プレスリリース
機能性表示食品「べにふうき」緑茶ティーバッグの開発

- ハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減する初めての機能性表示食品 -

情報公開日:2015年9月14日 (月曜日)

ポイント

  • JAかごしま茶業(株)と農研機構は、「べにふうき」緑茶のメチル化カテキン含有量を一定範囲内に抑える生産工程管理法を確立しました。
  • この技術を活用し、ハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減する初めての機能性表示食品「べにふうき」緑茶ティーバッグを開発しました。
  • 2015年9月15日に販売が開始されます。

概要

2015年4月から機能性表示食品制度が始まりました。「機能性表示食品」は、事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品のことです。加工食品だけではなく、生鮮食品を含む農林水産物も対象としていることがこの制度の特徴です。

農研機構は、メチル化カテキン1)を多く含む「べにふうき」緑茶の機能性に関する研究を1998年から実施してきました。また、機能性関与成分であるメチル化カテキン含有量を高める「べにふうき栽培・加工マニュアル」を2005年に公表しました。
JAかごしま茶業(株)は、「べにふうき」を系列農家で栽培し、メチル化カテキンを多く含有・保持するための栽培法、摘採法、製茶法、再製法などについて、2004年から農研機構等と共同で研究を実施してきました。
機能性表示食品制度の開始に向け、JAかごしま茶業(株)と農研機構では、農林水産省予算「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業:海外輸出に対応できる日本茶生産体系の実証研究」において、メチル化カテキン含有量のばらつきを一定範囲内に抑える生産工程管理法を確立し、機能性表示食品「べにふうき」緑茶ティーバッグを開発しました。消費者庁への届出では、農林水産省委託事業(平成26年度農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業 緊急対応課題)で実施・公開されたシステマティックレビュー2)を科学的根拠としました。
届出の表示内容は以下の通りです。
1.表示する機能性は、「本品にはメチル化カテキン(エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート)が含まれます。メチル化カテキンは、ハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減することが報告されています」。
2.対象者は、「ハウスダストやほこりなどにより、目や鼻に不快感を有している成人男女」。
3.一日摂取目安量の3包(9 g)には、メチル化カテキンが34 mg/9 g(抽出後)含まれます。

 開発された機能性表示食品は、ハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減する初めての機能性表示食品として、JAかごしま茶業(株)から2015年9月15日に販売が開始されます。

※9月14日付当初のプレスリリースでは一部に不適切な表現がありましたので訂正しました。

予算:攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(農林水産省)
特許:特許第3637355号(2005年1月21日)


詳細情報

開発の社会的背景

超高齢化社会を迎え、国民は健康に高い関心を持っています。今まで、機能性を表示できる食品としては、特定保健用食品や栄養機能食品がありましたが、特定保健用食品の認可を得るには、多額の費用と数年単位の年月がかかることから、大企業以外ではハードルが高く、その制度の改革が求められてきました。2015年4月に開始された機能性表示食品制度は、中小企業や農業者団体なども機能性表示食品を販売できるようにと検討されてきた制度であり、4月以降9月13日までに受理された85件の機能性表示食品では、内臓脂肪低減、血糖上昇抑制、中性脂肪低下、血圧上昇抑制、肌の保湿、目の調子の維持、快適な眠り、膝の調子の維持、抗疲労作用、骨の健康の維持などの機能性が表示されています。

研究の経緯

JAかごしま茶業(株)と農研機構は、2004年より、メチル化カテキンを多く含有・保持するための茶品種「べにふうき」の栽培法、摘採法、製茶法、再製法などについて研究を行ってきました。また、2013年からは、農林水産省予算「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業:海外輸出に対応できる日本茶生産体系の実証研究」において、メチル化カテキン含有量のばらつきを一定範囲内に抑える生産工程管理法を確立する研究を実施しています。

研究の内容・意義

農林水産省予算「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業:海外輸出に対応できる日本茶生産体系の実証研究」の中で、JAかごしま茶業(株)と農研機構は、「べにふうき」緑茶の生産ロットごとのメチル化カテキン含有量のばらつきを±20 %以内に抑える生産工程管理法(厳密な栽培履歴管理、収穫時期や製茶法の管理、荒茶受け入れ時のメチル化カテキンの一次分析による選別、再製法の管理、二次分析結果に基づくブレンド割合の管理)を確立しました。また、ティーバッグからメチル化カテキンを抽出する方法についても検討し、最適な抽出方法(ティーバッグ1包に150~180 mlの熱湯を注ぎ2 分間上下に振って抽出する)を明らかにして、機能性表示食品として消費者庁に届出を行い、受理されました。さらに、今まで農研機構が実施してきた「べにふうき」緑茶の機能性研究の成果(作用機序の解明、ヒト介入試験3)による効果実証、機能性成分変動解明)も届出資料の一部として活用されています。

 

べにふうきパッケージべにふうきパッケージ 裏

べにふうき画像

 

今後の予定

2015年9月15日から発売予定です。1袋21包(7日分)入り648円。

発表論文等

用語の解説

1)メチル化カテキン
茶葉中に含まれるポリフェノールの一種で、茶葉中に含まれるカテキンであるエピガロカテキンガレートやエピカテキンガレートの一部がメチル化されたものです。今回。対象となった機能性関与成分は、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレートであり、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」などの品種に多く含まれており、ヒト介入試験により、1日34 mg以上の摂取でハウスダストやほこりなどによる目や鼻の不快感を軽減する作用を持つことが報告されています。

2)システマティックレビュー
ある目的とする医学的な介入(効果)の科学的根拠を明らかにするために、世界中から、予め定めた基準で網羅的に論文を収集し、データの偏りを除き、批判的評価・分析を加えて要約し、評価する方法です。機能性表示食品制度では、機能性の科学的根拠を臨床試験(ヒト介入試験)又は研究レビュー(システマティックレビュー)により届け出ることとされています。

3)ヒト介入試験
ヒトで効果を確認する試験を指します。機能性表示制度では、無作為割付並行群間比較試験(RCT;研究者等が被験者の集団を無作為に複数(2群以上)のグループに分け、それぞれに異なる治療、投薬、生活習慣その他の健康に影響を与えると考えられる要因で介入を行って、結果を群間比較する試験)が求められています。