更新日: 2013年10月28日
動物インフルエンザに関する研究
ニワトリなどの家きんが高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した場合、家畜伝染病予防法に基づく防疫対策の対象となります。 特に高病原性鳥インフルエンザウイルスは家きんで高い死亡率を示すばかりでなく、海外ではヒトへの感染・死亡例も報告されています。国内では感染を拡大させないために、様々な機関と連携し、防疫に取り組んでいます。動物衛生研究所も確定診断をおこなう等、高病原性鳥インフルエンザに対する防疫の一翼を担っています。
- インフルエンザウイルスの生態の解明
- インフルエンザの感染における宿主-病原体相互関係の解明
- インフルエンザの新規防除技術の開発
- インフルエンザの診断基盤技術の整備
動物プリオン病に関する研究
平成8年に英国で変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者が見出され、世界的なBSEパニックが起きた翌年に、家畜衛生試験場(当時)が中心となって総合的なプリオン病研究班が結成され、BSEの早期診断や不活性化技術の開発などさまざまな研究課題に取り組んできました。
平成13年に我が国でBSEが発生したことを契機とし、平成16年に牛を用いた感染実験が可能なバイオセーフティレベル3に対応できる大型研究施設として動物衛生高度研究施設を建設しました。牛などの大型動物のための本格的なレベル3の隔離動物実験室は当時でも少なく、BSEの感染実験を目的とした施設としては世界唯一のものでした。従来は牛に異常プリオンタンパク質を人為的に感染させることは困難でしたが、この研究施設の完成により可能になり、BSE発病機構の解明や生前診断法の開発などBSE研究に貢献しています。今後も人獣共通感染症に関する総合的防除技術の開発を推進し、国民の期待に応えた安全・安心な畜産物の生産技術開発を進めていきます。
- 蛋白質の異常化のメカニズム解明
- 異常プリオン蛋白質の性状解明
- プリオン病の病態解明
- プリオンの高感度検出技術の開発
- 畜産副産物などの安全性に関する研究
技術サービス
- 動物インフルエンザおよび動物プリオン病のサーベイランスと確定診断
- 技術の普及と啓蒙活動
国際貢献
- 国際獣疫事務局(OIE)のリファレンス研究所(豚インフルエンザウイルス、BSE)
- 国際共同研究の推進と技術講習の実施
- タイー日本 人獣感染症共同研究センター(ZDCC)の活動
主な研究成果
(鳥インフルエンザ)
(動物プリオン病)
- 唾液を用いたBSE生前診断法
- プリオン蛋白質の内部構造の安定性とBSE感受性との関連性
- 異種動物間PMCA法を用いたスクレイピープリオン蛋白質の超高感度検出
- ブリリアントブルーG250は異常プリオン蛋白質蓄積を阻害する
補足
◆プリオン病
伝達性海綿状脳症(Transmissible spongiform encephalopathy: TSE)またはプリオン病は致死性の中枢神経系疾患は、「プリオン」と呼ばれる蛋白質性の病原体が原因で、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease: CJD)、羊・山羊のスクレイピー(Scrapie)、牛海綿状脳症(Bovine spongiform encephalopathy: BSE)、シカ慢性消耗病 (Chronic wasting disease: CWD)が知られています。ヒトでCJDは100万人に1人で認められる希少疾患で、治療法・予防法の無い「難病」の一つとなっています。
◆牛海綿状脳症(BSE)
BSEは1986年に英国で確認されました。これまでに、25カ国で19万頭以上の感染牛が確認されましたが、BSE対策の効果により、現在では世界中で激減しています。病原体に汚染した動物性蛋白質飼料(牛の肉骨粉)を牛へ給餌(牛の共食い)したことが原因です。BSEは、ヒトにも伝達(変異型CJD)し、人獣共通感染症として扱われ、食の安心・安全の問題を提起しました。 わが国では2001年にBSEが確認されると、動物性蛋白質飼料の牛への給与禁止(牛の肉骨粉の焼却処分)、BSE発生国からの牛、食肉の輸入禁止、と畜牛(食用牛)および農場で死亡した牛(死亡牛)を対象としたBSE検査を行ってきました。BSEを国内に持ち込まない、国内で増幅させない(牛に食べさせない)、すでに感染してしまった牛は検査で摘発して食用から排除することを目的としています。人間が作り出したBSEを撲滅するのに30年以上の時間を必要です。