病等の防除における電解水の利用では、有効塩素濃度を低下さ せないポンプおよびノズルを選定するとともに、防除効果を発揮できる塩素濃度を明らかにす る。

(3)果菜害虫の生理生態の解明と総合的管理技術の開発
1)トマト等に発生する微小害虫の生物的防除技術の確立
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:トマトツメナシコハリダニの態別の捕食量を明らかにするとともに、トマトサビダニ の寄生した施設栽培のトマトにトマトツメナシコハリダニを接種し、密度抑制効果を解明する。 また、トマトの近縁種にトマトサビダニを接種し、被害・増殖の種間差を明らかにする。さら に、3種カブリダニの雌成虫と卵の各種薬剤に対する感受性を明らかにする。

(4)果菜栽培における土壌・栄養生理特性の解明と制御による環境負荷低減・省資源型生 産技術の開発
1)養液栽培、養液土耕栽培における培地及び養水分管理技術の検討
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:養液栽培の排液成分の低減技術を開発するため、培養液閉鎖型の栽培装置について、 NおよびP成分の残留がない施肥管理法などを明らかにする。養液土耕栽培において、コーン スティープリカーやメタン発酵液等の地域有機物資源を有効利用する技術を開発する。また、 生産物の窒素安定同位体比から有機農産物を判別する技術の開発に着手する。 LCA評価では、 暖房・冷房デグリーアワー等の解析を行い、暖房エネルギー投入量の合理性を評価する。

6)茶の環境保全型生産システムの確立のための研究

(1)少肥適性及び病害虫抵抗性育種素材の開発
1)少肥適性及び病害虫抵抗性育種素材の検索
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:施肥後のチャ木部樹液中アミド濃度の推移等について品種間差異を明らかにし、少肥 適性品種の評価条件を設定する。また、不定胚等を用いたチャ形質転換体の作出を試みる。さ らに、チャ炭疸病抵抗性検定法を用いてチャ遺伝資源の耐病性評価を行うとともに、クワシロ カイガラムシ抵抗性等に関連するDNAマーカーによる選抜に取り組む。

(2)環境保全型茶病害虫管理システムの開発
1)茶病害虫に対する効率的防除技術の開発
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:炭疽病の被害許容水準の構成要因である日感染量を予測するため、経時的に分生子の 形成と分散を解明する。整剪枝による炭疽病の防除効果を低下させる降雨と発生との関係を解 析し、農薬を含めた体系的防除を実証する。輪斑病菌汚染量のモニターに基づいた農薬の最適 な使用時期を解明する。クワシロカイガラムシの休眠誘導条件や昆虫寄生性線虫によるナガチ ャコガネ防除効果の持続性を確認する。非化学合成農薬・天敵や物理的防除法を利用して害虫 防除を体系化し、その実証試験を行う。また、電撃型自動計数フェロモントラップの改良を行 う。

(3)茶園からの施肥成分の系外流出防止技術の開発
1)茶園における施肥窒素の動態把握と施肥量削減技術導入効果の評価及び養分リサイク ル技術の開発
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:茶園土壌中の有機物が施肥窒素等の脱窒に及ぼす影響を明らかにする。静岡県中部の 代表的な茶栽培地帯において、施肥量削減技術導入についての環境影響評価を行う。また、茶 園地帯からの流出水から有用成分を回収して茶園に再利用する方法を開発する。

7)消費者ニーズに対応した野菜の高品質生産・流通技術の開発

(1)野菜の高品質・流通加工適性育種素材の開発
1)キュウリ高硬度系統の選抜及びニンジン高カロテン育種素材の検索
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部、果菜研究部
研究計画:果実硬度の優れたキュウリ系統について果実外観や雌花着生向上のため、市販品種等 との交雑後代F3、F4、F5の選抜及び戻し交雑後代の選抜を行う。また、F1予備検定も行 う。ニンジン遺伝資源からカロテン含量の高い品種を検索するとともに、カロテン含量の季節 変動を解明する。

(2)野菜栽培における安全性確保技術の確立
1)ダイオキシン、カドミウム等の土壌、野菜における動態の解明
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部、果菜研究部、機能解析部
研究計画:大気経由で野菜に付着したダイオキシン類の吸収・蓄積量及び土壌からの吸収移行量 について、品目間差を調べる。カドミウム汚染土壌で栽培した野菜の可食部中におけるカドミ ウム濃度を調べ、根域制限処理が野菜のカドミウム吸収に及ぼす影響を明らかにする。また、 土壌中におけるフタル酸エステルの分解過程を明らかにする。さらに、野菜生産環境における 食中毒原因菌の動態解明に着手する。

8)嗜好の多様化、消費者ニーズに対応した茶の需要の拡大のための研究

(1)アッサム種等を利用した新用途向き品種の育成
1)低カフェイン及び高アントシアニン特性をもった育種素材の検索と素材化
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:ガンマーフィールドの線量率の低い場所からの低カフェイン突然変異体の1次スクリ ーニングを行う。これまでに得られた低カフェイン芽条変異体のキメラの解消を図るため、2 次,3次スクリーニングを行う。高アントシアニン系統の選抜試験を行う。保存遺伝資源につ いてカテキン組成を解析する。

(2)茶葉の加工適性の解明による製茶技術の改善と茶飲料の品質向上技術の開発
1)茶葉の加工適性の解明による製茶技術の改善
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:茶の品種による製茶特性、香気成分組成の違い、及び原葉貯蔵中のインドール等、茶 成分の変化が品質に及ぼす影響を解明する。また、グルタミンの代謝経路を中心としたGABA 生成経路と血圧降下に有効な茶飲料中のGABA含量を明らかにする。

9)生産技術開発を支える基礎的研究

(1)新規な遺伝変異作出のための新たな育種技術の開発
1)アブラナ科並びにナス科野菜の形質転換効率の改善及びニラのアポミクシス性に関す る分離集団の育成
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部、果菜研究部、機能解析部
研究計画:環境ストレスに関与する転写因子遺伝子を導入したコマツナの耐凍性を検定する。ニ ラ前減数分裂期に特異的なcDNAを選抜する。トマト果実特異的遺伝子のプロモーター領域を シーケンスする。糖代謝系酵素遺伝子を導入した形質転換トマトを得る。ナス青枯病抵抗性の QTL解析を行う。

(2)野菜・茶の生育制御技術の開発
1)野菜の生育転換機構の解明並びに種子処理技術の開発及び茶のカテキン合成系の解析
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:キャベツにおける花成誘導に対するジベレリンの役割、及び、ユリ科野菜における鱗 茎の肥大と分げつに対する光・温度条件の作用機作を解明する。イチゴ果実の肥大に係わる遺 伝子発現を解析するとともに、レタスなどの種子に対する放射線ホルミシスを解析する。茶の カテキン合成系酵素の遺伝子発現に与える光量および光質の影響を解析する。

(3)野菜における環境ストレス耐性の解明と制御技術の開発
1)種子発芽に伴う発光現象の解析及び高温ストレスに応答して発現するタンパク質の解明
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:微弱発光計測装置による種子選別を行うために、種子発芽に伴う発光現象を解析し最 適計測条件を明らかにする。また、高温順化処理前後におけるシャペロン活性と高温耐性の獲 得との関係について解析するとともに、シャペロン活性をもったタンパク質の精製を行う。

(4)野菜における有用形質の特性・ゲノム構造の解明と利用技術の開発
1)アブラナ科野菜等における連鎖地図の作製
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:連鎖地図の作製および高密度化のために、マイクロサテライト等のDNAマーカーを新 たにハクサイ、ナスで各50個、メロンで30個開発するとともに、根こぶ病等病虫害抵抗性検 定とQTL解析により、抵抗性の座に連鎖するマーカーを特定する。さらに根こぶ病抵抗性機構 解析のためにこぶ肥大の観察可能な接種条件を解明する。また、国内に流通しているイチゴの 全品種識別を可能とするDNAマーカーを開発する。

10)流通・利用技術を支える基礎的研究

(1)野菜の高品質流通技術の開発
1)トマト、レタス等における野菜の成熟・老化・切断傷害等に関連する遺伝子の単離と解析
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:トマトの成熟・老化に関連する遺伝子を単離し、塩基配列と発現を解析する。レタス の褐変やビタミンC代謝に関連する遺伝子の発現を解析する。ブロッコリー形質転換体のエチ レン感受性を明らかにする。トマトのカロテノイド簡易分析条件を設定する。

(2)野菜の品質特性の解明と品質評価法及び機能性等高度利用技術の開発
1)野菜の食感構成要素及び機能性の解明と評価
担当:野菜茶業研究所機能解析部・葉根菜研究部
研究計画:キュウリの「歯切れ」と組織構造の関係を解明する。近赤外分光法によるイチゴ糖度 非破壊推定法の精度改善、ダイコン辛味等の分別手法の開発に着手する。日本型食生活におけ る野菜摂取の意義を明らかにするため、引き続き、アブラナ科野菜に多く含まれるイソチオシ アネート類による活性窒素種産生に及ぼす影響を評価する。また、ラットへタマネギ等の野菜 を給餌した際のフラボノイド吸収に及ぼす共存食品成分の影響を解明する。併せて葉菜類の機 能性成分のデータベース化に取り組むとともに、紫外線照射による野菜の機能性成分含量の増 強に着手する。

(3)茶の抗アレルギー物質等機能性成分の評価・利用技術の開発
1)ヒト免疫担当細胞による抗アレルギー物質等機能性成分評価法の開発と機能性成分有効利用法の検討
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:‘べにふうき’葉位別メチル化カテキン含量及びストリクチニン含量の茶期別変動を 明らかにする。ヒト好酸球株の分化誘導法の確立、ヒトヘルパーT細胞株の選択を行い、茶ポ リフェノール類のヒト炎症細胞の炎症物質産生に及ぼす影響について解明する。また、ストリ クチニン等茶葉抗アレルギー物質のマスト細胞等免疫担当細胞内での作用機作の解明に取り 組む。

(4)茶の品質評価技術の開発
1)分析手法及び評価技術の開発
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:茶のうま味の由来を解明するため、化学分析と官能試験を並行して行う。茶葉1断片 による品種鑑定法の実用化と、新規効率的マーカーの検索とその利用手法の開発を行う。茶ア ルミニウムの存在形態別分離・同定法の確立と、動物実験による生体内代謝機構の解明を行う。 引き続き、茶含有製品の抗酸化性等の機能性評価を行う。

(5)野菜・茶生産における情報科学利用技術の開発
1)作物生産システムのプロトタイプの開発
担当:野菜茶業研究所企画調整部、機能解析部
研究計画:これまでに収集した野菜等の技術相談問答に関する事例ベースと電子メール等のフロ ー情報構造化支援ツールAgri-Interaction Viewerをもとに 相談業務の効率化と問合せに対 する即応性を実現する試作機で作動性を検証する。一番茶伸長シミュレータをロジスティック 型に改良し、年間を通じて稼働する単一シミュレータの作成に着手する。シミュレータのメッ シュ対応の準備として、メッシュ気候データを利用した栽培地帯区分と温暖化による変化を明 らかにする。

L 畜産草地研究

1)優良家畜増殖技術の高度化

(1)家畜生産性向上のための育種技術の開発
1)選抜効率向上のための母性効果の利用法の検討
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:離乳時体重などでは母性遺伝効果や母性環境効果の影響が大きいことが知られており、 それらを考慮することで、選抜効率を高められると考えられる。そこで、家畜の育種効率を向 上させるために、母性効果を用いた選抜の有用性を、理論的および実証試験により明らかにす る。

(2)家畜生産性向上のための育種素材の開発
1)牛クローン個体の分子遺伝学的特性の解明
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:クローン牛の育種的利用を考えていくためには、予めその遺伝的特性を詳細に検討し ておくことが重要である。そこでクローン産子におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)型の解 析データの蓄積を図るとともに、核移植胚におけるドナー細胞由来のミトコンドリアの動態に ついて解明する。

2)ポリネーターとしての優良形質の探索と優良種の特定
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:400種以上からなるハリナシミツバチ類(Meliponinae)から、わが国における施 設栽培の有力かつ安全なポリネーターとして授粉能力評価および高能力種の選定を目的とす る。中南米、特にマヤ族による永い飼養歴史をもつ大型ハリナシミツバチ類(Melipona)の作 物授粉能力評価およびわが国での周年飼養技術の確立を図る。

(3)家畜胚生産技術の高度化
1)ウシ胚の効率的体外生産を目的としたセレノプロテインPの応用に関する研究
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:体外における受精や発生段階おいて、活性酸素が阻害要因として注目されており、精 巣における含有量が高いセレノプロテインは、その強い抗酸化作用とセレン運搬機能により、 受精率や胚生産効率向上のために利用が期待できる。そこで、セレノプロテインの一種である セレノプロテインPのウシ体外受精および胚の体外培養に及ぼす影響を解明し、さらに、本物 質を利用した効率の良い胚の体外生産技術を検討する。

(4)受胎機構の解明と制御技術の開発
1)体細胞核移植による大量クローン牛作出技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:平成13年度の試験結果から得られた条件により、細胞周期を同期化したドナー細胞 の除核卵子への細胞融合後の核の動態ならびに初期発生への影響を調べる。また、体細胞核移 植胚の移植試験を実施し、受胎性および産子への発育能を検討する。

2)ウシの妊娠認識に関わるシグナル物質の作用機構の解明およびその産生細胞の効率的利用法の開発
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:妊娠シグナル物質であるインターフェロンτの産生能を持つ初期胚由来栄養膜細胞の 効率的な体外培養法およびインターフェロンτの評価法について検討する。また、胚により誘 導されるサイトカイン等の発現を検出するとともに、そのクローニングを試みる。

2)家畜栄養管理技術の精密化

(1)家畜の生理機能及び栄養素の配分調節機構の解明
1)高泌乳牛におけるソマトトロピン軸及びインスリン抵抗性等の特性解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:305日乳量が約12,000kgの高泌乳牛をドナーとしたクローン乳牛を用いて、泌乳の 高位安定期(分娩後約3か月)におけるソマトトロピン、インスリン、ソマトトロピン:イン スリン比、インスリン様成長因子などの血中動態及びインスリン抵抗性等の特性をユーグリセ ミック・インスリン・クランプ法、アイソトープ・ダイリューション法等を用いて明らかにす る。また、血中グレリンの動態解明に着手する。
2)肥育牛における飼料エネルギーの利用と脂肪蓄積の機構解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:飼料給与量、ビタミンAが肥育牛の脂肪蓄積に与える影響を検討するために、飼料給 与量及びビタミンA給与量の異なる黒毛和種去勢牛を肥育途中の20ヶ月齢時に重水注入法 により脂肪含量(体構成)を推定する。また、肥育終了後解体して実際の脂肪量との比較を行 う。
3)ウシレプチン遺伝子の栄養による発現調節機構の解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:ウシレプチン遺伝子をプローブとし、RNase Protection Assay法などを用いた組織 中のmRNAの微量検出系と組織中レプチンタンパクの発現レベルの測定系を確立する。また、 組換えレプチンの中程度量の発現・精製を行い、ウシ特異的なレプチン抗体作製について検討 を進める。

(2)飼料の利用効率改善のための栄養素の動態及び消化管微生物機能の解明
1)乳房および門脈系臓器における器官レベルでの栄養素出納手法の開発
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:開発した肝門部門脈血流量測定および採血技術の長期安定化を図るとともに、これに より門脈系臓器の酸素消費量を測定し、消化管性の熱量増加効果を検討する。また、下部消化 管からの血流の分離を試みる。さらに、ザーネン種ヤギを用い、乳腺血流量の測定・採血技術 を構築するための実験手法を確立する。

2)ルーメン微生物の生態系制御のための特定因子の遺伝子等の探索
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:ルーメン微生物生態系の能力向上を目的として、引き続きルーメン微生物生態系制御 のための特定因子の検索を実施するとともに、ルーメン細菌のエネルギー代謝に係わる影響因 子を検討する。また、組換え体飼料に含まれる組換え遺伝子及びその産物のルーメン内での動 態を明らかにする。

(3)栄養素の生体調節機能解明に基づく健全な家畜・家きんの栄養管理技術の開発
1)反すう家畜の免疫・繁殖機能等における栄養素の作用機構の解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:ホルスタイン種子牛に離乳前から亜鉛等機能性成分を添加し、除角、輸送等ストレス を負荷した時の免疫機能に及ぼす影響を明らかにする。また、離乳前後での機能性成分の消化 吸収の違いについても明らかにする。

2)家畜・家禽の健全性・生産性に影響する飼料・栄養素の機能特性の解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:飼料繊維成分の酵素分析法の精緻化を図るとともに、飼料の種類による各種繊維成分 の化学的性質の違いを明らかにする。鶏にβ-カロテン、リコペン、アスタキサンチン等のカ ロテノイドを添加給与し、血液と筋肉の抗酸化容量の変化から、これらの物質の抗酸化性効果 を明らかにする。また、哺乳子豚に高度不飽和脂肪酸を経口投与し、腎周囲と背の部位におけ る脂肪細胞の数や容積、分化活性を調べ、脂肪組織の発達に及ぼす哺乳時の栄養素経口投与の 影響を明らかにする。

(4)飼料特性の評価と産乳・産肉特性に基づく乳・肉生産制御技術の開発
1)食品残さ飼料の蛋白質画分と消化性評価
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:調製・加工に伴う蛋白質の特性変化を評価するための迅速・簡便な測定法を開発し、 食品残さ飼料における蛋白質画分とその消化性の関係を明らかにする。

2)品種と育成方法が産肉成績に及ぼす影響の解明
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:育成期の乾草の給与水準が、交雑種去勢牛の肥育成績、肉量、牛肉品質におよぼす影 響を調べることにより、肥育牛における育成期の粗飼料給与法を明らかにする。また黒毛和種、 交雑種とホルスタイン種の品種の違いが貯蔵中の肉色(メトミオグロビン割合)の変化に及ぼ す影響を明らかにする。

3)省力・低コスト家畜管理技術の高度化

(1)家畜管理機器の高機能化・高精度化による管理技術の精密化
1)搾乳ロボットの運用データ活用技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:搾乳ロボットが取り込む搾乳牛個体別の搾乳状況・乳汁データ、飼養管理データ等の 収集・解析手法を開発する。開発した手法で事例データを蓄積して乳牛飼養管理や施設管理の 改善にフィードバックできる利用方法を検討し、搾乳ロボットの高度運用技術の可能性を明ら かにする。

2)搾乳ロボットにおける乳汁検知システムの高度化
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:イメージングセンサを模擬搾乳および実際の搾乳に供試して、各種搾乳条件時のセン サ出力特性を蓄積する。また、イメージングセンサとCdSセルを組み合わせたシステムを試 作し、流量および乳脂肪を同時に測定する方法を検討する。

(2)放牧草地の高度利用管理による放牧家畜の精密栄養管理技術の開発
1)高栄養・持続的生産を可能とする新型草地の開発
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:永年牧草と飼料作物との輪作体系により、草地の強害雑草ワルナスビを防除する方法 を開発するため、夏型飼料作物の導入によるワルナスビ抑制方法を確立する。

2)放牧家畜の栄養収支の解明による栄養補給技術の開発
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:放牧搾乳牛の栄養素補給技術開発のため、牧草のタンパク質及び繊維成分の栄養特性 を解明するとともに、放牧牛の心拍数、皮膚温、平均体温等の生理データからエネルギー収支 の解明や耐暑性の指標を摘出する。

(3)放牧家畜の生体情報を活用した省力的群管理技術の高度化と損耗防止技術の開発
1)放牧地における簡易捕獲・管理施設による生体情報収集技術と個体管理の精密化
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:背線高測定装置を家畜改良センターで実際に利用し、操作性・作業性の改善を図ると ともに、背線高の経時的なデータを蓄積して、背線高を用いた発育診断プログラムを開発し、 市販化に結びつける。

2)反芻家畜の嗜好性制御機構の解明
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:学習した飼料フレーバーに対する嗜好性が、学習対象とは物理・化学的組成の異なる 飼料に対してどの程度汎用化されるかを検討し、人為的な学習による飼料選択行動の制御・強 化が可能な条件を明らかにする。

3)生体防御反応を指標とした放牧環境ストレス評価法の開発
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:セレンは牛の生体防御反応に影響を与えるといわれているので、放牧牛の血中セレン 濃度を測定し、疾病発生や生体防御機能等との関連性を明らかにする。

4)多様なニーズに対応した高品質畜産物の安定生産技術の開発

(1)畜産物の品質評価手法及び品質制御技術の開発
1)内分泌かく乱物質等微量物質が家畜・家禽に及ぼす影響の実態解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:豚及び鶏の成長に伴うダイオキシン類濃度の変化を解明するとともに、産卵鶏飼料へ 多孔物質ゼオライトを添加し筋肉、卵へのダイオキシン類の移行・蓄積量の低減効果を検討す る。また、遺伝子組換え体トウモロコシ(Btトウモロコシ)配合飼料を鶏に給与し、飼養成 績および病理学的検討を行う。さらに、牛乳中の放射能汚染レベルの地域別変化と季節別変化 に関する調査を継続し、全国9か所における原料乳中のSr90、Ce137を測定する。

2)畜産物の味と鮮度の解析手法の開発
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:味と鮮度の解析手法に関して、実験動物を用いて牛脂に含まれる嗜好成分の性質を調 べる。また、食肉の冷蔵保存中における脂質と色素の酸化を工学的に分析する手法を検討する。

3)食肉の品質に影響する因子とその制御機構の解明
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:脂肪蓄積量の多い梅山豚種より脂肪前駆細胞株を確立する。さらに前年度作成した西 洋種起源のブタ脂肪前駆細胞株と比較し、脂肪細胞の分化に影響する因子を探索する。

(2)高品質畜産物生産技術開発のための基礎的研究
1)畜産微生物有用形質の発現制御機構の解明
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:培養細胞を用いて細胞性免疫等を賦活するサイトカイン産生を誘導する乳酸菌株の探 索・取得を進めるほか、複数の乳酸菌株による相乗・相殺効果について検討する。免疫賦活能 に優れた乳酸菌株は、活性画分を調べるとともに、他のプロバイオティック乳酸菌との比較を 行う。また、動物への投与試験を平行して行い、生体での効果を明らかにする。

(3)家畜生体高分子機能の解明とその利用に関する基礎的研究
1)畜産物成分の生体応答調節機能の解明
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:線維芽細胞の運動促進因子であることを明らかにしたラクトフェリンについての機能 解析を進める。また、畜産物タンパク質・ペプチドの免疫応答制御機能について、マウス消化 管免疫担当細胞等を用い解析を行う。

5)育種技術の高度化による高品質飼料作物品種の育成

(1)飼料作物・芝草等の遺伝資源の収集・評価と利用技術の開発
1)主要飼料作物等の遺伝資源の収集・評価と遺伝的変異の解明
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:国内外より収集・導入したソルガム150点、シバ属50点、ギニアグラス100点、オ ーチャードグラス50点、アルファルファ40点、トウモロコシ40点を含む遺伝資源の特性を 評価し、種子を増殖するとともに遺伝的変異を解明する。また、C1化学変換に適した草種・ 品種を評価し、メタノール変換のための栽培および利用条件を解明する。

(2)飼料作物のバイオテクノロジー利用技術の開発
1)DNAマーカーによるアポミクシス、耐病性、耐湿性等の連鎖解析
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:とうもろこしにおいて、F1系統子実重による各QTLの評価をもとに、子実重,粒 列数に密接に連鎖するDNAマーカーを開発する。また、幼植物における耐湿性が強い系統を 片親にした交雑集団を作り、AFLPやSSRマーカーを用いて連鎖地図を作成すると共に、幼植 物の耐湿性を評価してQTL解析を行う。マイクロアレイによる発現解析から関与DNAクロー ンをさらに絞り込む。

2)主要飼料作物・芝草等における有用遺伝子の単離・機能解析、培養系・遺伝子組換え 技術の開発
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:飼料作物形質転換体におけるリグニン合成抑制にかかわるCADアンチセンス遺伝子、 耐塩性にかかわるBADH遺伝子等の発現解析を行う。低温耐性遺伝子群転写因子及びベタイン 合成に係わるCMO遺伝子等を単離する。アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害型及び光合成阻害 型除草剤耐性遺伝子を各種イネ科芝草類に導入する。大麦CLC遺伝子アンチセンスをイネ科で 高発現が期待されるプロモータに接続したコンストラクトを作出し、イタリアンライグラス等 に導入する。

3)主要飼料作物・芝草等における安全性評価のための長期モニタリング調査等
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:すでに安全性が確認されている除草剤耐性トウモロコシについて長期栽培を行い、そ こに生育する生物相の動態を調査する。各種牧草の組換え体の利用に向けた、花粉の飛散によ る遺伝子の拡散等環境への影響を調査する。

(3)種属間雑種による新型牧草の作出等による牧草等の優良品種・中間母本の育成
1)ストレス耐性、耐病性に優れた牧草優良品種・中間母本の育成
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:前年度育成した耐暑性、耐病性に優れた早生系統と中生系統について、全国8カ所で 4年間系統適応性検定試験を実施する。Festuca-Lolium属間雑種品種を育成するために、雄 性不稔イタリアンライグラスについて稔性と開花時期、花粉親トールフェスクについて消化性 についての選抜を行う。イタリアンライグラスの細胞質を導入したトールフェスクを開発する ために、得られた雑種後代においてトールフェスクとの戻し交雑を行う。イタリアンライグラ スにおいて、うどん粉病に対する抵抗個体の選抜を行う。シバにおいて、収量性の品種間差と その簡易評価法について検討する。

(4)長大型飼料作物の育種技術の開発と優良F1親系統・品種の育成
1)高消化性,耐病性トウモロコシF1親系統・品種の育成
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:茎葉高消化性基礎集団の世代更新,未固定系統の消化性検定により,育種材料の高消 化性化を進める。F1系統について生産力検定予備試験等に供試し,消化性およびその他の重 要形質について評価・選抜する。また,黒穂病抵抗性について解析集団の連鎖解析を進める。

6)省力・低コスト飼料生産・利用技術の高度化

(1)飼料作物の物質生産機能及び環境適応性等の解明と高位安定栽培技術の開発
1)飼料作物の気象変動等に対する収量安定性を指標とした栽培特性の解明
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:夏作物についてはサイレージ用とうもろこし及びソルガム類、冬作物についてはイタ リアンライグラス及び飼料用ムギ類について、近年の気象変動条件下での生育反応や収量反応 を整理して栽培特性を明らかにし、これらの特性に基づく飼料作物の安定栽培法を提示する。

2)飼料イネの採食量及び栄養価に基づく泌乳牛への給与メニューの開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:飼料イネの養分採食量と栄養価に影響が大きいと考えられるモミの未消化排出量の低 減を図るために、飼料イネ品種の違いが乳牛におけるモミ排出率に及ぼす影響を検討する。さ らに、モミの糞への排出率が第一胃内粗蛋白質分解率に及ぼす影響を検討し、それらの結果を 基にして乳牛用飼料メニューの改善を図る。

(2)飼料作物の栄養生理特性の解明と肥培管理技術の開発
1)飼料作物における硝酸性窒素、微量要素等の適正蓄積条件の解明
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:大区画圃場におけるトウモロコシとイタリアンライグラスの収量、飼料成分等の含量 の変動を調べるとともに、ラジコンヘリや分光放射計等を用いて両作物の栄養状態を診断する 手法について検討する。

(3)生物機能や生物間相互作用の活用及び環境管理等による飼料作物の病害虫制御技術の開発
1)飼料作物に発生する主要病害等の病原系統の解明と識別法の開発
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:各地のトウモロコシに発生している主要なウイルス病の発生実態を調査するとともに、 それらの病原ウイルスを分離し、血清学的方法等による診断・同定を行う。また、各ウイルス 分離株の病原性等諸特性を比較し、伝染環及び主要な伝染源の解明を進める。

2)イネ科牧草類に有用なエンドファイト等の探索
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:吸汁性の飼料作物害虫(1~2種類)の全発育ステージについて選好試験、摂食試験 等を行い、エンドファイト人工感染ペレニアルライグラスが生存や生育に及ぼす影響について 明らかにする。また、それに関与すると思われるアルカロイドのうち、いくつかについて供試 牧草中の濃度について調査する。

(4)飼料生産における軽労・高能率・精密機械化作業技術の開発
1)トラクタのインテリジェント化による高能率・精密機械化作業技術の開発
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:トラクタの稼動状況を的確に把握するためのトラクタ搭載型のシステムを開発し、ト ラクタのインテリジェント化を図るとともに、地力マップに対応した可変肥料散布機の組み合 わせ等の実作業によって、データの蓄積を図り、システムの適応性を調べる。

2)トウモロコシロールベール収穫調製技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:生研機構等他機関と連携してトウモロコシ等長大作物の細断型ロールベール調製・貯 蔵・利用体系の開発を促進し、ロールベールのハンドリングと解体について、利用規模に応じ た手作業解体からロールベールグラブによる一行程解体までの手法を提示する。

(5)飼料作物等の省力的高品質調製・貯蔵・流通技術の開発
1)プロバイオティック微生物を利用したサイレージの調製技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:飼料作物などの畜産環境から、家畜の生産性向上に有用なプロバイオティック微生物 をスクリーニングし、家畜の腸内フローラの改善などの効果の検討を進め、機能性の高いサイ レージの調製加工技術を開発する。また、プロバイオティック微生物を活用した食品残さなど 低・未利用資源の飼料調製・貯蔵技術を開発する。

7)飼料生産基盤拡大のための土地利用技術の開発

(1)草地生態系の資源評価と資源利用計画法の確立
1)自然立地条件に基づく草地資源の評価手法の開発
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:生産レベルの維持、環境保全および景観機能向上を配慮した牧場の評価・設計理論に 基づき、牧場の整備に活用できる景観設計プログラムシステムを開発する。また、既に開発し てきた放牧・採草等の利用適性を個別に評価する手法を適用し、公共牧場の再編・整備方策の 策定を支援する総合評価手法を開発する。

(2)山地傾斜草地や中山間地域に適した草種の特性解明及び環境保全的草地管理技術、家 畜管理技術の確立
1)山地傾斜草地に適した草種の利用特性及び山地傾斜草地の立地特性の解明
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:山地傾斜放牧草地では家畜から排泄される糞尿が牧草の生育に大きな影響を与えてい るので、家畜糞尿と土壌養分の関係を明らかにする。また、山地傾斜地に適すると考えられる リードカナリーグラスの放牧利用特性を明らかにする。

2)傾斜草地放牧が放牧牛の筋肉発達や繁殖に及ぼす影響の解明
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:17ヶ月齢まで放牧した牛を、仕上げ期(29ヶ月齢)まで肥育し、肥育期における 筋線維割合の変化を調べるとともに、筋肉と脂肪の割合、脂肪細胞の分化と発達、筋肉の物理 性など、肉質に関わる項目について解析を進める。

3)山地傾斜放牧草地における土壌養分の偏りを考慮した環境保全的施肥技術の開発
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:山地傾斜放牧草地においては地形条件に応じて植生や土壌養分に偏りが生じているこ とが明らかになったので、こうした偏りを考慮した環境保全的施肥管理法を開発する。

(3)耕作放棄地等遊休地、林地等における資源賦存量の把握及び草資源導入等畜産的活用 技術の開発
1)飼料生産可能な遊休地等における資源賦存量の把握
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:わが国の野草地の変化の動向と立地条件の関係を解析し、山林原野における飼料生産 可能な土地資源の立地条件を明らかにする。また、利用が放棄された場合の野草地資源の変遷 を多面的に評価を行う。

2)カラマツ林における飼料資源賦存量の把握
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:カラマツ林は中部以北の山地で大規模に造林されたが、木材としての利用は進んでい ない。その林床を放牧利用するため、林床植生のうち放牧利用が容易なミヤコザサについて飼 料資源としての賦存量を、栽植密度や林齢等林地の条件と関連させて解明する。

(4)山地傾斜地及び中山間地域における耕作放棄地、林地等を活用した放牧技術の確立
1)転作田、耕作放棄地等を活用した放牧における牧養力の解明及び、施設、作業システ ムの改良
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:山地傾斜地や中山間地域の転作田や耕作放棄畑を牧草地に転換した放牧地における、 牧草季節生産性と牧養力を明らかにするとともに、こうした条件のもとでの放牧に必要とされ る施設の改良及び牛の移動、牧柵の設置など様々な作業システムの改良を図る。

2)牧草等の生理生態特性がもたらす環境保全機能等の解明と評価
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:飼料木と牧草の混生した中山間地域の草地に育成牛を放牧し、電牧を用いたクワの採 食コントロールによる季節生産性の平準化を図るとともに、家畜の増体を調査する。また、放 棄桑園のクワの飼料としての有効利用方法を検討する。

8)環境保全型畜産の展開に寄与する技術開発

(1)家畜排せつ物処理・利用技術の高度化・低コスト化
1)吸引通気式堆肥発酵におけるアンモニア等環境負荷成分捕集技術の実証
担当:畜産草地研究所畜産環境部
研究計画:吸引通気方式において堆肥化過程で発生するアンモニア等窒素成分が、吸気に伴うド レインおよび吸気中に含まれる水蒸気に回収されるパターンを明らかにし、吸気通気式の環境 負荷成分の捕集能力を明らかにする。

2)新敷料素材の機能解明と利用技術の開発
担当:畜産草地研究所畜産環境部
研究計画:ヤシの実殻等の新敷料の牛体への汚染防止効果と堆肥化における水分調整や通気促進 効果に影響する物理性や吸湿性を明らかにし、堆肥化過程での物理性の保持能力と分解性を明 らかにし、敷料の適性評価を行なう。

(2)家畜飼養の精密化による環境負荷物質排せつ量の低減技術の開発
1)家畜・家禽からの環境負荷物質排せつ量の低減化
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:主要な飼料原料について、飼料原料自体が持つフィターゼおよび添加するフィターゼ が遊離する無機リン量に及ぼす影響を検討し、飼料原料に対する適正な酵素添加水準を推定す る。また、メタン排泄低減化に向けて、わが国のみならず、アジアを対象とした家畜由来メタ ン発生量推定手法について検討する。

(3)家畜排せつ物の環境負荷評価技術の開発
1)家畜排せつ物の処理、利用プロセスにおけるモニタリング技術の開発
担当:畜産草地研究所畜産環境部
研究計画:開発した家畜排せつ物から発生する環境負荷ガス測定装置を用いて、家畜ふんおよび 副資材の種類によるガスの発生パターン、季節的変化、地域的変動について明らかにする。ま た、飼養形態およびふん尿処理形態の違いによる環境負荷物質の発生実態を明らかにし、原単 位を策定する。

9)自然循環機能を利用した持続的草地畜産のための草地生態系の解明

(1)草地生態系の構造と機能の解明
1)草地生態系におけるVA菌根菌等の役割解明と有効利用法の開発
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:根に共生するVA菌根菌から植物への養分供給効果を評価する手法を開発する。この 手法を利用して荒廃土壌等での植生回復や家畜の採食に伴う植生変化における菌根菌等共生 微生物の役割を解明する。また、複数微生物による難分解性物質の共生的分解系を構築する。
2)半自然草地の成立・持続条件および生産力の解明
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:北関東のアズマネザサ及び荒廃牧草地をシバ型草地へ誘導する過程における植生の動 態、並びに高標高地におけるススキ型草原の植生維持機構と生産力の経年変化を明らかにする。 また、シバ型草地における補償生産力を明らかにする。

(2)草地生態系における物質・エネルギーの動態解明と環境負荷低減化技術の開発
1)草地土壌における栄養塩類・微量金属等の形態変化・収支の解明
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:全国から収集した家畜ふん尿処理物、飼料畑土壌、飼料作物の微量重金属等の濃度を 測定し、畜種別ふん尿処理物の微量重金属濃度特性を明らかにするとともに、これらの値をE U諸国等の値と比較検討する。また、草地におけるダイオキシンの動態について明らかにする。

2)集約放牧における植物および家畜生産量予測モデルの構築
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:集約的放牧利用条件下のペレニアルライグラス主体草地において、植物及び家畜生産 量を予測し窒素施肥量を低減化するためのシミュレーションモデルを開発する。このモデルに より環境への窒素負荷と生産量とが調和した放牧システムを提示する。

(3)草地生態系の環境保全機能等の解明と評価手法の開発
1)放牧草地における野生哺乳動物と放牧家畜の共存実態の把握
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:放牧地周辺に生息する小型哺乳動物の生息状況を把握するため、シャーマントラップ による捕獲調査を実施する。また、中・大型哺乳動物の生息情報をより簡便に把握するため、 痕跡調査法との比較から赤外線センサーカメラの有効性を明らかにする。

10)資源循環を基本とする自給飼料生産・家畜管理システムの高度化

(1)資源循環を基本とする自給飼料の生産・調製・利用システム及び牛群管理システムの 体系的評価と開発
1)資源循環を基本とする自給飼料の生産性向上及び高品質サイレージ調製・利用技術の 開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:土地利用型酪農において、TMR給与における自給飼料の利用性向上を目指し、大規 模区画圃場におけるイタリアンライグラス等の生育不均一性を、施肥管理により改善する生産 性向上技術を開発する。また、サイレージの嗜好性改善技術及び好気的変敗防止技術を開発す る。

2)資源循環を基本とする乳牛の群飼養管理システムの開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:乳牛の群管理飼養実規模モデルを用いた乳牛の行動解析、あるいは、牛群のモニタリ ングなどから群管理飼養技術の高度化を図るとともに、牛舎と生産圃場を巡る資源循環量の解 析から自給飼料を基本とする資源循環システムの評価法を明らかにする。

(2)資源循環型生産管理体系の経営評価
1)自給飼料や地域資源を利用した土地利用型酪農経営の展開条件の解明
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:TMRセンターとそこから提供される飼料を利用する酪農経営の調査を行い、センタ ーを中心とした地域飼料資源利用の実態と問題点を検討する。さらに、調査結果から得られた 諸係数を用いて、数理統計手法により自給飼料・地域資源を利用した酪農経営の成立条件を明 らかにする。

M 動物衛生研究

1)疫学研究の強化による家畜疾病防除の高度化

(1)疫学手法を用いた疾病の生態学的特性の解明
1)クリプトスポリジウム症の感染動態の解明
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:豚のクリプトスポリジウム感染のリスク評価を実施するため、個体及び集団レベルで の本原虫の感染動態を感染試験や野外調査によって明らかにする。さらに、畜舎排水中におけ るオオシストとの動態について検討を加える。
2)牛の住血原虫病の発病要因の解明とそれを利用した防除技術の開発
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:放牧地における小型ピロプラズマ病および媒介ダニの発生状況について引き続き調査 を行う。また、媒介ダニの小型ピロプラズマ原虫保有状況を評価する新たな手法について検討 を行う。

(2)疾病の疫学的調査手法及び疫学情報の利用法の高度化
1)動物衛生に関するファクトデータベースの構築
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:各種疾病の主要病変、特に病理像について、著作権問題等を検討しつつ、画像データ をデジタル化し、ファクトデータベースを構築する。さらに、家畜別及び病原体別の検索が可 能なシステムとファイリング方法を開発する。

(3)疾病の危険度評価と経済疫学手法の応用
1)口蹄疫のリスクマネージメント手法の開発
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:想定される発生地域の口蹄疫感受性動物の飼養密度や家畜・畜産資材の流通を考慮し て、侵入時に実施すべきサーベイランス手法の比較検討を行う。

2)牛海綿状脳症(BSE)のリスクマネージメントに関する研究
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:BSE及び類似疾病の病理学的診断等を通じて国内におけるBSEの浸潤を把握し、それ らのデータを基にBSEの発生にともなう影響の評価やわが国におけるリスク因子の分析を行 う。

2)感染病の診断及び防除技術の高度化

(1)病原体感染増殖機構及び感染動物体内における動態の解明
1)寄生虫の生残分子機構の解明
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:宿主免疫機構からの回避に関連する豚回虫由来サイトカインの分子クローニングを実 施するとともに、サイトカインの局在部位の探索と組換え蛋白質の生物学的機能を検討する。

2)プリオン病の病態解析と診断法の開発
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:日本並びに海外で発生した牛海綿状脳症及び羊のスクレイピーについて病態解析を実 施するとともに、病原体接種マウスにおける病変分布の解析を行う。

(2)病原微生物の分子生物学的特性の解明
1)プリオン蛋白質の抗原構造解析及び抗体遺伝子の単離とその応用
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:単クローン抗体を用いた抗原エピトープの解析により、プリオン蛋白質の抗原構造を 明らかにする。また、プリオン蛋白質の異常化機構の解析に資するため、抗プリオン蛋白質単 クローン抗体遺伝子を単離し、特性解析を行うとともに発現系を作出する。

2)動物ウイルスのゲノム解析と診断、予防への応用
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:鳥類及び牛・馬・豚ウイルスについて、ゲノムの遺伝子解析データを集積し、国内流 行株の分子生物学的解析を行う。また、その結果を病原性や抗原蛋白質の性状解析、PCR法等 による診断法の改良に応用する。

(3)地域に特有な重要疾病の予防・診断技術の高度化
1)酪農環境由来サルモネラ等の分子疫学的検討
担当:動物衛生研究所北海道支所
研究計画:北海道地域における牛由来サルモネラのデータベース化を推進するために、さらに広 範囲の地域から菌株を収集し、それらについて遺伝子型別を実施する。また、サルモネラ症に おける診断技術の高度化をはかるため、FAFLP解析で得られた遺伝子型特異的マーカーについ ての詳細な解析を実施する。

2)下痢症ウイルスの特性と発病要因の解明
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:牛や豚の下痢症に関与するウイルスの特性と発病要因の解明を目的に、わが国で検出 された牛カリシ様ウイルスについて、ゲノムの塩基配列解析により多様性の有無を明らかにす る。また、カプシド蛋白質を標的としたウイルスの検出法を検討する。

3)アルボウイルス感染症の分子疫学的解析による流行動態の解明
担当:動物衛生研究所九州支所
研究計画:牛の異常産関連ウイルスについて、変異領域の探索と同領域の遺伝子解析を行う。ま た、それらの結果を、変異をともなうウイルスの流行動態の解明と発生予察を含めた効果的な 予防技術の開発に活用する。

3)国際重要伝染病の侵入とまん延防止技術の開発

(1)国際重要伝染病病原体の特性解明
1)口蹄疫ウイルス及び豚コレラウイルスの病原性関連遺伝子の解析
担当:動物衛生研究所海外病研究部
研究計画:平成13年度に解読した口蹄疫ウイルス日本分離株のウイルスRNAの全塩基配列を基 に、種々の方法を用い当該ウイルスの病原性関連遺伝子の探索を行う。また、豚コレラウイル スを含む同属ペスチウイルスの抗原構造の比較解析を行う。

(2)国際重要伝染病防除技術の高度化
1)口蹄疫ウイルス感染動物の病態解明と抗体迅速検出法の開発
担当:動物衛生研究所海外病研究部
研究計画:口蹄疫ウイルス中和エピトープ(サイト2:VP1;140-160)の組換えキメラウイル スの免疫性状について解析する。

4)感染免疫機構の解明に基づく次世代ワクチン等の開発

(1)病原微生物感染に対する免疫機構の解明
1)多価ワクチンの開発を目的とした微生物ベクター系の構築
担当:動物衛生研究所免疫研究部
研究計画:多価ワクチンの開発を目的に、遺伝子操作により作出した豚丹毒菌弱毒変異株の外来 抗遺伝子発現用ベクターとしての利用性を検討する。具体的には、豚丹毒菌の弱毒変異株に豚 マイコプラズマ肺炎原因菌の感染防御抗原遺伝子を組換え、ベクター表面にマイコプラズマ抗 原を効率的に発現させるとともに豚の免疫方法を確立する。本研究は複数の病原体に同時免疫 が可能な多価ワクチンの開発に貢献する。

(2)次世代型生物学的製剤開発の基盤技術の開発
1)サイトカインのワクチン用アジュバントとしての利用技術の開発
担当:動物衛生研究所免疫研究部
研究計画:非注射型ワクチンや細胞性免疫誘導型ワクチンの開発に寄与するため、組換えサイト カインのワクチン用アジュバントとしての利用性を評価する。豚ではGM-CSFとIL-12の経鼻 投与ワクチンに対する局所免疫の増強、また牛ではIL-12とIL-18の細菌抗原に対するTh1 型免疫応答の増強を指標として、それぞれのアジュバント活性を評価する。

(3)動物用生物学的製剤の標準化及び品質管理等の高度化
1)重要家畜伝染病ワクチンの開発改良
担当:動物衛生研究所生物学的製剤センター
研究計画:重要病原体に対するワクチンの安定的製法の確立及び検定法の確立に取り組む。さら に、現行市販ワクチンの改良を目的に、豚丹毒菌の遺伝子組換えサブユニットワクチン及び DNAワクチンの開発研究を行う。

5)生産病の発病機構の解明と防除技術の開発

(1)代謝機能障害等の発病機構の解明と防除技術の開発
1)牛の脂質代謝亢進に伴う肝障害発生機構の解明
担当:動物衛生研究所生産病研究部
研究計画:実験的脂肪肝牛を作製し、酸化障害にかかわる因子の変動について検討する。また、 培養肝細胞を用いて、肝脂肪の蓄積時に観察されるハプトグロビンの上昇機序を解明する。

2)濃厚飼料多給に起因する胃腸運動障害の病態解明と防除技術
担当:動物衛生研究所生産病研究部
研究計画:牛の肝機能増強によるエンドトキシン(LPS)に対する解毒効果、また第一胃機能の 改善によるLPS産生抑制効果について、濃厚飼料多給モデル牛を用いて検討する。

(2)繁殖障害の発病機構の解明と防除技術の開発
1)有害物質等による生殖細胞発育阻害要因の解明
担当:動物衛生研究所生産病研究部
研究計画:直腸検査が困難な未経産豚における発情周期中の卵巣を観察するため、超音波診断装 置による下腹部からの卵巣モニタリング手法を検討する。

(3)泌乳障害の発病機構の解明と防除技術の開発
1)乳汁化学発光法による乳房炎の早期摘発に基づく黄色ブドウ球菌性乳房炎の治療技術の開発
担当:動物衛生研究所生産病研究部
研究計画:前年度の結果から、rBoGM-CSFとrBoIL-8が黄色ブドウ球菌性の潜在性乳房炎に対し て治癒効果があることが判明したので、これら二種類のサイトカインを併用して乳房炎治癒効 果試験を行う。

6)飼料・畜産物の安全性確保技術の高度化

(1)腸管出血性大腸菌O157等の人獣共通感染病の防除技術の開発
1)家畜の消化管内における腸管出血性大腸菌の動態解明
担当:動物衛生研究所安全性研究部
研究計画:牛の腸内細菌は飼料や食餌性ストレスの影響をうけて菌量が大きく変動することから、 腸管出血性大腸菌の増殖を抑制する飼料を検索する。また、そのような飼料給与時における本 菌の排菌動態を明らかにし、飼料による腸管出血性大腸菌の排菌制御の可能性を検討する。

(2)汚染有害物質の体内動態と毒性発現機構の解明
1)飼料汚染有害物質が家畜の生体機能に及ぼす影響の解明
担当:動物衛生研究所安全性研究部
研究計画:飼料汚染有害物質の家畜に対する有害作用を明らかにするため、内分泌かく乱物質や マイコトキシン等の家畜由来初代培養細胞の形態や生理機能に及ぼす影響を解明する。

(3)汚染有害物質の検出と安全性評価手法の高度化
1)異常プリオン蛋白質の高感度検出法の開発
担当:動物衛生研究所安全性研究部
研究計画:プリオン病の感染因子である異常プリオン蛋白質の高感度検出法の開発に資するため、 検出に適した抗原性を保持するペプチドと同ペプチドに対する抗体を用い、より感度に優れた 検出法を構築する。
2)反芻家畜および実験動物を用いた組換え体利用飼料の影響評価
担当:動物衛生研究所安全性研究部
研究計画:組換え体利用飼料の家畜に対する安全性評価に資するため、飼料由来成分の消化吸収 など生体内における動態と組換え体飼料給与が動物の生理や繁殖性に及ぼす影響を明らかに する。また、組換え体成分の家畜細胞への影響を明らかにする。

N 遺伝資源の収集、評価及び保存

独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業に協力し、サブバンクと して適切に対応する。

O 公立試験研究機関等との研究協力

(1)指定試験事業及び国の助成により公立機関等が実施する研究等への人的支援等の協 力を行う。
(2)依頼研究員を派遣する機関が負担する経費の軽減、ホームページでの情報提供等に より、公立機関等との研究員の交流を促進する。
(3)オープン・ラボラトリーの活用等により、共同研究を拡充し、公立機関等との研究 協力を促進する。

2 専門研究分野を活かした社会貢献

(1)分析、鑑定
行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、高度な専門的知識が必要とされ、他の機関では 実施が困難な分析、鑑定を実施する。
特に、動物衛生に関しては、診断の困難な疾病、診断に特殊な試薬や技術を要する疾病、 新しい疾病、国際重要伝染病が疑われる疾病等について、重点的に病性鑑定を行う。

(2)講習、研修等の開催
1) 果樹研究所、野菜茶業研究所及び九州沖縄農業研究センターにおいて、農業者を養成 する養成研修を実施する。

2) 行政・普及部局、若手農業者等を対象とした講習会、講演会等を積極的に開催すると ともに、国や団体等が主催する講習会等に積極的に協力する。

3) 他の独立行政法人、大学、国公立機関、民間等の研修生を積極的に受け入れ、人材育 成、技術水準の向上、技術情報の移転を図る。また、海外からの研修生を積極的に受け 入れる。
4) 外部に対する技術相談窓口を設置し対応する。

(3)行政、国際機関、学会等への協力
1) わが国を代表する農業技術に関わる研究機関として、行政、国際機関、学会等の委員 会・会議等に職員を派遣するとともに、政府の行う科学技術に関する国際協力・交流に 協力する。また、行政等の要請に応じて、技術情報を適切に提供する。

2) 国際獣疫事務局(OIE)の要請に応じ、重要動物疾病に係るリファレンス・ラボラ トリーとして、OIEの事業に協力する。

(4)家畜及び家きん専用の血清類及び薬品の製造及び配布
民間では供給困難な家畜及び家きん専用の血清類及び薬品について、行政と連携しつつ、適 正な品目及び量等を調査し、適正な価格により、家畜防疫及び動物検疫を実施する国公立機関 等への安定供給に努める。

3 成果の公表、普及の促進

(1)成果の利活用の促進
1) 研究成果の中で生産現場等に利活用できる(普及に移しうる)成果を評価の上、50件 以上を選定し、行政・普及部局等と連携しつつ、生産現場への普及を図る。
2) 行政、生産者等が利用可能な各種のマニュアル、データベース等を作成するとともに、 農林水産省研究ネットワーク等を活用して、成果の普及、利活用の促進に努める。

(2)成果の公表と広報
1) 研究成果は国内外の学会、シンポジウム等で発表するとともに、1,100報以上の論文を 学術雑誌、機関誌等に公表する。

2) 研究成果については、その内容をインターネットや「つくばリサーチギャラリー」の展示等を通 じて公開に努めるとともに、重要な成果に関しては、適宜マスコミに情報を提供する。また、国産麦 の消費拡大に向けた試食会等を開催する。

(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
1) 知的所有権の取得に努め、60件以上の国内特許等を出願する。また、必要に応じて、 特許等の外国出願を行う。

2) 育種研究成果に基づき、種苗法に基づく品種登録を行うとともに、農林水産省の命名 登録制度を活用し、30件以上の新品種及び中間母本の登録申請を行う。また、必要に応 じて、外国出願を行う。

3) 補償金の充実等を研究職員へ周知させる等により、知的所有権取得のインセンティブ を与える。

4) 取得した知的所有権に係る情報提供はインターネットを通じて行うとともに、研究成 果移転促進事業等を活用し、知的所有権の利活用を促進する。

III 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

1 予算

(単位:百万円)
区 分 金 額
収入
運営費交付金
施設整備費補助金
無利子借入金
受託収入
諸収入
試験場製品等売払収入
その他の収入



38,186
2,511
8,394
4,484
173
164
9

53,748
支出
業務経費
施設整備費
受託経費
試験研究費
管理諸費
一般管理費
研究管理費
管理諸費
人件費



8,339
10,905
4,484
3,925
559
4,080
1,773
2,307
25,940

53,748

[注記]
1.施設整備費補助金については、平成14年度に繰越となった平成13年度第1次補正 予算による施設整備費補助金予算及び平成14年度施設整備費補助金予算を計上した。
2.無利子借入金については、平成14年度に繰越となった平成13年度施設整備資金貸 付金予算を計上した。

2 収支計画

(単位:百万円)
区 分 金 額
費用の部
経常費用
人件費
業務経費
受託経費
一般管理費
減価償却費
財務費用
臨時損失

収益の部
経常収益
運営費交付金収益
諸収入
受託収入
資産見返負債戻入
臨時利益

純利益
目的積立金取崩額
総利益
41,570
41,570
25,940
7,024
3,451
4,555
600
0
0

41,570
41,570
36,787
173
4,010
600
0

0
0
0

[注記]
1.収支計画は予算ベースで作成した。

3 資金計画

(単位:百万円)
区 分 金 額
資金支出
業務活動による支出
投資活動による支出
財務活動による支出
翌年度への繰越

資金収入
業務活動による収入
運営費交付金による収入
受託収入
その他の収入
投資活動による収入
施設整備費補助金による収入
その他の収入
財務活動による収入
無利子借入金による収入
その他の収入
53,748
40,969
12,779
0
0

53,748
42,843
38,186
4,484
173
2,511
2,511
0
8,394
8,394
0

[注記]
1.資金計画は予算ベースで作成した。
2.業務活動による支出については、「業務経費」、「受託経費」、「一般管理費」及び「人件 費」の総額から「投資活動による支出」において計上することとなる有形固定資産の購 入費について控除した額を計上した。
3.投資活動による支出については、「施設整備費」、業務経費及び受託経費で購入する「機 械」並びに管理諸費で購入する「資産物品」を計上した。
4.「受託収入」は、農林水産省及び他省庁分の委託プロジェクト費を計上した。
5.「業務活動による収入」の「その他の収入」は、諸収入額を計上した。

 

IV その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項

1 施設及び設備に関する計画

(単位:百万円)
施設・設備の内容 予 定 額 財 源
(中央農業総合研究センター)
環境保全型病害虫防除技術開発
共同実験棟新築

(果樹研究所)
組換え体隔離ガラス室新築
屋外埋設ガス配管改修

(花き研究所)
一般温室新築

(動物衛生研究所)
焼却炉改修
隔離実験室焼却炉改修

(北海道農業研究センター)
焼却炉改修

(東北農業研究センター)
冷涼気候利用型複合農業技術開発
実験施設新築
東北地域農畜産物機能性評価
実験棟新築

(近畿中国四国農業研究センター)
下水道配管敷設

小 計

(果樹研究所)
新品種開発研究支援施設改修

(畜産草地研究所)
外来家畜疾病防疫施設新築

(動物衛生研究所)
BSE等高度安全研究施設新築
エネルギーセンター改修

小 計

合 計

1,214



108
62


208


149
89


79


197

303



102

2,511


644


349


7,118
283

8,394

10,905

平成13年度
補正施設整備費補助金


施設整備費補助金
施設整備費補助金


施設整備費補助金


施設整備費補助金
施設整備費補助金


施設整備費補助金


施設整備費補助金

平成13年度
補正施設整備費補助金

施設整備費補助金





無利子借入金


無利子借入金


無利子借入金
無利子借入金


2 人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)

1)人員計画

(1)方針
業務運営の効率化及び職員の適正配置を検討し、常勤職員数の削減に努める。

(2)人員に係る指標
常勤職員数については、年度当初は2,820名とし、年度末は2,797名とする。

2)人材の確保
1) 職員の新規採用については、国家公務員採用試験の活用及び選考採用により行う。研 究職員については、任期付任用制による採用計画を策定し、それに基づき任期付任用の 拡大を図る。また、中期目標達成に必要な人材を確保するため、ポストドクター等の派 遣制度を活用する。

2) 国家公務員試験I種では適任者が得られない特別の知識、能力または技術を必要とす るポストについては、公募制による採用計画を策定し、それに基づき公募を行う。また、 広く人材を求めるため、研究部長の任用にあたっては、原則として公募制により行う。