野山に咲く花の色は白、黄、赤、紫、青・・と様々です。どれも花粉を運ぶ昆虫や鳥を引きつけるために進化の過程で獲得した形質で、子孫を残すためにきわめて重要な役割を果たしています。一方、花屋で売られている花は、交配による育種(交雑育種)により花色の幅が広がり、野生の植物には存在しない色も見られます。最近では、遺伝子組換えにより、交雑育種では作出不可能な花色も作られるようになりました。
花の色は、花弁の細胞に色素が蓄積することにより発現します。また、色素の組成や量だけでなく、細胞のpHや金属イオンの影響などでも色調が異なります。交雑育種や遺伝子組換えで目的の色を持った花を作るためには、それぞれの色がどのようなしくみで出来ているのかを知ることが重要です。ここでは最近の研究成果を織り交ぜて、花の色が発現するしくみを、それぞれの色ごとに紹介します。